昨季、リーグ優勝を果たした巨人は大型補強を敢行。他チームが「打倒・巨人」を目指す今季は、果たしてどんな展開になるのか。長らく巨人の主力として活躍し、引退後は巨人の打撃コーチや内野守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任した篠塚和典氏に、セ・リー…
昨季、リーグ優勝を果たした巨人は大型補強を敢行。他チームが「打倒・巨人」を目指す今季は、果たしてどんな展開になるのか。長らく巨人の主力として活躍し、引退後は巨人の打撃コーチや内野守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任した篠塚和典氏に、セ・リーグの順位予想と展望を聞いた。
4月3日に日米通算198勝目を挙げた田中将大
photo by Sankei Visual
【1位予想:巨人】
<動画で見る>篠塚和典のセ・リーグ順位予想↓
――昨季、リーグ優勝した巨人を1位に予想されました。
篠塚和典(以下:篠塚) 菅野智之は抜けましたが、大勢とライデル・マルティネスを中心にリリーフ陣がしっかりしています。先発は5回か6回くらいまでしっかり投げられればいいので、気持ちもある程度は楽になりますし、相手は早いイニングに点を取ろうと焦りが出てくるでしょう。
問題は、菅野が昨季に挙げた15勝をどうカバーするかですが、戸郷翔征が10~12勝くらいだと厳しいような気がします。戸郷が15勝、山﨑伊織や井上温大が昨季よりも3、4つ勝ち星を上積みすることが理想ですね。あとはフォスター・グリフィンがいて、残り枠は石川達也、横川凱、堀田賢慎、赤星優志らが今季こそ先発の座をつかめるのか、または何人かで回すのかというところですね。
――甲斐拓也選手の加入は大きい?
篠塚 大きいと思います。ソフトバンクでも日本代表でも、あれだけの経験を積んできたわけですから。甲斐を軸に戦っていくようなので、他のキャッチャーたちは出番が減ってしまいますが、ベンチから見ていて勉強になることが多いと思います。しっかり吸収して、出た時に活躍してもらいたいですね。
――田中将大投手は先発ローテーションの一角として期待されています。
篠塚 日米通算200勝まで(4月3日に今季初勝利を挙げて)あと2勝ですよね。開幕から5試合登板した時点で3勝(2敗以下)できたら、その後もある程度はいい流れに乗っていけるのかなと。逆に、5回登板して1勝や2勝どまりだとちょっときついと感じてしまいます。ストレートにかつての速さはないですが、変化球は多彩ですし、甲斐がうまくリードしてくれると期待しています。
野手陣では、丸佳浩の故障で若林楽人、オコエ瑠偉、中山礼都、浅野翔吾、秋広優人、萩尾匡也らがシーズン序盤にチャンスをつかめるかですね。
【2位予想:阪神】
――2位は阪神と予想されました。
篠塚 藤川球児新監督になりましたが、新監督になったシーズンは意外と勝てるケースが多いんです。昨季の巨人(阿部慎之助監督)とソフトバンク(小久保裕紀監督)も、就任1年目の監督でリーグ優勝しましたよね。
指揮官が代わると自ずとチームの雰囲気が変わります。それがいいほうに出るか、悪いほうに出るかはやってみなければわかりませんが。シーズンは長いですし、負けが続いた時などに監督がどう雰囲気を作っていくかが重要です。
――打線の印象はいかがですか?
篠塚 佐藤輝明、森下翔太、大山悠輔と軸がしっかりしていますし、オープン戦では前川右京がよく打っていました。前川や新外国人のラモン・ヘルナンデスあたりが打てば、打線がさらに厚くなりますよね。昨季不調だった中野拓夢の状態もよさそうですし、近本光司、中野が出塁すると活気づきますからね。
ピッチャーは昨季不振だった村上頌樹あたりがどれだけ勝てるかがポイントだと思います。村上の復活やエースの才木浩人をはじめとしたピッチャー陣全体のやり繰りは、投手コーチの働きはもちろん、ピッチャー出身の藤川監督の腕の見せどころですね。
【3位予想:DeNA】
――昨季、日本一のDeNAを3位予想とした理由は?
篠塚 牧秀悟、タイラー・オースティン、宮﨑敏郎が順調であれば、打線はある程度点が取れるでしょうから、ピッチャーの出来が浮沈のカギを握ると思います。トレバー・バウアーが復帰したのは大きいですね。
バウアーのほかにもアンドレ・ジャクソン、アンソニー・ケイと先発に外国人投手が多く、彼らの短い登板間隔をキープして、他のピッチャーを空き日に当てはめていく可能性もあるようですが、他のピッチャーがどう受け止めるのかなと。その部分はポイントになるでしょうね。
――日本一になった経験はどんな継承がありそうですか?
