AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)で、川崎フロンターレがクリスチアーノ・ロナウド擁するアル・ナスルを破っ…
AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)で、川崎フロンターレがクリスチアーノ・ロナウド擁するアル・ナスルを破って、決勝戦にコマを進めた。アジア最強クラブを決める大会での準優勝はチームにとって、そして送り出したJリーグにとっても喜ばしいことではあるが、同時にアジア地域のサッカーが抱える「大問題」が浮き彫りになったと指摘するのは、サッカージャーナリスト後藤健生。どういうことなのか、大会を徹底検証する!
■大きい「ホームとアウェー」の差
そもそも、大会の開催地はサウジアラビアだった。そして、決勝で対戦したアル・アハリはまさに開催地ジッダのチーム。「完全アウェー」で、スタンドはアル・アハリの6万人のサポーターで埋められていた。
広大なアジア大陸を舞台にした大会では、ホームとアウェーの差は大きい。
気候は大きく違い、試合開始の19時30分時点でも32度という環境での試合が続いた。また、今回はJリーグが川崎と横浜F・マリノスのために1億円以上の費用をかけてチャーター便を用意したというが、それでも長距離移動の負担が大きいことには変わりがない。
たとえば、昨年のACL決勝では横浜がUAE(アラブ首長国連邦)のアル・アインと対戦して敗れたが、ホームでは2対1で勝利している(アウェーで1対5の大敗)。また、一昨年は浦和レッズがアル・ヒラルと対戦。アウェーで1対1の引き分けに持ち込んだ浦和は、埼玉スタジアムでのホームで勝利して優勝を飾った。
ホーム有利は明らかだ。
■今年から「決勝大会」が集中開催に
昨年までのACLの決勝はホーム&アウェー方式で行われていた。しかも、さらに公平を期すため、ある年に東地区で決勝の第1戦が行われたら、次の年は西地区で第1戦を行うようになっていた。
ところが、ACLエリートに衣替えした今年から、決勝大会(準々決勝以降)が集中開催となり、舞台はサウジアラビアとなったのだ。東地区のチームにとっては明らかに不利な条件だ。
それでも、「来年の決勝大会は東アジア」というのであれば公平性を保てるが、来年の決勝大会もサウジアラビアで開催されることがすでに決まっている。
決勝大会がサウジアラビア開催となったことに伴って「サウジ・マネー」が流入し、優勝賞金は1000万ドル(約14億5000万円)と昨年までの倍以上に増額された。準優勝に終わった川崎も400万ドル(6億円弱)を獲得。各ラウンドの勝利給を含めると川崎は総額660万ドル(約9億5000万円)を手にしたと報じられている。
J1リーグの優勝賞金が3億円であることを考えると、きわめて大きな金額を川崎は手にしたことになる。強化費として、あるいは施設整備費として有効に使ってもらいたい。また、強いチームを作ることによって収入が増えるということになれば、今後、Jリーグ各クラブが積極投資を行うモチベーションになるかもしれない。Jリーグ全体の財政規模が拡大する方向に動いてほしい。
■「難しくなる」Jリーグ勢の優勝
だが、大金を手にして喜んでばかりいて良いのだろうか?
「サウジアラビアでの集中開催」というのはスポーツ的に見て、明らかに公平性を欠いている。この方式が続く限り、Jリーグ勢の優勝(クラブW出場)は難しくなるだろう。
スポーツにとって「公平性」は最も重要な要素だ。「巨額の賞金が手に入るのだからサウジアラビア開催もやむを得ない」と考えるとすれば、それはカネのために魂を売ったことになる。日本サッカー協会やJリーグは、韓国や中国、オーストラリアなどを糾合して大会方式の見直しを求めるために声を上げるべきであろう。
川崎が決勝で敗れた後なので、大会方式について声高に主張することが「言い訳」のように取られかねないとして遠慮するのは、これはきわめて日本的な考え方だ。
川崎が優勝していようが、準優勝に終わろうが、あるいは準々決勝で惨敗を喫していようが、要求すべきことは要求すべき。いつまでも、AFCを牛耳る中東諸国の言いなりになっていて良いわけはない。