昨夏の甲子園で24回を投げて自責点0と優勝の立役者になった京都国際の西村 一毅(3年)。チェンジアップを武器とする高校球…

昨夏の甲子園で24回を投げて自責点0と優勝の立役者になった京都国際の西村 一毅(3年)。チェンジアップを武器とする高校球界屈指の左腕で、U-18高校日本代表一次候補にも選ばれている。

 センバツにこそ出場できなかったが、注目度が下がることはない。彼の現在地に迫った。

DENAでプレーする左腕に憧れて京都国際へ

 滋賀県甲賀市出身の西村は中学時代に近江ボーイズでプレー。当時は外野手がメインで、投手はたまにやる程度だった。

 京都国際に進学するきっかけは森下瑠大(現DeNA)の存在が大きかったという。

「夏の甲子園で森下選手を見ていて、自分もあのような選手になりたいと思って、この高校に決めました。2年生からエースナンバーを背負っていて、バッティングの面でもチームを引っ張るようなバッティングをしていて、自分もあのような選手になってチームを勝たせたいと思いました」

 高校入学後は宮村貴大部長の勧めもあり、投手に本格転向。昨春の甲子園ではベンチ入りを逃したが、春の京都府大会で台頭すると、夏にはそれまで絶対的エースだった中崎琉生(3年)と並ぶ存在にまでなった。

 夏の甲子園ではチェンジアップを決め球とする投球で無双状態。「奥井(颯大・現東北福祉大)さんを信頼して投げているので、キャッチャーのおかげだと思います」と中学時代からのチームメイトである先輩を信じて投げ続けたことが好結果に繋がった。

 西村がベストピッチングだと語ったのが「スライダーもチェンジアップも低めにコントロールできていて、外や内にも投げることができていた」と振り返る準決勝の青森山田戦。5回からリリーフした西村は5回を投げ、2安打2四球3奪三振で無失点と好投して、チームの逆転勝利を呼び込んだ。

 決勝では延長10回表に無死一、二塁から始まるタイブレークの先頭打者として代打で登場すると、バントを警戒した相手守備の意表を突くバスターで安打を放ち、チャンスを拡大。この回に2点を先制すると、このリードを守り抜き、優勝投手となった。

 2年生にして最高の景色を見ることができた西村。「あの場で経験させて頂いたことを次の代でも繋いで、自分が軸になってチームを勝たせられるようにしようと思いました」と新チームになってからはエースの自覚が芽生えた。

 3季連続の甲子園出場を懸けて秋の京都府大会に臨んだが、4回戦で京都外大西に敗戦。西村は11回165球を投げて、5安打5四死球18奪三振で自責点1と好投したが、初回に先制を許すと、11回表には押し出し四球と犠飛で2点を勝ち越され、チームを勝利に導くことはできなかった。

「最初と最後に取られてはいけない場面で自分が点を取られて、本当に自分のせいで負けてしまいました。勝てるピッチャーは絶対に点を取られないので、僕も絶対にそういう選手にならないといけないと思ったので、そこが課題だなと思いました」

指揮官が語るプロ入り左腕と比べて足りないもの

高校日本代表候補に選ばれた西村

負けたことで気づいたこともある。まず感じたのは捕手に依存した投球をしていたことだった。

「自分で配球を考えられなくてキャッチャーに任せきりになっていたので、もっと自分で考えて、ピッチングをやっていこうと思いました」

 昨夏までは先輩のリードを信じていれば良かったが、今は捕手よりも西村の方が経験値では上回っている。投手として成長するためには必要な挫折だったのかもしれない。小牧憲継監督も森下を引き合いに出し、勝てる投手になることを求めている。

「森下はゲーム勘に優れていました。『流れが悪いな』と思ったら、意図的に3者連続三振で戻ってきてベンチに勢いを付けていました。あの子が『やっぱり良いな』と思ったのは、試合展開を読めるところです。勝てるピッチャーでないと評価されないので、西村みたいなタイプはその辺の嗅覚というか、ゲームの中での駆け引きを覚えてくれたらなと思っています。秋も確かに打線の援護がなくて、可哀そうな展開にはなってしまったんですけど、それでも点を取られたのは自分のフォアボールと、初回にここ一番で甘く入ったタイムリーなので、抜くとこは抜く、押すとこは押すという、ゲーム勘を掴んでほしいんですよね。去年は3年生が支えてくれたから力を発揮できたという部分もあるんですけど、今年に関しては西村がどう考えても引っ張っていかないといけない。その中でやっぱり今度は自分が背中で後輩を育てていく、そういうことを森下は何も言わなくてもできたので、そういう人間的な部分で僕は彼の成長を求めたいなと思っています」

 秋の大会が終わってからは副主将に就任。よりチームを引っ張る意識が強くなり、周りを見る努力もするようになった。その成果は今春以降に見ることができるだろう。

 注目の進路だが、「まだ活躍できる力もないので、大学でしっかり活躍できるような選手になりたいです」とプロ志望届は提出せずに大学に進学する方針。4年後の目標には「ドラフト1位でプロ野球に行くことです」と定めており、力を付けてからプロ入りを目指すつもりでいる。

 進路やU-18高校日本代表一次候補入りなど様々な面で注目が集まるが、最大の目標は夏。「自分が勝たせられるピッチャーになって、もう一度甲子園に戻って、優勝したいです」と連覇に向けて意欲を見せている。

 西村無双は今年も続くのか。彼のパフォーマンスから目が離せない。