山本昌のスカウティングレポート2025年春〜新3年生編 山本昌(元・中日)がドラフト候補の技術を徹底分析する恒例企画が今年も実現。今春の選抜高校野球大会(センバツ)に出場したなかで、山本昌の琴線に触れた好投手をピックアップ。まずは6人の3年…

山本昌のスカウティングレポート2025年春〜新3年生編

 山本昌(元・中日)がドラフト候補の技術を徹底分析する恒例企画が今年も実現。今春の選抜高校野球大会(センバツ)に出場したなかで、山本昌の琴線に触れた好投手をピックアップ。まずは6人の3年生投手について、存分に語ってもらった。


甲子園で155キロをマークした健大高崎の石垣元気

 photo by Ohtomo Yoshiyuki

石垣元気(健大高崎3年/180センチ・78キロ/右投両打)

150キロ台のスピードを連発する投手なんて、高校生はもちろん、プロの世界にも少ないです。クセの少ないフォーム、ボールのキレと素晴らしかったです。ボールが出てくる角度がよく、高校時代の奥川恭伸くん(ヤクルト)を彷彿とさせる球筋ですね。ただ、大会直前に左脇腹を痛めて、復帰直後と聞きました。リリーフで打ち込まれた横浜戦は、ストレートのもうひと押しが足りなかったように感じます。昨夏と比べると、フォームのバランスや球質は「こんなものではない」という印象を受けました。実戦感覚がまだ乏しい春先だった影響もあったのでしょう。体調を万全にして最後の夏を迎えられれば、ドラフト1位は堅いと感じます。


横浜高の背番号1・奥村頼人

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奥村頼人(横浜3年/179センチ・83キロ/左投左打)

後輩の織田翔希くん(2年)が話題になるなか、名門・横浜のエース番号を背負って存在感を出していました。150キロを超えるような驚くボールはありませんが、まとまったフォームで両コーナーに曲がる変化球を持っているのは大きいです。とくにチェンジアップの精度が高く、どのカウントでも投げられるのがポイントです。ストレートもいい角度がついて、キレを感じます。欲を言えば、体重移動時にもう少し捕手方向への距離を詰められるといいですね。左腕を前で叩けるようになり、ストレートも変化球も低めに集まるはずです。体に力がついてくれば、自然と移動距離も広がるでしょう。


最速152キロを誇る智辯和歌山の宮口龍斗

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宮口龍斗(智辯和歌山3年/185センチ・87キロ/右投右打)

将来性にかけては今大会でトップクラスの好素材だと感じました。たくましい体つきで、ストレートも速い。技術的な伸びしろがたくさんあります。いずれ怪物クラスの大物になるポテンシャルを感じます。フォームは軸足が折れるのが早く、右腕がトップへと上がりきる前にボールを押し出しているように見えます。体重移動時にもうワンテンポ、間(ま)をつくれると、トップをつくれて右腕を叩けるようになるはず。ホームベース方向へのラインも安定してくるでしょうし、大化けする可能性は十分あります。


初戦の千葉黎明戦で完封勝利を挙げた智辯和歌山・渡邉颯人

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渡邉颯人(智辯和歌山3年/180センチ・88キロ/右投右打)

体のバランスがすごくよく、高校生ながら完成度が高い投手だと感じました。背中側へ反るフォームで、アウトステップを指摘されることもあるでしょうが、私は全体のバランスがいいので問題ないと感じます。アウトステップでも、西勇輝くん(阪神)のように大成している投手もいますからね。体重移動時に左肩がホーム方向へのラインから一度外れるのですが、最後には戻ってきます。右腕が真上のいい位置から出てきて、ストライクゾーンへいきやすい腕の振りになっています。ただ、左肩がラインから外れて、そのまま戻ってこない時があるのは改善したいところですね。球筋がバラける頻度が減って、さらに安定感が増しそうです。


初戦の明徳義塾戦で10回を投げ1失点完投で勝利した健大高崎・下重賢慎

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下重賢慎(健大高崎3年/182センチ・87キロ/左投左打)

健大高崎の投手といえば石垣くんや佐藤龍月くんのイメージでしたが、下重くんも素晴らしい左腕でした。変則的に見えるけど、上背があって、体全体を使えるのがポイントです。左腕がしなって、遅れて出てくるので、ボールの出どころが見づらい。打者は想像以上に速く見えるはずです。上下動の激しいフォームでも、体はストライクゾーンにしっかりと入っていけているのもいいですね。少し気になったのは、変化球が抜けるシーンが見られたこと。リリース時に手首が少し寝て、押し出すような形になって抜けてしまうのでしょう。手首が立ってくれば、外側へすっぽ抜ける球が減るはずです。


昨年夏の甲子園でも好投した明徳義塾・池﨑安侍朗

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池﨑安侍朗(明徳義塾3年/171センチ・65キロ/左投左打)

1球見ただけで「バランスがいい」と感じました。左投手のフォームの教科書と言っていいくらいで、さすが明徳義塾のエースですね。ラインのつくり方、鋭い腕の振り、タイミングと文句なし。たとえ上背が乏しく、球速が140キロに届かなくても、打者は速く感じるはずです。課題を挙げるとすれば、左肩を大きく速く回す際に、回りきらないまま腕を振ってしまうことがある点です。ボールが高めに抜けやすくなるので、修正できるといいですね。これから体に力がついて、体重移動の距離が長くなってくれば、肩が回る時間がつくれるはず。ボールもより低めに集まるようになるでしょう。

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