この7月、サッカーの景色を一変させるかもしれない「ルール改正」が行われる。ゴールキーパーに対する「8秒ルール」だ。その…
この7月、サッカーの景色を一変させるかもしれない「ルール改正」が行われる。ゴールキーパーに対する「8秒ルール」だ。そのルールの内容と、それに対して、どう対応、さらには、どう適応していくべきなのか、サッカージャーナリスト大住良之が徹底検証する!
■イングランド、イタリアで「試験」
ゴールキーパー(以降、GK)の安全を守るために、現在のレフェリングでは、GKが手や腕でボールを保持しているときには、相手チーム選手はそこにチャレンジする(奪おうとする)ことは許されていない。これは「インプレー」中においては例外的な状況であり、GKが手あるいは腕でボールを保持している間は、この競技の魅力のひとつである「ボールの奪い合い」が起こらないのである。この不公平を是正することも、今回の改正の目的のひとつだった。
このルール改正についての公式トライアル(公的な試験、テスト)は、一昨年、2023年の11月にロンドンで開催されたIFABの「年次事務会議」で実施が決議され、昨年、2024年3月にスコットランドで行われたIFAB年次総会で正式認可された。そしてイングランド、イタリア、そしてマルタのサッカー協会がトライアル参加を申し出た。ただし、各国の2部までのトップリーグ、そしてA代表の試合では認められず、ユースや下部リーグの試合で行われた。
そのトライアルでは、GKが8秒以上のボール保持をした場合の罰則として、CKだけでなく、スローインも可能とされていた。
■現行ルールはなぜ「死文化」したのか
そもそも、2000年のルール改正の際にGKは6秒以上ボールを保持してはいけないと決められた。しかし、その罰則が反則が起きた地点(GKのボール保持が6秒を超えた地点)からの「間接FK」だったため、最初は神経質だったレフェリーたちもすぐに「寛容」な態度を取るようになった。
GKが手でボールを持っているのだから、当然、ペナルティーエリア内である。ペナルティーエリア内からの間接FKのマネジメントは、レフェリーにとって非常に難しい。また、「時間の浪費」という行為に対する罰則としては、失点になる恐れが高いペナルティーエリア内からの間接FKは不当に重い罰と考える人も多かった。その結果、「6秒ルール」は、このルールが存在して四半世紀の間、世界のどこでもほとんど実施されたことのない「死文」となっていたのだ。
しかし、レフェリーのそうした態度につけこみ、GKたちは好き勝手にボールを保持するようになった。IFABが調査したところ、20秒以上保持していたGKもいたという。
日本でも多くのGKコーチたちが、リードしている試合の終盤などでは、正面にきた何でもないボールをキャッチした後、そのまま前に倒れ込んでしばらく立ち上がらず、「時間を使う」ことを指導している。GKたちはその教えをしっかり守り、勝利のためにやっているのだろうが、私には、サッカーで最もみっともない行為のひとつにしか見えない。
■ボール保持の時間で「意図」を推測
IFABは、ボール保持の時間に応じて、GKたちの意図を以下のように推測している。
〇1~4秒の場合:GKは素早くカウンターアタックを開始しようとしている。
〇5~8秒の場合:GKは素早くリリースしたいが、利用可能なチームメイトが見つからない、あるいは、CKやFKの直後などのように、相手選手が邪魔になっている。
〇8秒以上の場合:GKは意図的に時間を空費しようとしている、あるいはゲームのテンポを落とそうとしている。
〇8秒以上の場合:GKは意図的に時間を空費しようとしている、あるいはゲームのテンポを落とそうとしている。