篠塚 野手にとってもピッチャーにとっても大きいですよ。野手であれば、梶原昂希や森敬斗ら伸び盛りの若手も大舞台を経験できましたし、今季にも活かせる部分があるでしょうね。ただ、チームとしてはもう1回気を引き締め直して向かっていく、といった気持ちになることが重要です。
【4位予想:ヤクルト】
――巻き返しをはかるヤクルトは、村上宗隆選手が離脱するなど故障者が多いですね。
篠塚 村上の離脱は痛いです。塩見泰隆は戻ってきたと思ったら、(3月22日の日本ハム戦で)足を痛めて途中交代し長期離脱が示唆されていますし、山田哲人もコンディションへの不安は残るでしょうから、どこまでできるかですね。内野の複数ポジションを守れる茂木栄五郎が入ったりもしていますが、先に挙げた3チームと比べると野手の層に差を感じてしまいます。
――ピッチャー陣はいかがですか?
篠塚 ベテランの石川雅規や小川泰弘に頼らなければいけない状況で、若手が出てこないとちょっと厳しいかなと。守護神候補の新外国人マイク・バウマンも上半身のコンディション不良で離脱してしまったようですし、先発もリリーフも手薄な感は否めません。オープン戦で結果の出ている赤羽由紘や丸山和郁ら若手が奮起して、なんとかチームを盛り上げていってほしいですね。
【5位予想:広島】
――昨季はシーズン終盤に失速してしまった広島ですが、現状をどう見ていますか?
篠塚 坂倉将吾の離脱は、特に打つほうで痛いです。新外国人のエレウリス・モンテロがある程度結果を残していて期待が持てますし(3月30日の阪神戦で負傷し離脱中)、同じく新加入のサンドロ・ファビアンもオープン戦の終盤で長打が出ていました。ただ、シーズンに入って攻め方が変わってくるので、そこでどう対応できるかですね。それは巨人のトレイ・キャベッジにも言えることです。
――ピッチャー陣は先発もリリーフも充実している印象です。
篠塚 九里亜蓮は抜けましたが、常廣羽也斗やドラフト2位ルーキーの佐藤柳之介(富士大)もいいボールを投げていますし、力のある若手が控えていますね。リリーフ陣も強力ですし、広島の場合はいかに点を取るかがポイントです。
野間峻祥や末包昇大、堂林翔太らの中堅が計算どおりであれば、モンテロやファビアンら新外国人次第で上位を狙っていけると思います。そこに二俣翔一、林晃汰、中村奨成、ドラフト1位ルーキーの佐々木泰(青学大)ら若手の誰かが台頭してくればさらにいいですね。
【6位予想:中日】
――中日は、今季も最下位と厳しい予想ですね。
篠塚 小笠原慎之介とマルティネスが抜けたのがマイナス要素です。髙橋宏斗は計算できますし、新外国人のカイル・マラーはある程度やってくれそうですが、そのほかのピッチャーがどれだけ活躍できるか。ドラフト1位ルーキーの金丸夢斗(関西大)など、チーム全体でどれだけの上積みがあるかです。
あと中日の場合は打線が弱いので、ピッチャーが辛抱しきれなくなるケースも出てきそうです。主軸として期待していた新外国人のジェイソン・ボスラーや、正二塁手候補として期待していた福永裕基が開幕前に離脱したのも痛いです。
今回、Aクラスと予想した巨人、阪神、DeNAと、Bクラスを予想したヤクルト、広島、中日の差がちょっと開いているような印象がありますが、苦しい状況のチームには奮起してもらいたいです。巨人にとってはリーグ連覇と、今季こそ日本一達成を目指して臨むシーズン。白熱した試合を期待しています。
【プロフィール】
■篠塚和典(しのづか・かずのり)
1957年7月16日生まれ、東京都出身、千葉県銚子市育ち。1975年のドラフト1位で巨人に入団し、3番などさまざまな打順で活躍。1984年、87年に首位打者を獲得するなど、主力選手としてチームの6度のリーグ優勝、3度の日本一に貢献した。1994年を最後に現役を引退して以降は、巨人で1995年~2003年、2006年~2010年と一軍打撃コーチ、一軍守備・走塁コーチ、総合コーチを歴任。2009年WBCでは打撃コーチとして、日本代表の2連覇に貢献した。