愛媛、岡山、宮崎で山火事が発生し、3月としては26年ぶりの真夏日を記録した日から一夜明け、西日本を中心に強い雨が降りつ…

中島啓太カップに出場した選手たち。試合中も和気あいあい

愛媛、岡山、宮崎で山火事が発生し、3月としては26年ぶりの真夏日を記録した日から一夜明け、西日本を中心に強い雨が降りつけた27日。宮崎県日向市にある美々津カントリークラブでは、雷雲の切れ間を縫うようにジュニア大会が行われていた。

「第4回 ケーブルメディアワイワイ presents 中島啓太カップジュニアゴルフチャンピオンシップ」と題された大会は、スーパージュニア(小学3年以下、男女混合)・小・中・高(男女)の計7部門が設けられ、ジュニアゴルファー約100人が参加する。成績上位者にはゴルフダイジェスト ジャパンジュニアカップの出場権が与えられるが、決してそれが全てではない。

中島啓太の名が冠された今年から、プレー代を含む参加費は中島が全額負担。表彰式後に行われるビンゴ大会は、中島が自費購入したテーラーメイドのキャディバッグやカートバッグ、ほかにも協賛各社から多くの賞品が用意され、ゴルフの成績に関係なく、ビンゴによって参加者全員に賞品が行き渡る仕組みである。

中島啓太から大会に寄せられたメッセージ

中島は大会にこんな言葉を寄せている。「僕のゴルフの基本は試合(大会)を含めて常に楽しくラウンドすることです。ジュニアゴルフ時代、監督の下で、小学生ながらも高校生の大きなお兄さんたちとラウンドさせてもらうことが楽しくて、その中で技術やマナーを学びました。いい成績にこだわらず、自分が満足できる内容のゴルフで納得のいく形で終われるように頑張ってください」

中島が“監督”と呼ぶのは、大会のスーパーバイザーでアジアジュニアゴルフ協会代表理事、現在は美々津CCゴルフアカデミー校長を務める吉岡徹治氏だ。杉並学院ゴルフ部監督として石川遼をアマチュア優勝に導き、その後は代々木高アスリートゴルフコースの総監督に就任、自身でジュニアキャンプも主宰した。中島も、小学生の頃から吉岡氏のキャンプを通じてゴルフに魅了された一人である。

長年ジュニア育成を続けている吉岡徹治氏

成績よりも、もっと大切なコトがある。それは吉岡氏の指導においても一貫している。「好きにならないとうまくならない。楽しくないと好きにならない。だから、まずはゴルフを楽しいと思ってもらう」が基本方針。ビンゴ大会の前にはアカデミーの子どもたちがダンスを披露する段取りだ。ダンスもビンゴも「ゴルフって楽しい!」と思ってもらうための演出の一つである。

しかし、吉岡氏の視線はその先も捉えている。「プロになれる選手なんてひと握りで、そうじゃない人の方が圧倒的に多い。だから、アジアのリーダーになれるような人間を育てる方が大事」と言う。そう考えるようになったのは比較的最近だ。「中島が勝つまでは、プロツアーでもう一人、アマチュア優勝者を出そうとやってきた」と告白する。中島による史上5人目のアマチュア優勝は、石川遼という才能に「偶然めぐりあった」と自認する、尊く、重い宿命から逃れるために必要な“免罪符”ともなった。

美々津CCゴルフアカデミーの子どもたちによるダンスパフォーマンス

中学・高校の教員免許を持つ吉岡氏は「しょせん、俺は教育者なんだよね」と苦笑するが、ゴルフを通じた教育のメリットとデメリットは理解している。メリットは自己管理を覚えること。全ては自己責任で、自分の行動・判断が自分自身に跳ね返ってくるのがゴルフである。一方で、自己中心的になりやすい危険もはらむ。自分が勝ちさえすればいい、嘘をつき、ズルをしてでもスコアを良くしたいという衝動に飲み込まれやすいのだ。

「だから、仲間とか絆が大切なんだよ――」。個人競技であるゴルフに団体要素を持ち込んで、チームで何かをやらせることで、きずなが生まれ、仲間のことを考えられるようになっていく。仲間が勝ったら素直に喜べるようになる。グループの中に自然とリーダーが生まれていく。

キャディバッグが当たったよ!

昼頃に発生した雷雲の影響で、競技は9ホールに短縮された。クラブハウスに引き上げてきた子どもたちは、テーブルに並べられたお菓子やオードブル、そして前方に置かれた大量の賞品に目を輝かせた。表彰式が終わってからが本番だ。ダンスは子どもたちが企画して、ビンゴ大会の司会進行も子どもたちが行っている。そんな様子を少し離れたところから見守っていた吉岡氏は、中島のようなスター選手を育てることも、アジアのリーダーを育てることも「基本コンセプトは変わらないんだよ」と教えてくれた。(今岡涼太)

もちろんゴルフも楽しみました! 中島啓太提供の豪華賞品が当たってご満悦