4月5日に開幕する関西六大学リーグ。今年のドラフト候補で数少ない右のスラッガーとして注目を集めているのが大阪学院大のエドポロ・ケイン(4年=日本航空)だ。 総合格闘家として活躍するエドポロ・キングを兄に持ち、自身も身長190センチ、体重10…
4月5日に開幕する関西六大学リーグ。今年のドラフト候補で数少ない右のスラッガーとして注目を集めているのが大阪学院大のエドポロ・ケイン(4年=日本航空)だ。
総合格闘家として活躍するエドポロ・キングを兄に持ち、自身も身長190センチ、体重101キロと恵まれた体格と身体能力を有する。関西六大学リーグで通算8本塁打を放つスラッガーで、守備や走塁の能力も高い外野手だ。
主将に就任した今年は横浜、中日で活躍した佐伯貴弘(大阪商業大)が持つ通算12本塁打と西武のドラフト2位ルーキー・渡部 聖弥(大阪商業大)が持つ1シーズン5本塁打の更新を目標に掲げている。今年は念願のプロ入りを目指すエドポロのこれまでの成長ぶりや今年に懸ける想いに密着した。
東海大相模戦の活躍で注目を集めるが指名漏れ
出身は大阪府大阪市。ナイジェリア人の父と韓国人の母の間に4人兄弟の三男として生まれる。父は194㎝、母が170㎝近くとともに長身だったこともあり、幼少期から周りよりも背は高かったそうだ。
兄のジョセフ(京都ジャスティス)とキングが野球をしていた影響で小学2年生から野球を始め、中学時代は南大阪ベースボールクラブに所属。高校は最初に声をかけてもらった山梨の日本航空に進学した。
中学生の頃は「本気で取り組んでいなかった」と言うが、入学直後に就任した豊泉啓介監督の薫陶を受け、野球に対して真摯に取り組むようになった。
エドポロの名を轟かせたのが3年春の関東大会。センバツ王者の東海大相模を相手に3安打3打点の活躍で勝利に貢献した。
「高2の冬くらいからスカウトの方に見てもらっていましたけど、関東大会の後の方が来る数が増えました」とプロのスカウトも注目する存在となる。最後の夏は甲子園に出場して、チームは16強入り。打撃では12打数1安打と苦戦したが、守備では1回戦の東明館戦でセンターからレーザービームで本塁をアウトにするなど、身体能力の高さをアピールした。
夏の甲子園が終わってからプロ志望届を提出。本人の記憶では2球団から調査書が来ていたものの、「夏が全然ダメだったので、選ばれないかなというのはありました」とさほど自信はなかった。
当初から支配下でなければ、進学を予定していたという。結果は残念ながら指名漏れ。実家から近く、高校の同級生も進むことになっていた大阪学院大への進学を決めた。
対応力の低さ、パワー不足を痛感 技術、パワーアップに努める
1年生の春からリーグ戦に出場するも春秋ともに打率1割台と苦戦。大学野球の投手のレベルの高さに驚かされた。
「高校の時は追い込まれても『まだいける』というのはあったんですけど、大学のピッチャー追い込まれたら難しかったです。今年に龍谷大を卒業した左腕投手の茨木篤哉さん(NTT西日本)は天敵でした。スライダーがヤバかったですね」
技術的な苦戦だけでなく、パワー不足も痛感。捉えたと思った当たりがフェンス直撃に終わることもあった。
それからは筋力トレーニングに励み、2年春には3本塁打と飛躍。「詰まっていても入らないかなという当たりも入るようになりました」と成長を実感した。この3年間で体重は約20㎏も増えたという。
きっかけを掴んだエドポロは秋も2本塁打を記録。3季連続で1割台だった打率も.243に上げ、着実にステップアップしていた。
エドポロが3年生になるタイミングで新たに就任したのが中村良二監督。天理の主将として1986年夏の甲子園優勝に導き、その後は近鉄と阪神で計11年間のプロ野球生活を送った。引退後には指導者となり、天理大と天理の監督を歴任。教え子には太田椋(オリックス)や達孝太(日本ハム)らがいる。
中村監督はエドポロを練習熱心な選手という印象を受けたそうだ。
「『練習しなさい』とその時はまだそこまで知らなかったから言っていましたけど、コーチに『よく練習するね』と言ったら、『元々彼は練習前に来て、練習後も人より練習するタイプでした』と言っていたから、元々そういうモチベーションは持っていたんだと思って、そこはすごく安心しました」
プロ入りへの想いは元から持っていた選手。自分の能力を上げるために努力を惜しまないのがエドポロ・ケインという男だ。
野球人生初の主将に就任 チーム一の練習量で牽引
これまでは打席で手が先に出てしまう癖があったが、それも徐々に改善。3年春も3本塁打を放ち、打率も初めて3割台を達成した。
一転して、3年秋は打率.178で0本塁打と苦戦。だが、野手の正面を突くライナーなど不運な当たりが多く、手応えは悪くなかったという。
最上級生になると、主将に就任。前主将の宮田海聖(熊本工)から中村監督に対して、「言葉一つに重みがある選手がキャプテンをした方が良いと思うので、この学年ではエドポロが一番良いと思います」と推薦があったのが理由だった。
だが、「自分のことに集中したいというのが正直ありました」と最初は固辞。それでも宮田から「お前がやるしかない」と説得され、「やっぱり勝ちたい気持ちもあったので、勝ちたいんだったら、自分がやるしかない」と野球人生初の主将になることを受け入れた。
主将になることは一野球選手としての成長にもつながると中村監督は感じている。
「これから野球を覚えようと思ったら、視野を広くして、周りのことも考えながら自分のことができた方が絶対に自分の野球にも役立つから、キャプテンという役職は今後の彼の野球人生にはすごく良い1年間になるとは思います。今のところ、しっかりキャプテンシーを出してチームをまとめてくれていますね」
仲間からの信頼も厚い。同級生で副主将の村上琢磨(延岡学園)はこう語る。
「普段はテンションが高くて、面白いやつなんですけど、野球に関しては的を射たような素晴らしい言動があったり、キャプテンシーを持ったとても熱い男だと思います。大阪学院大で一番の練習量で、いつも自主練を夜遅くまでやったあと、朝早く来て自主練しています」
近年の大阪学院大はリーグでBクラスが続いており、昨秋は勝ち点0の最下位に終わった。チームを浮上させるためにもエドポロが起爆剤となってチームを引き上げる必要がある。「プレーで引っ張りたい。自分が打って、チームを勝たせたいです」と結果で示すつもりだ。
今春の目標はあと4本に迫った関西六大学リーグ記録の通算12本塁打と1シーズン5本塁打の更新。それが達成できれば、チームの成績も自ずと上向くだろう。「チームが勝って神宮に行って、その先にプロに行けたら良いと思っています」と意気込んでいる。
プロ入りは自分だけの夢ではない。2人の兄もプロ野球選手を目指していたが、結果的には届かなかった。エドポロ一家にとって、ケインは最後の砦。兄には打撃の動画を送って、アドバイスをもらうこともあるそうだ。
様々な想いを背負って戦う大学ラストイヤー。春季リーグ戦は4月5日にGOSANDO南港野球場で開幕する。規格外のパワーを持つ主砲の活躍に要注目だ。