終わってみれば、圧倒的な形で自らの強さを世界に誇示した井上。(C)Getty Images 倒れてから“怪物”の真価が発…

終わってみれば、圧倒的な形で自らの強さを世界に誇示した井上。(C)Getty Images

 倒れてから“怪物”の真価が発揮された。

 現地時間5月4日、世界スーパーバンタム級統一王者の井上尚弥(大橋)は、米ラスベガスのT-モバイルアリーナで行われた同級4団体統一タイトルマッチ12回戦で、WBA同級1位のラモン・カルデナス(米国)に8回で完勝。2回にダウンを喫するも「ボクシングは甘くない」と盛り返し、7回と8回にそれぞれダウンを奪ってTKO勝ちを収めた。

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 衝撃的なダウンから幕が開けた。井上にとっては21年6月のマイケル・ダスマリナス(フィリピン)戦以来となるラスベガスでの防衛戦であり、メキシコ最大級の休日で、業界内屈指のメガマッチが組まれる「シンコ・デ・マヨ」のメインイベント。いつも以上の気負いがあったのかもしれない。積極果敢に打ちに行った直後、予期せぬ角度から飛び出したカルデナスの左フックを被弾。圧倒的優位が予測されていたモンスターは、フッとキャンバスに倒れた。

 ただ、そこから世界は井上の真骨頂を目の当たりにした。「映像で自分が見ていたより2、3倍は強く感じた」というカルデナスの勢いを受け止めた絶対王者は、自らが屈した強打を受けない絶妙な距離感を修正。徐々に手数を増やしながら主導権を握ると、6回以降は相手を防戦一方にし、最後は怒涛のラッシュで試合を終わらせた。

 試合を終わらせた驚異的なパンチ力や技術力もさることながら、冷静に試合展開を見定め、的確に修正するリカバリー能力は圧巻。一度倒れたからこそ極まった井上のファイターとしての凄みがあった。

 挽回し、伝説の世界ヘビー級王者ジョー・ルイス(米国)の記録を超える世界戦KO勝利(23)を飾った井上。その規格外の強さを米老舗メディアもクローズアップする。

 1922年に創刊され、世界最古のボクシング専門誌『The Ring Magazine』は、「カルデナスが奇跡のチャンスをつかみそうになった」と序盤の展開を振り返った上で、井上が完全にペースを握った6回を独特の表現で描写した。

「最後の90秒でイノウエはサメのように血の匂いを嗅ぎつけ、フィニッシュを狙う、精鋭の攻撃を繰り広げた。カルデナスはロープ際でホームラン級の大振りで反撃を狙ったが、すでにこの時、彼のバットは壊れていた。もはや完全試合など不可能だった」

 さらに同誌は勝負の行方を分けた6回に井上が90発中48発を命中(カルデナスは14発)させた驚異的なパンチスタッツを紹介。「7回に倒れたカルデナスは『大丈夫』と言ったが、そうではなかった。防御力すらなくなった彼は明らかに良くなかった」と、井上の強打を受け続け、次第にダメージの影響が色濃くなり始めた挑戦者の生々しい変貌ぶりを伝えた。

 結果的に“ボクシングのメッカ”を大いに盛り上げた井上。その強さはやはり規格外である。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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