野球用品の製造や卸売りで知られるエスエスケイ(SSK)が、見えないところでパラスポーツを支えている。パラアーチェリー日…

 野球用品の製造や卸売りで知られるエスエスケイ(SSK)が、見えないところでパラスポーツを支えている。パラアーチェリー日本代表選手の声に応え、特注のユニホームを製造している。

 大阪市に本社を置くSSKは、扱う商品の多くが野球用品。一方で、デンマークのスポーツメーカー「ヒュンメル」の日本国内における商標権を持ち、スポーツウェアを製造・販売している。

 縁がなかったパラアーチェリーのユニホームを手がけるきっかけは、大阪府在住のパラリンピアンのひと言だった。

 「車いすに乗っているとお尻が滑って……。なんとかできないものでしょうか」

 男子リカーブ個人で2016年のリオデジャネイロ大会から3大会連続で出場している上山友裕選手(37)。東大阪市との事業を通じて出会い、競技中の不便を聞いたことから商品開発が始まった。

 上山選手のように車いすを使う選手の一部は、足に力が入らず、踏ん張ることが難しい。滑りやすいジャージー素材では、上体の動きに合わせてお尻も滑って動いてしまい、正しい姿勢を保てなかったという。

 ヒュンメル製品の企画担当者が加わり、お尻部分にシリコーン素材のラバーを縫い付けた専用パンツを開発。サッカー用手袋の手のひらに、スローイングで滑らないように付ける滑り止めを応用した。上山さんは「あるとないとでは安定感が全く違う。本当にありがたい」。

 同様の悩みを抱える選手へ広く届ける手段もとった。SSKは2020年、「ヒュンメル」ブランドで、日本身体障害者アーチェリー連盟とオフィシャルサプライヤー契約を結んだ。袖が弦に触れないよう、腕回りを細く加工したシャツも開発して代表選手に専用ウェアを提供する。

 契約上の規定で、代表ユニホームにSSKやヒュンメルのロゴは付けられない。選手を通じてのPRができないことに加え、専用ウェアの製造は通常の1・5~2倍のコストがかかる。企画担当者は「普通なら断るような話かもしれません」と笑う。

 それでも製造を買って出たのは、野球用品を扱うときと変わらない社の姿勢があるからだという。事業推進本部の森本茂樹課長代理は「うちみたいな会社は、かゆいところに手が届くメーカーになろうとしてきた」。

 アシックス(神戸市)、ミズノ、デサント(いずれも大阪市)など、関西に拠点を置くスポーツメーカーがいくつもある。近畿経済産業局がまとめた「関西スポーツ産業のポテンシャルと今後の展開に関する調査」によると、関西はアディダスの本社があるドイツ・バイエルン州、ナイキの米国・オレゴン州と並ぶ世界三大スポーツ用品開発拠点の一つとされている。

 規模の大きな競合他社がいる地でSSKが見いだした活路は、チームに寄り添い、細かなニーズに応えることだった。森本さんは「100人のうち1人でもうちを選んでくれるファンを作ろうとするのがSSK」と話す。

 そんな姿勢は社会貢献事業にも見て取れる。足や腕に切断や欠損障害のある選手が2本の杖を使うアンプティサッカーのチームサポートや、知的障害のある子どもと健常者がともにプレーするインクルーシブサッカーの大会やイベントを開催している。

 インクルーシブサッカーの取り組みは、養護学校や職場と自宅の行き来のみの生活になりやすい障害者に、他者との交流ができる「サードスペース」を作ることが目的にある。同じチームであることが理解しやすくなるように、チームごとのユニホームを用意した。森本さんは「人や地域をつなぐことができるのがスポーツの良さ。事業を通してスポーツの価値を高めたい」。

 メジャーなスポーツではなくても、大きな利益を生む事業ではなくても、必要としてくれる人へ手を伸ばす。人情に満ちた仕事で、替えのきかない存在となっている。(平田瑛美)