【MLBポストシーズン2017】ディビジョンシリーズ展望@ア・リーグ編 2017年のポストシーズンがついに開幕。ア・…
【MLBポストシーズン2017】ディビジョンシリーズ展望@ア・リーグ編
2017年のポストシーズンがついに開幕。ア・リーグのディビジョンシリーズは東地区1位のボストン・レッドソックス(93勝69敗・勝率.574)vs.西地区1位のヒューストン・アストロズ(101勝61敗:勝率.623)、もうひとつは中地区1位のクリーブランド・インディアンス(102勝60敗・勝率.630)vs.ワイルドカードゲームを制した東地区2位のニューヨーク・ヤンキース(91勝71敗・勝率.562)というカードになりました。
※カッコ内はレギュラーシーズン成績。

田中将大にとって初めてのディビジョンシリーズとなる
まず、「レッドソックスvs.アストロズ」のカードでは、第1戦からメジャー屈指のエース対決が見られそうです。レッドソックスの先発は最強左腕のクリス・セール(17勝8敗・防御率2.90)、そして対するアストロズの先発は元投手3冠のジャスティン・バーランダー(15勝8敗・防御率3.36)。どちらも負けられないチームの精神的支柱だけに、この結果がシリーズの行方を左右するかもしれません。
レッドソックスの武器は、先発・プルペンともに分厚い戦力を誇る自慢のピッチャー陣でしょう。先発ではエースのセールが勝ち星(リーグ2位)、防御率(2位)、奪三振(308個/メジャー1位)で好成績を残し、今季も絶好調。第2戦以降もセールと同じ勝ち星を挙げたドリュー・ポメランツ(17勝6敗・防御率3.32)、昨年サイ・ヤング賞に輝いたリック・ポーセロ(11勝17敗・防御率4.65)が控えています。
そしてブルペンには、7年連続30セーブ以上を挙げた剛腕クローザーのクレイグ・キンブレル(5勝0敗35セーブ・防御率1.43)が君臨。今季126奪三振は救援投手のなかでメジャー最多でした。さらに注目は、本来なら先発の一角を担うはずのデビッド・プライス(6勝3敗・防御率3.38)の存在です。9月14日に故障者リストから復帰後、リリーフとして5試合に登板し、合計8イニング3分の2を投げて3安打無失点13奪三振をマーク。見事なカムバックを果たし、プレーオフではレッドソックスのブルペンを支えてくれます。
プライスは2014年にトロント・ブルージェイズ、2015年にデトロイト・タイガース、そして2016年と2017年はレッドソックスと、チームを移りながらも4年続けて地区優勝を経験。過去8年で7回もポストシーズンに出場しています。経験豊富なプライスの存在はチームに安心感を与えてくれるでしょう。
ただ、アストロズの強力打線が相手となると、人材が豊富なレッドソックスでも投手戦に持ち込むことは簡単ではないと思います。今季のアストロズはシーズン序盤、117勝ペースという驚異的な勝率で勝ち星を積み重ねました。後半に入って少し失速したものの、最終的には球団史上2度目となる100勝の大台突破を達成。16年ぶり7度目、2013年のア・リーグ移動後では初めての地区優勝を果たしました。
その快進撃を支えたのが、今季メジャー最強と評される強力打線です。打率(.282)・得点(896)・二塁打(346)・OPS(出塁率+長打率/.823)……どれもメジャー1位を記録しました。そしてもっとも驚くべき数字は、メジャー2位の238本塁打だったのに対し、三振数がメジャー最少の1087個だったということ。ホームランの多いチームは三振も多いのですが、アストロズはこの通例に当てはまりません。
全員がレベルの高いバッティング技術を誇るアストロズ打撃陣のなかで、そのスタイルをもっとも象徴しているのがホセ・アルトゥーベ(打率.346・24本塁打・81打点)でしょう。今季は過去4年間で3度目の首位打者を獲得し、4年連続でシーズン200安打も達成しました。
さらにアルトゥーベの成績で特筆したいのは、ゲーム終盤の7回以降や、ツーアウトという状況での打率が際立っている点です。7回以降は打率.361、ツーアウトでは打率.342。今シリーズでもアルトゥーベの存在がレッドソックスにとって脅威となるのは間違いありません。
レッドソックスがアストロズ相手に打ち勝つのは難しいので、投手陣がどれだけ踏ん張れるかがカギとなるでしょう。レッドソックスにとっての強みは、接戦に強い点です。今季は3点差以上の逆転勝ちが14試合、そして延長戦では15勝3敗という高い勝率を残しています。アストロズが打線爆発で大量得点を奪うか、それともレッドソックスが自慢の投手陣で接戦に持ち込むか、実に楽しみなカードです。
ディビジョンシリーズのもうひとつのカード、「インディアンスvs.ヤンキース」も打撃戦となるか投手戦に持ち込むかによって、勝負の流れが大きく変わりそうな予感がします。
インディアンスは今季前半、なかなか中地区の優勝争いで混戦から抜け出せずに苦しみました。しかし夏場以降にア・リーグ新記録となる22連勝を達成。レギュラーシーズンの最後を33勝4敗と独走し、球団史上2位の102勝をマークして2年連続9度目の地区優勝を果たしました。
