AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)で、川崎フロンターレがクリスチアーノ・ロナウド擁するアル・ナスルを破っ…
AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)で、川崎フロンターレがクリスチアーノ・ロナウド擁するアル・ナスルを破って、決勝戦にコマを進めた。アジア最強クラブを決める大会での準優勝はチームにとって、そして送り出したJリーグにとっても喜ばしいことではあるが、同時にアジア地域のサッカーが抱える「大問題」が浮き彫りになったと指摘するのは、サッカージャーナリスト後藤健生。どういうことなのか、大会を徹底検証する!
■勝利のカギは「組織的な守備」
川崎フロンターレの準決勝での勝利のカギは、組織的な守備にあった。
たとえば、アル・ナスル戦で川崎の長谷部茂利監督は、20歳の大関友翔と19歳の神田奏真を前線に起用。中盤の低い位置まで下りて攻撃のタクトを振るうブロゾビッチを牽制し続けることを指示したという。
アル・ナスルの攻撃のほとんどで、ブロゾビッチが起点となる。だから、そこをケアするのは当然の策だ。Jリーグの監督だったら、ほとんどの監督がそうするだろう。Jリーグというリーグでは、相手を分析して相手の良さを消すことが一般的に行われている。日本の選手たちは戦術的に忠実だから、それが非常に効果的だ。
それに対して、アル・ナスルは個人能力に頼ったサッカーだった。
おそらく、サウジ・プロフェッショナルリーグには、川崎のような組織的守備を行うチームは存在しないだろう。いつもより強度の高い川崎の守備に遭遇し、マルセロ・ブロゾビッチが消されてしまったことで、アル・ナスルの攻撃は停滞し、みるみるフラストレーションがたまっていった。
■決勝戦は「必然の敗戦」だった
一方、川崎の攻撃陣にとって、アル・ナスルの守備はJリーグでの対戦相手よりも甘く感じられたはずだ。スペースが与えられたことで、アタッカーたちは気持ちよく攻撃を展開することができた。かつて絶対的な強さを誇った川崎は、Jリーグでは研究しつくされているから、なかなかパスを回すスペースを与えてもらえない。
こうして、準決勝は川崎にとって「必然」の勝利に終わった。
だが、決勝では川崎の守備は機能せず、0対2で完敗。アル・アハリも川崎を研究しており、川崎は決定機をほとんど作らせてもらえなかった。
準決勝で対戦したアル・ナスルは川崎を見下していた。だが、アル・アハリは準決勝の結果も踏まえて川崎相手をしっかりとリスペクト。対策を練ってきたのだろう。そして、もともとアル・アハリは組織的なサッカーをするクラブでもあった。
従って、決勝戦は川崎にとって完敗。「必然」の敗戦でもあった。
同時に、決勝戦では疲労が蓄積しており、川崎の選手の動きが遅かったり、ボール扱いの精度が低かったりしたのも間違いない。
決勝戦の先制ゴールの場面、ガレーノのミドルシュートは確かに素晴らしかったが、彼がシュートを放つ瞬間、川崎の選手がもう少し寄せることができていれば、あれほどのシュートは打てなかったかもしれない。
■精度が落ちた「ボール扱い」
2失点目は、三浦颯太が傷んでタッチラインの外で治療し、まだ交代ができていない状態。つまり、川崎が1人少ない状態を利用されたものだが、川崎サイドから見て左からクロスを上げられた瞬間、ゴール前ではマフレズとケシエがフリーになっており、ケシエに決められた。センターバックのうち、丸山祐市はニアをケアしていたが、高井幸大のカバーが遅れていた。
ふだんの、あるいは準決勝の時の川崎だったら、ああいった守備の遅れはなかったのではないだろうか? 明らかに、決勝戦では川崎の選手たちの動きが悪く、また、ボール扱いの精度も落ちていた。マルシーニョには、何度か決定機に近い場面があったが、最後のプレーにキレがなかった。
当然のことだ。
川崎には、準決勝から決勝まで中2日しかリカバリーの時間が与えられなかった。準々決勝から決勝まで中2日での3連戦。しかも、準々決勝でも、決勝でも相手は1日多い中3日の日程だった。
しかも、気温が30度を超える中での試合であり、相手の個人能力が高いため、ふだん以上に消耗は激しかっただろう。