蹴球放浪家・後藤健生は前回、世界のサッカーとビールについて大いに語った。今回は、「まだまだ飲み足りない」じゃなくて、「…

 蹴球放浪家・後藤健生は前回、世界のサッカーとビールについて大いに語った。今回は、「まだまだ飲み足りない」じゃなくて、「語り足りない」ということで、その続編をお届けする!

■世界の「三大ビール産地」?

 前回の「蹴球放浪記」では、アジア各国でのビールに関するビックリ体験についてお話ししましたが、ビックリは何もアジアでのことだけではありません。

 僕が最初にヨーロッパ一人旅をしたのは、1974年のワールドカップのときでした。開催地は西ドイツ。そう、ビールの本場ですよね。

 日本の某ビールメーカーのCMソングに「ミュンヘン、サッポロ、ミルウォーキー……」というのがありました。1958年に作られたCMだそうです。

 ドイツのミュンヘンと札幌、そしてアメリカ・ウィスコンシン州のミルウォーキーというビールの本場は同じ北緯45度付近にあるというCMでした。

 本当に世界の人が「サッポロ」をビールの三大産地と認識しているのかとか、札幌とミルウォーキーは北緯43度でミュンヘンは48度だとか、ツッコミどころはたくさんあるのですが、たぶん多くの日本人の記憶として残っているCMでしょう。

 メジャーリーグ(MLB)のミルウォーキーの愛称は「ブリュワーズ」つまり「醸造家」で、ロゴにもビールの原料である大麦が描かれています。北アメリカを代表するビールの本場なのでしょう。

■「ピルスナー」が生まれた街

 ドイツでは(あるいは中部ヨーロッパ=中欧では)ミュンヘン以外にもビールで有名な都市がたくさんあって、どこにも特徴のあるビールが存在します。

 最近では、日本でも「クラフト・ビール」が流行っていて、さまざまなタイプのビールを飲むことができますが、日本の大手ビールメーカーのビールは、いわゆる「ピルスナー・スタイル」です。そして、1970年代には、大手メーカー以外のビールを飲む機会はまったくありませんでした。

 だから、日本人は「あれがビールなのだ」と思っていたのです。

 ピルスナーは、ラガー酵母によって下面発酵されるビールで、淡い黄金色でのど越しとホップの苦みが特徴。キンキンに冷やして一気にゴクゴク飲み干すと、自然に「プッハーッ」と声が出るタイプのビールです。

 チェコの「ピルゼン」という都市で生まれたので「ピルスナー」と呼ばれていますが、「ピルゼン」というのはドイツ語名(中欧の都市はかつてはオーストリア=ハンガリー帝国領だったので、どこでもドイツ語名を持つ)。チェコ語では、「プルゼニ」と呼ばれています。

■プルゼニ生まれの「名GK」

 日本では「プルゼニ」という名前はあまり知られていませんが、最近、FCヴィクトリア・プルゼニがUEFAチャンピオンズリーグで活躍するようになったので、サッカー・ファンの間では「プルゼニ」の名前はすっかりおなじみになりました。

 ちなみに、チェルシーなどで活躍した名GKペトル・チェフはプルゼニ出身です。

 前置きが長くなりましたが、要するに僕は生まれてこの方20年以上、ピルスナー・スタイルのビールしか飲んだことがなかったので(あ、いや、初めてアルコールをたしなんだのは、もちろん20歳になってからのことですが……)、初めてドイツに行ったときには「実に、さまざまなタイプのビールがあるのだなぁ」とビックリしたというわけです。

 日本のピルスナーをはじめ、多くのビールは大麦が原料ですが、小麦で造った白ビールは飲んだことがなかったし、ラガー酵母ではなくエール酵母で上面発酵させるエール・タイプのビールも初めて体験しました。

いま一番読まれている記事を読む