梶谷隆幸氏は2016年CSで死球を受けて骨折した「蒼い韋駄天」の異名でDeNAなどで活躍した梶谷隆幸氏は、球団として初出場となった2016年のクライマックスシリーズ(CS)で、試合中に死球で骨折するアクシデントに見舞われた。「プロに入って人…

梶谷隆幸氏は2016年CSで死球を受けて骨折した

「蒼い韋駄天」の異名でDeNAなどで活躍した梶谷隆幸氏は、球団として初出場となった2016年のクライマックスシリーズ(CS)で、試合中に死球で骨折するアクシデントに見舞われた。「プロに入って人前で泣いたのは、あの1度だけ」という涙の退場を振り返った。

「もう9年前の話なんですね……最近のことのように思うわ」

 2016年にシーズン3位へ滑り込んだDeNAは球団史上初のCS進出を果たした。10月10日、1勝1敗で迎えた巨人とのファーストステージ第3戦、梶谷氏は初回の打席で内海哲也が投じたインハイへ抜けた球を避けきれず、左手薬指に受けて骨折した。

「当たった瞬間に折れたとわかりました」。治療でベンチ裏に戻るも、激痛で打撃用手袋を外すことすら困難に。プレー続行が厳しいことは自分でも分かっていた。

「もう出られないと思ったら悔しくて……。勝ち負けが決まる3戦目の初回だったし。あの時だけかな、プロに入って人前で泣いたのは、あの1度だけ」

 試合中にチームを離れて病院へ直行。治療を受けて6回頃に東京ドームに戻ったという。緊迫の展開が続いていたが、DeNAは同点の延長11回に1点を勝ち越して勝利。12日からの広島とのファイナルステージ進出を決めた。

「最後のライトフライを(関根)大気が捕ったときに一緒に喜んでいたんですけど、『あれ、待てよ。明後日、広島で試合あるじゃん』と、ふと思ったんです。これはもう、俺も行くしかないなと」。1度は“鎮火”した闘志が再び湧き出してきた。

試合後に中畑清氏、高木豊氏から着信

 試合後には前年までDeNAの監督だった中畑清氏、球団OBの高木豊氏からの着信。「『お前できるなら死んでも出ろ』『絶対出ろ』って。2人とも同じようなことを言ってきたんです。もちろん、僕もそのつもりでした」。

 翌11日、広島へ到着するや病院に向かった。針を火であぶって殺菌し、患部へ刺して溜まっていた血を抜いた。「原始的なやり方でしたけど、少し楽になったんです」。12日からの広島との日本シリーズ進出をかけた戦いは、ラミレス監督に直訴して出場した。

「試合にでるからには1人の選手として。痛いとか言っていられない」。痛みに耐えてプレーを続けた。梶谷の18年のプロキャリアで欠かすことのできない、壮絶なCSとなった。(湯浅大 / Dai Yuasa)