サッカー日本代表が2026年ワールドカップへの出場を「世界最速」で決めた。この大会の主催者は「The Greatest World Cup」と、大会を自ら褒めたたえるが、その言葉は「真実」なのか。サッカージャーナリスト大住良之が「問題点」…
サッカー日本代表が2026年ワールドカップへの出場を「世界最速」で決めた。この大会の主催者は「The Greatest World Cup」と、大会を自ら褒めたたえるが、その言葉は「真実」なのか。サッカージャーナリスト大住良之が「問題点」を指摘する!
■2026年W杯は「最も偉大」な大会なのか
日本が「最早」で予選勝ち抜きを決め、その後ニュージーランド(オセアニア)、イラン(アジア)、アルゼンチン(南米)と、続々と出場国が決まったFIFAワールドカップ2026。アメリカを中心に、カナダとメキシコも舞台になる、史上初めての「3か国共同開催」である。
「The Greatest World Cup」―。大会組織委員会は、そう謳い上げる。
しかし、「The Greatest」は、「最も偉大な」ではない。現時点では単に「最も大きな」と訳すのが正しい。もちろん、そうなる可能性はあるが…。
出場国数が、1998年フランス大会から7大会続いてきた「32」から1.5倍の「48」に増える。試合数は、これまでの「64」から一挙に「104」となる。試合会場は、図らずも「共同開催」となった2002年の日韓大会(20会場)に次ぐ16会場である。
最大の違いは「ノックアウトステージ」にある。決勝戦(あるいは3位決定戦)まで戦うと、従来はグループステージ3試合、ノックアウトステージ4試合の計7試合だったが、今回はノックアウトステージが「ラウンド32」からとなるため、1試合増えて5試合、計8試合となる。
当然、大会日程も長期化し、これまでの最長だった1998年フランス大会の33日間を大きく上回り、39日間となる。6月12日木曜日にメキシコのメキシコシティとグアダラハラで開幕戦が行われ、7月19日日曜日にアメリカのニューヨーク(ニュージャージー)で決勝戦となる。
■観客数は「史上最多」を記録
当然、観客数も「史上最多」を記録するだろう。これはほぼ間違いない。過去21回のワールドカップの最多観客記録は1994年アメリカ大会の358万7538人。1試合平均6万8991人だった。しかも、この大会は出場24チームで、総試合数は今回の大会の半分の52試合だった。
1994年アメリカ大会ではスタジアムのすべてがアメリカンフットボール用の巨大スタジアムだった。「最少4万人」とされる「ワールドカップ基準」を大きく上回ったため、1試合平均7万人近くのファンを引きつけた。
今大会で使用する16スタジアムのひとつ、トロント・スタジアムは、収容2万8180人。カナダで初めてのサッカー専用スタジアムで、カナダ代表のホームスタジアムとなっている。しかし、メキシコを除けば、他の大半は今回もアメリカンフットボールで使われる巨大スタジアム。トロントを含めた16会場のキャパシティの平均は6万6492人にもなる。史上初めての400万人台はもちろん、600万も優に超すのではないか。
■「大きく違う」会場数や試合数
「カナダ・アメリカ・メキシコ大会」と、北から順に並べるのがいいのか、英語の国名でABC順に「カナダ・メキシコ・アメリカ大会」と呼ぶのがいいのか、それとも「北米大会」とするのがいいのか―。しかし、「3か国共同開催」と言っても、日韓で32試合ずつ開催した2002年大会と違い、会場数も試合数も3か国で大きく違う。
カナダはトロントとバンクーバーの2会場で、総試合数は13。メキシコはメキシコシティのほか、グアダラハラとモンテレイの計3会場が使われるが、やはり総試合数は13。残りの78試合が、アメリカの11の会場を舞台に行われるのである。
ちなみに、グアダラハラとモンテレイでは今世紀に入って建設された新スタジアムで試合が行われるが、6月11日にメキシコ代表が開幕戦を戦う「アステカ・スタジアム」は1966年に完成した「築60年」という古いスタジアム。1970年大会、1986年大会の決勝戦の舞台であり、史上初めて「3大会のワールドカップで使用されるスタジアム」となる。