「ヤクルト3-0広島」(3日、神宮球場) 広島は散発2安打で今季2度目の完封負けを喫した。これで1勝4敗となり、単独最下位に転落。2021年から4シーズン連続で勝ち越していない神宮で連敗スタートとなった。新井貴浩監督(48)は「悔しい」と…
「ヤクルト3-0広島」(3日、神宮球場)
広島は散発2安打で今季2度目の完封負けを喫した。これで1勝4敗となり、単独最下位に転落。2021年から4シーズン連続で勝ち越していない神宮で連敗スタートとなった。新井貴浩監督(48)は「悔しい」と歯ぎしり。前日の試合で歯を8本損傷する大けがを負った二俣翔一内野手(22)が志願の強行出場を果たす発奮材料があったが、淡泊な攻撃に終始した。
屈辱の敗戦後、三塁ファウルゾーンを歩きながらクラブハウスへ引き揚げる新井監督は、スコアボードを見た。「うーん。2安打完封負けでしょ?悔しいよね。それだけかな」。いつもは敗れた後でも前向きな言葉を並べる指揮官が、シーズン序盤にもかかわらず、珍しくうつむいた。
2時間14分の試合時間が物語るように、攻撃面での見せ場はなかった。安打は三回の石原の二塁打と五回にファビアンが放った左前打のみ。六回以降はヤクルト・小川にパーフェクトに封じられ、92球での完封星を献上。指揮官は「小川も調子良さそうだったし、(捕手の)中村も的を絞らせないリードだった」と完敗を認めざるを得なかった。
22歳の若武者が見せた不屈の闘志を前に、何としても勝ちたい一戦だった。開幕から1番起用の続く二俣は前日2日・ヤクルト戦で犠打を試みた際、ファウルチップが顔面に直撃して負傷交代。病院に直行し、上下の前歯が計8本損傷していた。中には歯髄から脱臼している歯もあり、欠けた部分はくっつけて整復し、ワイヤーで固定。口内の裂傷に対しては8針縫うほどの大けがだった。
当然、食事も満足にできない状況でゼリー系飲料やおかゆでのエネルギー摂取を余儀なくされた。そんな中で新井監督からの「どうする?」の問いに二俣は「どうしても出たいです」と回答。試合前の打撃練習はバントから始めて、「1番・中堅」でスタメンに名を連ねた。
結果は4打数無安打。試合後には「試合に出ている以上は全力でやるのは当たり前。いつも通りプレーはできているので、しっかり何とかチームを勝たせて、勝ちに結びつくバッティングがしたかった」と悔しさをあらわにした。一方で新井監督は「もちろん痛いだろうし。その気持ちっていうのを買いたい」と力を込めた。
これでチームは開幕から2カード連続の負け越しで単独最下位に転落した。ただ、育成からはい上がり、開幕レギュラーまでのし上がってきた男が見せた鉄人級の闘魂が、チーム全体に何かを訴えかけたことは確か。逆境で耐え、試練に立ち向かう姿勢が見る者の心を揺さぶる。口元をフェースカバーで覆った二俣の鋭いまなざしが、それを教えてくれた。