この7月、サッカーの景色を一変させるかもしれない「ルール改正」が行われる。ゴールキーパーに対する「8秒ルール」だ。その…

 この7月、サッカーの景色を一変させるかもしれない「ルール改正」が行われる。ゴールキーパーに対する「8秒ルール」だ。そのルールの内容と、それに対して、どう対応、さらには、どう適応していくべきなのか、サッカージャーナリスト大住良之が徹底検証する!

■サッカーの景色が変わる「改正」

 サッカーのルール改正は毎年行われているが、スタンドから見ているだけではルールが変わったことに気づかないことも少なくない。「サッカーの景色が変わった」と思えるルール改正は、そう頻繁にあるわけではない。

 そのひとつが、1992年の「バックパスルール」だった。それまでゴールキーパー(以降、GK)は自陣ペナルティーエリア内で手を使ってプレーすることに大きな制約はなかったが、この年のルール改正で「競技者がボールを蹴って味方ゴールキーパーに意図的にパスしたときには、ゴールキーパーはこのボールを手で触れることはできない」という条項が加えられ、以後、バックパスに対し、GKはフィールドプレーヤーと同じようにプレーしなければならなくなった。

 これと同じように「サッカーの景色が変わる」のではないかと予想されるのが、今年のルール改正で実施される「8秒ルール」だ。ルール第12条(ファウルと不正行為)の第3項は、2024/25版のルールでは「懲戒処置」についての記述だったが、2025/26版ではそこに「コーナーキック」が挿入され、「懲戒処置」は第4項となる(と思われる)。

「ゴールキーパーが、ペナルティーエリア内で、ボールを手放す前に手や腕で8秒以上コントロールした場合には、攻撃側にコーナーキックが与えられる」(IFABサッカー競技規則2025/26版、大住試訳)

■日本での「切り替え」のタイミング

 今年のルール改正については、3月のコラムでも紹介した。サッカーのルールを統括する国際サッカー評議会(IFAB)はすでに3月に新ルールの条文を完成させ、ガイドラインなどとともに加盟協会に送付した。日本でも、日本サッカー協会の審判委員会が受け取り、翻訳作業にあたっている。

 新ルールの施行日は7月1日だが、進行中の競技会においては適当なタイミングで施行していいことになっている。今季のJ1は7月に2回の中断がある。1回は「E-1東アジア選手権」が行われる12日(土)と13日(日)の週末、そしてもうひとつは7月26日(土)と27日(日)の週末である。このどちらかのタイミングで、新ルールに切り替えられることになるだろう。

 だが、気をつけなければならないことがある。6月15日に開幕するFIFAクラブワールドカップ(CWC)では全試合が新ルールで行われることになっているのである。これに出場する浦和レッズは大会前に慣れておく必要がある。また「E-1」も同様なので、日本代表の事前合宿ではしっかり準備する必要がある。

■ルール改正の「経緯」と「運用」「目的」

 さて今回は、このルール改正の経緯と、運用の方法を少し詳しく見てみることにしよう。

 ルール改正の目的は、GKによる不当な時間の浪費を防ぐことだった。GKが不当に長くボールを手や腕で保持することで時間が浪費されることに、ファンだけでなく、多くの選手や監督たちからも不満の声が上がっていた。

 もっともそれは、自分のチームがビハインドの状態で試合をした場合で、逆の状態で自チームのGKが同じことをしても、彼らは何も言わない。しかし、GKによる時間の空費がサッカーにとってプラスであるとは、誰も考えていないだろう。

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