AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)で、川崎フロンターレがクリスチアーノ・ロナウド擁するアル・ナスルを破っ…

 AFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)で、川崎フロンターレがクリスチアーノ・ロナウド擁するアル・ナスルを破って、決勝戦にコマを進めた。アジア最強クラブを決める大会での準優勝はチームにとって、そして送り出したJリーグにとっても喜ばしいことではあるが、同時にアジア地域のサッカーが抱える「大問題」が浮き彫りになったと指摘するのは、サッカージャーナリスト後藤健生。どういうことなのか、大会を徹底検証する! 

■昨年までと「意味が違う」準優勝

 サウジアラビアで開かれていたAFCチャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)決勝大会に進出していた川崎フロンターレ。決勝ではアル・アハリ(サウジアラビア)に完敗して準優勝に終わったが、決勝進出は“快挙”と言っていい。同じ「準優勝」といっても、昨年まで行われていたAFCチャンピオンズリーグとは意味が違う。

 決勝大会の開催地はサウジアラビア西部のジッダだった。紅海に面した港町で、イスラム教の聖地マッカ(メッカ)からもほど近い。日本代表のアウェーゲームが行われることも多く、サッカー関係者にとって今ではすっかり馴染み深い土地となってしまった。

 サウジアラビアからは3つのクラブが決勝大会に駒を進めてきた。東地区からは日本が2クラブ、韓国とタイから1クラブずつだった。いわば、「サウジアラビアによる、サウジアラビアのための大会」だった。

 サウジアラビアは豊富なオイルマネーをスポーツ分野に惜しみなく投じている。

 サウジアラビア王国は、サウド王家の王族が富と権力を独占する独裁国家だ。そんなサウジアラビア政府にとって、スポーツは国民に向けて提供する娯楽なのだ。ローマ帝国の時代以来、独裁国家は大衆に娯楽を与え続けなければならないのだ。一方、国際的にもサウジアラビアの独裁体制への批判の声が大きいが、スポーツはそうしたサウジアラビアのイメージアップを図るためのものでもある。

■サウジしか「開催できない」現実

 2027年にはサッカーのアジアカップ、2034年にはワールドカップ開催が事実上決まっており、将来的にはオリンピックの誘致も目指している。2021年の東京オリンピックのときには、建設されたスポーツ施設の後利用が問題になったが、サウジアラビアとかカタールといった資源大国にとっては数多くの巨大スタジアムを建設しても、そのためのコストや大会後の後利用などについて、誰も問題にしない。

 48か国(あるいは64か国)参加に拡大されたワールドカップは共同開催が普通のことになっていく。1つの国でこんな大会を開催できるのは、サウジアラビアのような資源大国以外にないからだ。

 サウジ・プロフェッショナルリーグに所属するサッカーの主要クラブも、巨額の強化費を使って世界中のスーパースターをかき集めて強化を図っている。

 すべてが、政府系ファンドの出資である。

■日本クラブと「ケタが違う」財力

 川崎が準決勝で対戦したアル・ナスルにはクリスティアーノ・ロナウドポルトガル)やサディオ・マネ(セネガル)、マルセロ・ブロゾビッチ(クロアチア)といった世界的な選手がおり、優勝したアル・アハリはブラジルのロベルト・フィルミーノやアルジェリアのリヤド・マフレズなどを擁している。

“身の丈経営”の日本のクラブとはケタ違いだ。

 川崎も三笘薫(ブライトン)や守田英正スポルティング)、旗手怜央セルティック)、田中碧(リーズ)などを輩出したが、主力級は次々と欧州に移籍し、現在、川崎に在籍している日本代表選手は高井幸大だけだし、マルシーニョやアリソンといったブラジル人助っ人たちも国際的には無名の選手だ。

 選手の名前や財政規模で比べたら、まったく比較にならない。

 そもそも、サウジのクラブは半数以上の選手が外国籍だが、川崎は大半が日本人選手ばかり。従って、当然、下馬評は「サウジアラビア勢絶対有利」だった。

 しかし、準々決勝で延長戦の死闘の末にカタールのアル・サッドを下した川崎は、準決勝ではC・ロナウドのいるアル・ナスル相手に撃ち合いを演じて3対2で勝利。準々決勝以降、川崎はいつもスコアで先行し、追いつかれても突き放すという展開が続いていた。そして、2試合で6ゴールを奪って見せた。

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