その強さを支えているのは、強力な先発投手陣です。エースのコーリー・クルーバー(18勝4敗・防御率2.25・265奪三振)、2番手のカルロス・カラスコ(18勝6敗・防御率3.29・226奪三振)、そして3番手のトレバー・バウアー(17勝9敗・防御率4.19・196奪三振)。メジャーリーグ史上初めて「17勝・190奪三振」以上の先発トリオが誕生しました。
また、ブルペンも昨季同様に磐石で、メジャー唯一の防御率2点台(2.89)をマークしています。アンドリュー・ミラー(4勝3敗2セーブ・防御率1.44)がリリーフ陣を牽引し、リードを築けば最後はクローザーのコディ・アレン(3勝7敗30セーブ・防御率2.94)がゲームを締めくくってくれるでしょう。
もちろん22連勝を達成しただけあって、インディアンスは打線も魅力的。今シリーズで注目してほしいのは、ふたりの若きバッターです。まずひとりは、25歳のホセ・ラミレス(打率.318・29本塁打・83打点)。今季はメジャー1位タイの91長打をマークするなど、今年のMVP最有力候補と言われています。日本ではあまり話題になっていない選手ですが、ぜひとも覚えておくべき逸材です。
そしてもうひとりは、23歳のフランシスコ・リンドーア(打率.273・33本塁打・89打点)。彼も81長打を記録しており、「80長打以上コンビ」の誕生は球団史上4組目です。インディアンスは投打ともにバランスが非常に取れているので、対戦するヤンキースは彼らを攻略するのに苦労すると思います。
そのヤンキースは、ワイルドカードゲームでミネソタ・ツインズ(85勝77敗・勝率.525)を8-4で下してディビジョンシリーズに駒を進めました。リーグ最高勝率のインディアンスに勝つためには、ヤンキース伝統のパワーあふれる打撃力で対抗するしかありません。
今季メジャー1位に輝いた241本塁打は、ヤンキースの長い歴史のなかでも4番目に多い数でした。それを牽引したのは、もちろんアーロン・ジャッジ(打率.284・52本塁打・114打点)です。ルーキー史上最多のホームランを放って初のタイトルを獲得。さらに得点(128)やフォアボール(127)もア・リーグ1位でした。
ジャッジの記録で特に面白いのが、メジャー最多の208個もの三振を喫しながら、出塁率が.422もあるという点です。どんなに三振が多くても出塁しているので、最強の2番バッターと言えるでしょう。
また、ジャッジの後ろを打つ24歳のゲイリー・サンチェス(打率.278・33本塁打・90打点)も絶好調です。25歳のジャッジとふたりで合計85本塁打。これは25歳以下のコンビでメジャー史上もっとも多いホームラン数でした。この若手スターコンビがインディアンスの強力先発陣にどう挑むのか注目です。
ヤンキースが勝つためには、ゲーム序盤で先発陣が失点を抑え、リードを築いたあとは好調のリリーフ陣に託して逃げ切るパターンがベストでしょう。そのために大事なのは、やはりヤンキース先発陣の奮闘です。
今季はメジャー3年目のルイス・セベリーノ(14勝6敗・防御率2.98)が台頭し、エース的な存在になってきました。また、37歳のCC・サバシア(14勝5敗・防御率3.69)もシーズン終盤に復調して4年ぶりのふたケタ勝利。ただ、7月にトレードで獲得したソニー・グレイ(10勝12敗・防御率3.55)の調子が移籍後はイマイチなので、本来のピッチングを取り戻せるかどうか。
となると、やはり気になるのは田中将大投手(13勝12敗・防御率4.74)の調子です。浮き沈みの激しいレギュラーシーズンでしたが、直近の試合では7イニングを投げて3安打・無失点。自己最多の15奪三振で最高のピッチングを披露しました。その試合のように変化球のスプリットが低目に決まれば、今年のポストシーズンでも大いに期待が持てます。
田中投手にとってポストシーズンは2回目。2015年はワイルドカードゲームで先発登板し、アストロズ相手に5イニングを投げて4安打・2本塁打・2失点を喫し、負け投手となってしまいました。初のディビジョンシリーズでは、ぜひともリベンジを果たしたいところでしょう。
ただ、田中投手はホームの防御率3.22に対してロードの防御率6.48と、アウェーゲームで好結果を残せていません。今シリーズは敵地クリーブランドで投げる予定なので、その点はちょっと気になるところです(コラム掲載後、田中投手がヤンキースタジアムで行なわれる第3戦で先発することが発表された)。
また、田中投手にはキャッチャーとの相性の問題もあります。正捕手サンチェスとのコンビでは防御率5.34に対し、控え捕手オースティン・ロマイン(打率.218・2本塁打・21打点)では防御率3.15。相性はロマインのほうが圧倒的にいいのですが、チームとしてはサンチェスを打線から外すのは非常に難しい判断となります。サンチェスをDHで起用する案もありますが、ジョー・ジラルディ監督がどう決断するのか。そのあたりが田中投手の登板する試合でネックとなるでしょう。
はたしてリーグチャンピオンシップシシリーズに勝ち上がるのは、どの2チームか。短期決戦は勢いが大事だと思いますので、どちらが先に勝機を掴むのか目が離せません。