5日、世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(32・大橋)が米・ラスベガスで行われた世界4団体スーパーバンタム…
5日、世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(32・大橋)が米・ラスベガスで行われた世界4団体スーパーバンタム級タイトルマッチに臨み、挑戦者のWBA同級1位ラモン・カルデナス(29・メキシコ)を8回TKOで撃破した。プロデビューから30連勝という“節目の1勝”での4団体王座4度目の防衛だ。2ラウンド終盤には強烈な左フックを浴びて生涯2度目のダウンを喫した井上だが、自身のトレーニングの傍らこの試合を観戦していたIBF世界フェザー級1位の亀田和毅は問題のダウンシーンについて「ラッキーパンチ」と言い放った。しかし、父・史郎氏は「井上はラッキー」など、まったく異なる見解を示した。
試合序盤、和毅は最近の井上尚弥の様子について「(昨年5月)ネリに倒されてから様子を見るようになった。1ラウンドで全部出す選手もおるし、出さへん選手もいる。スピードもそう。パンチ力なんか1ラウンドじゃわからない。3ラウンドくらいまでかな…」と指摘する。
その矢先、2ラウンドにカルデナスの左フックが井上を捉える。人生で2度目の強烈なダウンだが、意外にも和毅はノーリアクション。冷静に「タイミング当たったら倒れるからね。ボクシングは」と淡々だ。
「セコンドはどの試合でも研究する。相手のクセとか見て、こういうパンチを狙おうと。それが当たるかどうかは別。(左フックを)狙ってたかどうかは俺には分からない。俺から見たら、ただ来たから打ったというふうには見える。フックを打ったときに相手も見てないもんね。ただ打っただけやから。言うたら“ラッキーパンチ”みたいなもん」
そんな和毅の意見に対して、父・亀田史郎氏の見解は、和毅のそれとは異なる。
「あれしか狙ってない。アイツ(カルデナス)パンチめちゃくちゃある。“振ったれ”ってやってたんちゃう? バッコーン当たりおった。最初勝てるのは1%しかないねんから。ラッキーパンチみたいなのしか(練習)やってなかったんじゃない。その先は考えてなかったと思う。それも前半で出た。もったいなかった」
ダウンシーンについて和毅は「これぐらいの相手というので、集中力が切れていたわけではないが、ちょっと油断があったのでは。(前にも倒れているので)倒れるのに驚きはない」と指摘も。
2ラウンドにダウンを喫した以降、井上のダメージについて和毅は「1ラウンドと変わらない。回復してるでしょ」と井上の回復力を指摘したが、史郎氏の見解はここでも異なる。
「(3ラウンド)まだ効いてたやん、ちょっと。行ったらよかったのに。(カルデナス)陣営も後悔してるんじゃないの? ダウン取ったとき、何で攻めなかったのか。あっこ行っとったら、正直勝ってたんちゃう? “井上尚弥”という名前、イメージ、それに行けなくなった…(相手が出なかったことに対して)井上はラッキー」
ダウン以降の展開について、カルデナスがガードを固めていたことに対して和毅は淡々と分析する。
「ボクシングしても(井上尚弥には)勝てない。スピードも負けてる、パワーでも負けてる。全部負けてるのに、何で勝てるの? 1発しかないやん」
結果、試合は8ラウンドTKOで終わってみれば井上尚弥の圧勝だった。
「差がありすぎて…1回も世界戦に挑戦してない選手。相撲でいうたら横綱と十両。まぐれで1発ラッキーパンチ。“引き落とし”みたいな感じであるか…ほぼない。そんなレベル」
そう振り返った和毅は、今後、井上尚弥の対戦相手として興味がある選手に中谷潤人を挙げる。
「(中谷は)『俺やったらいけるぞ』と思ってると思う。『倒れるようになってきてる。俺のパンチやったら倒すで』と思っているかもしれない」と理由を語った和毅は「ダウンは脳やからね。1回倒れると(イメージが)走るんかね。もらったら倒れるというか、あるんじゃない?みんな1回倒れたら、えっ!?こんなんで倒れる!?みたいのが多い」
最後に史郎氏は「井上陣営はいい勝ち方じゃない」と述べた。
「勝てばいいけど、そこじゃない。普通の選手じゃないから。海外でどれだけのモンスターぶりを見せられるか」
井上尚弥の一戦を冷静に振り返った和毅は5月24日、大阪市・インテックス大阪で同級王者アンジェロ・レオ(米国)と対戦する。約6年ぶりとなる3階級制覇なるか、注目だ。