今週は、牡馬クラシック三冠の開幕戦、第85回皐月賞(GI、芝2000m)が中山競馬場で行われる。今年は、無敗でホープフル…
今週は、牡馬クラシック三冠の開幕戦、第85回皐月賞(GI、芝2000m)が中山競馬場で行われる。
今年は、無敗でホープフルSを制したクロワデュノールの1強ムード。対するは弥生賞を制したファウストラーゼン、同2着ヴィンセンシオ、同3着アロヒアリイや、スプリングSを制したピコチャンブラック、同2着フクノブルーレイク、同3着キングスコール。さらには若葉Sを制したジョバンニといったトライアル組や、きさらぎ賞を制したサトノシャイニング、共同通信杯覇者マスカレードボールといった重賞ウイナーがどこまでクロワデュノールに食い下がれるかという構図だ。
そんな中、未知の魅力たっぷり、無敗のエリキングが今回の「危険な人気馬」の標的となる。
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■クラシックとは縁のない京都2歳S覇者
2023年のセレクトセールで、サイバーエージェント社長・藤田晋氏によって2億3100万円(税込)という超高額な落札価格で競り落とされたエリキング。昨年6月に京都でデビュー勝ちを決めると、続く野路菊Sも快勝。京都2歳Sでは上がり最速の末脚で無傷の3連勝で重賞初制覇を果たすなど、評判に違わぬ能力を見せてくれた。
その後、右第1指骨剥離骨折が判明し休養を余儀なくされたが、クラシック第一弾の皐月賞に参戦決定。未対戦のクロワデュノールに対する逆転候補として注目を集める存在に。野路菊Sと京都2歳Sで2着に下したジョバンニがその後ホープフルS2着、若葉S1着と世代でもトップクラスの走りを見せており、エリキングも十分にその資格はあると考えられる。
とはいえ、約5カ月の休み明けはやはり大きな減点材料だ。過去10年の3着以内に入った30頭中26頭は、少なくとも年明けに1戦以上走っていた馬。残りの4頭中3頭は、ホープフルS、あるいは朝日杯FSを制していたGI馬で、前走が前年11月以来の馬は【0.1.0.1】。22年2着イクイノックスが前年の東スポ杯1着以来で好走しているが、同馬は調整に時間がかかってのローテ。エリキングは故障明けのぶっつけ本番になるのでさすがに強気にはなれない。
また、京都2歳Sを制している点もクラシックではあまり信頼できる材料ではない。14年にGIIIに格付けされた京都2歳Sだが、一昨年までの勝ち馬10頭の中からクラシックを制した馬は1頭も輩出しておらず、加えて皐月賞での成績は【0.0.0.9】と、国内外で活躍をみせるシンエンペラーも含めて一度も馬券に絡んだことがないのだ。
競馬界には“セリでの高額馬は走らない”との定説があるが、これまでのGI馬で、歴代落札価格が1位なのは19年菊花賞、21年天皇賞(春)を制したワールドプレミア(2億5920万円・税込)。ただ、取引価格が1億超えの馬で皐月賞を制した例は皆無だ。藤田晋氏は数多くの億超え馬を所有し、フォーエバーヤングなど海外で活躍している馬のオーナーではあるが、果たして2億超えのエリキングがクラシックを制するまでに至るだろうか。
今年の皐月賞の焦点は、クロワデュノールの1強ムードに待ったをかけるのはどの馬か、というところ。その中で、3戦無敗の重賞ウイナー・エリキングにスポットが当てられることは必至の情勢だが、懸念材料は決して少なくない。骨折休養明け、クラシックと相性の悪い京都2歳S勝ち馬、初の関東遠征、大トビの走法、中山への対応力……過剰に人気を集めるようであれば、妙味を考えると少なくとも「頭」勝負は避け、場合によっては「消し」でいってみたい。
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◆著者プロフィール
石川豊●いしかわゆたか 20代から競馬メディアに寄稿。「ユタカ人気」と言われた時代、武豊が騎乗する過剰人気馬をバッサリと切り捨てる馬券術を駆使し、年間回収率100%超に成功。以来、「1番人気の勝率は3割」を念頭に、残り7割の可能性を模索し、「危険な人気馬」理論を唱え続ける。