アジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)に出場中の日本代表に5人のメンバーを送り出している東海大が、筑波大から勝利をつかんだ。 5月8日、神奈川・東海大グラウンドで関東大学春季大会Aグループの初戦を迎え、筑波大を36-31で制した。SH…
アジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)に出場中の日本代表に5人のメンバーを送り出している東海大が、筑波大から勝利をつかんだ。
5月8日、神奈川・東海大グラウンドで関東大学春季大会Aグループの初戦を迎え、筑波大を36-31で制した。SH湯本睦は「メンバーがフレッシュななか勝利することができたのは、よかった点かなと思います」と安堵した。
抜群の存在感を示したFL藤田貴大前主将(東芝)ら昨季の主力はすでに卒業し、木村季由監督兼ゼネラルマネージャー(GM)は同大体育学部の研修制度を利してオーストラリアへ渡っている。さらには今度のARCにPR三浦昌吾、PR渡邉隆之、NO8テビタ・タタフ、CTBアタアタ・モエアキオラ、FB野口竜司が参戦中。主力組での試合経験が少ないメンバーでこの日を迎えた東海大だったが、先制点を許す苦しい試合をもぎ取った。
「やろうとしていたディフェンスがきちんとできた」と八百則和コーチ。昨季は関東大学リーグ戦で1位も、大学選手権の決勝では帝京大に17-27で屈した(1月10日/東京・秩父宮ラグビー場)。海の向こうの木村監督兼GMとともに反省点を洗い出し、守備の組織、タックルの質、肉弾戦を制する身のこなしを改めて強化してきた。
「昨年度はタックルミスでの失点が多かったので、システムを含めて堅いディフェンスを作ろう、と。また、帝京大さんに勝つにはブレイクダウン(肉弾戦)で勝負ができないといけない」
序盤はFL磯辺裕太主将いわく、「細かい意思疎通が取れていなくて、面(守備網)は張れていたのですが1対1のタックルでミスが…」という状態だった。前半2分にSO山田英貴の先制トライを与えるなどし、26分には0-10と差を広げられた。
もっとも東海大は、主軸のPRがいないなかでもセットプレーを安定させ、3点ビハインドで迎えた33分、敵陣ゴール前左ラインアウトからのモールを起点にFL磯辺主将がインゴールへ飛び込む。CTB金成志のコンバージョン成功で、14-10とこの日初めて勝ち越した。
ボール保持者への2人目の寄りにこだわった筑波大は、その持ち味を活かした継続で38分に14-17と逆転。後半2分には好調だったCTB亀山雄大が仕掛け、サポートについたCTB忽那健太主将がゴールラインを割る。14-24。
流れが不規則に行き交う接戦にあって、東海大は守備とスクラムで勝ち馬に乗る。
後半10分頃、敵陣ゴール前。筑波大が反則を犯すたびにスクラムを押し込む。得点こそ産めなかったが、「ここで盛り上がった。やってやろうという雰囲気になった」とNO8村松佑一朗は言う。
17分に19-24と追ったHO日高将吾は、「(スクラムでは)FW8人がまとまって強い姿勢を保っている。いつも通り、低く押すことができた」と振り返った。守ってもボールキープを目指す筑波大の接点に、より効果的なブローを打ち込んでいた。
日差しの強い人工芝でのゲームにあって、筑波大陣営では足をつる選手も続出。東海大は22分に26-24と勝ち越すと、27分、自陣ハーフ線付近右のスクラムの右脇をSH湯本が突っ切る。直前に両足を痛めたFL占部航典を振り切り、鋭いステップでFB河野友希もかわし、そのまま止めを刺した。
31-24。
最後の最後まで大声を張り上げるも敗れたCTB忽那主将が「前半は敵に向かっていけていたけど、後半にメンバーが交代していくなかで(連携などが)合わない部分が出てきた」と悔やむ一方、東海大のSH湯本は自身のプレーをこう振り返った。
「普段から(相手に)触られないことを意識しています。仲間のサポートもあってそれができたのは、よかったと思います」
31分にはハーフ線付近から放たれたキックにNO8村松が反応。守備網の裏を悠々と駆け抜け、だめを押した。
黒星を喫した筑波大は、前年度は関東大学対抗戦Aで3位も高校日本代表経験者を多く揃える。主力組や指揮官が不在の東海大にとって、この午後の白星は大きかろう。破壊的なタックルでチームを鼓舞したFL磯辺主将は、こう締めた。
「きょうは練習でしてきたことを出そうとしていましたが、あの5人がいないなかでも勝ちが欲しいとも話していました。彼らが帰って来てもポジションがないくらいの状態になるくらいにしなきゃいけない。コーチ陣を含めて、そう発信するようにしています。選手は育ってきている」(文:向 風見也)