アーセナルの本拠地である「エミレーツスタジアム」でプレーできる――。実はこれ、プロ選手ではなく一般の人たちに向けた話。そんな夢のような企画が、5月に実施される。今回は仕掛け人である高橋尚輔氏に話を聞き、プロジェクトの内容や実現に至った経緯な…

アーセナルの本拠地である「エミレーツスタジアム」でプレーできる――。実はこれ、プロ選手ではなく一般の人たちに向けた話。そんな夢のような企画が、5月に実施される。

今回は仕掛け人である高橋尚輔氏に話を聞き、プロジェクトの内容や実現に至った経緯などを前・後編に分けて紹介する。この後編では、企画がスタートすることになった背景や今後の展望などに迫る。

高橋尚輔(たかはし・なおすけ)

1975年7月23日生まれ。株式会社エクスクルーシボ代表取締役。三菱養和SC、国士舘大学サッカー部でプレーし、卒業後は株式会社ディスクガレージに入社。エンタメ関係で手腕を発揮する一方、バレンシアやバルセロナを招聘するなどスポーツ分野でも尽力。その後、Jリーグ・横浜FCの営業部長など要職を歴任した。独立後は当時スペイン2部所属CEサバテルの経営陣に入り、精力的に活動。日本で行われた「レアル・マドリード・ファンデーションキャンプ」に携わる中、“ピピ”ことMF中井卓大を発掘したことでも知られている。

◆【前編】「アーセナルのホームスタジアムでプレーできる!」人気企画が5月に再び実現 公式戦の流れをリアル体験……ガナーズOBも参加へ

■2部サバテルの経営にタッチ

ビッグクラブのホームスタジアムで試合を行うという企画は、前編でも紹介したように過去4回実施され、今回のエミレーツで5回目(1~3回目まではカンプノウ、4回目はエティハド)となる。

そもそも、なぜこのような大胆な企画がスタートできたのか。それは高橋氏の経歴が大きな要因となっている。

話は少しさかのぼるが、2012年頃「日本人がCEサバテルを買収」という衝撃的なニュースが駆け巡ったことは記憶にないだろうか。スペインのサバテルは、FW指宿洋史(ウェスタン・ユナイテッド)も所属していたクラブで、この経営権を日本人(坂本圭介氏=株式会社イープラスユー代表取締役)が取得したのだ。

この買収により、当時2部に所属していたクラブは経営陣を一新。その新経営陣に加わり、約4年間携わったのが、高橋氏だ。その中で培った人脈や知見を生かし、「ビッグクラブのスタジアムで一般参加者がプレーする」という企画を成功させたことは、容易に想像がつくだろう。

「大人の遊び企画」発起人の高橋尚輔氏

■何気ない世間話がきっかけ

実際にこのイベントが産声をあげた瞬間を、高橋氏は今も鮮明に覚えている。スペインでは試合前日、ホームチームがアウェイチームのスタッフを食事会などでもてなす習慣があり、サバテルの一員となった高橋氏もそこに参加する機会が多々あったという。

「そういう席では各クラブと意見交換などをしていました。そんなある日、私が何気なく『プロの中でも実際にカンプノウでプレーできる日本人選手って少ないんですよね。私もカンプノウで試合をしてみたいな』と漏らすと、それを聞いたバルセロナ関係者が『いいね、それ。グランドを貸すことはできるかもしれないよ』と返してきたのです」と振り返った。

コンサートやスポンサーのために開放することはあっても、旅行客がピッチでプレーすることなど前代未聞。ただ、この返答により荒唐無稽な話ではないと悟った高橋氏は、企画の実現へ向けて動き出した。「せっかくならグラウンドでプレーする以外にも色付けをしたい」と考え、OB選手にも参加してもらうこと、チームバスで宿泊ホテルまで迎えに来てもらうこと、スタジアム内のロッカールームを使わせてもらうことなどをバルサ側に提案し、了承を得た。さらに、試合後にはVIPルームで食事を取ることも可能にした。

実際に選手が利用するクラブバスでスタジアムへ移動

■リバプールからもOK

こうしてスタートした企画は、これまでカンプノウで3回実施。この実績は力強く、今ではレアル・マドリードをはじめ、スペイン国内のほぼ全クラブからグラウンド提供にOKが出るほどになっている。また、スペイン以外でもリバプールやユベントス、さらに南米からはボカ・ジュニアーズなど世界に冠たるクラブからも前向きな返事が届いているという。

高橋氏は最後、この企画に対する思いを明かしてくれた。「大人のやる気スイッチを押してあげられたらいいですよね。誰もがいずれ体が思うように動かなくなります。特に年齢を重ねると、それを実感すると思います。でも、実際にそうなる前に“大人の遊び場”をできるだけ用意してあげたいですし、後年になって後悔してほしくないので、もう一度ワクワク、ドキドキを体験してほしいという気持ちでプランを練っています」。

「ビッグクラブのスタジアムでチームOBを相手に試合をする」――そんなスペシャルな非日常体験に参加する価値は十分にありそうだ。

元アルゼンチン代表・サビオラなどレジェンドOBがイベントに参加

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