「巨人0-1阪神」(6日、東京ドーム) 虎のホープが伝統の一戦で大きな一歩を記した。阪神・門別啓人投手(20)が今季2度目の先発で5回2/3を5安打無失点に抑え、待望のプロ初勝利を挙げた。リリーフ陣も会心のリレーで1-0の完封勝利。シーズ…

 「巨人0-1阪神」(6日、東京ドーム)

 虎のホープが伝統の一戦で大きな一歩を記した。阪神・門別啓人投手(20)が今季2度目の先発で5回2/3を5安打無失点に抑え、待望のプロ初勝利を挙げた。リリーフ陣も会心のリレーで1-0の完封勝利。シーズン最初の巨人3連戦3連勝は2004年以来、21年ぶりとなり、単独首位に浮上した。開花の時を迎えた若き左腕が、藤川阪神の未来を切り開いていく。

 何度もつかみかけ、届かなかった。近いようで遠かった。門別は岩崎からボールを受け取ると、左手でぎゅっと握って顔をほころばせた。高卒3年目、プロ通算9試合目の登板でやっとつかんだプロ1勝だ。

 「本当に初勝利が遠くて、やっと勝ててうれしいなあっていう気持ちでいっぱいです」

 苦い記憶が残るマウンドだった。開幕1軍入りした昨季は5月3日・巨人戦(東京ド)で3回6安打6失点と精彩を欠いてプロ初黒星。「初めてぐらい打ち込まれて。考えられなくなった」。以降はファームで苦悩の日々が続いた。

 6月4日のウエスタン・広島戦(由宇)では球がいかなくなった。「フォームが良くないから」と修正を試みたが、3四死球と荒れ、5回6失点。そんな時、青柳、西勇、伊藤将らに「6月は疲れてくる」と言われ、思い込みだったことに気づかされた。その後は体の張りで1カ月の登板回避も経験。「疲れている中でも、いかにいい球を投げられるか」が必要と考え、可動域を広げるトレーニングや筋力アップにも取り組んだ。

 時には自身の投球スタイルも見失った。5月3日の試合後に「抑える配球も必要」と直球にこだわりすぎていたことを反省。しかしファームでは変化球でかわす、らしくない投球が続いたこともあった。もどかしかった。「真っすぐで押す強気なピッチングを取り戻したい」。また一から直球を磨くことを決意した。秋季キャンプからは脱力を意識。「力感なく、強い球を投げられるように」と努力を重ねた。

 今春キャンプ、オープン戦と結果を残してつかんだ開幕ローテ。そしてあの日から約1年ぶりに対戦した巨人打線を封じた。1点リードの四回2死一塁で迎えたのは前回2ランを被弾した岡本。「おじけづくことなく投げられた」とフォークで空振り三振に。五回2死一、二塁では前回適時打を浴びた代打・坂本を直球で左飛に打ち取った。

 六回2死一、三塁となったところで工藤に交代し、ベンチから祈るように見つめた。右腕が空振り三振を奪うと思わず拍手。プロ最長の5回2/3を5安打無失点で初白星を挙げ、巨人戦3連勝、単独首位浮上に導いた。「先輩方が抑えてくれてありがたかった」と感謝。「初勝利が巨人相手で良かった」といい思い出に変わった。

 ウイニングボールは「両親にあげたい」と門別。「早く恩返ししたくて投げていたんですけど、遅くなっちゃったので。勝ちをもっと重ねてもっともっと恩返ししたい」とはにかんだ。地元北海道のスターだった大谷翔平にあこがれ、小学4年から歩み始めた投手人生。門別が言い続けてきたことがある。「先発で初勝利したい」。その根底には思い描く将来像があった。「先発でチームに貢献していきたい。できるだけ早く阪神のエースの位置にいけるように」。20歳の道産子左腕が、虎の未来を担っていく。

 ◆門別 啓人(もんべつ・けいと)2004年7月10日生まれ、20歳。北海道出身。183センチ、88キロ。左投げ左打ち。投手。東海大札幌から22年度ドラフト2位で阪神入団。プロ初登板は23年9月15日・広島戦でリリーフ。プロ初先発は同30日の同戦で勝敗なし。覚醒への期待がかかる高卒3年目左腕。