打っては11球粘って四球で出塁し、守っては勝利を引き寄せる美技 新井貴浩監督就任3年目の広島で“大ブレーク”候補が頭をもたげた。育成出身でプロ5年目の二俣翔一内野手だ。本拠地マツダスタジアムで行われた阪神との今季開幕3連戦の全試合に「1番・…

打っては11球粘って四球で出塁し、守っては勝利を引き寄せる美技

 新井貴浩監督就任3年目の広島で“大ブレーク”候補が頭をもたげた。育成出身でプロ5年目の二俣翔一内野手だ。本拠地マツダスタジアムで行われた阪神との今季開幕3連戦の全試合に「1番・右翼」でスタメン出場。29日の2戦目に3安打でプロ初の猛打賞を獲得すると、30日の3戦目にもチームに今季初白星をもたらす重要な働きを見せた。

 まだ22歳だが、30日の3戦目の働きには、いぶし銀の渋みがあった。両チーム無得点で迎えた4回、無死一塁で打席に立った二俣は、阪神先発・門別啓人投手に対しカウント3-1から6球連続ファウルで粘り、11球目を選んで四球で出塁。こうした粘りは、好投の門別の球数を増やし、ボディーブローのようにダメージを与えた。

 2-0とリードして迎えた8回の守備では、無死一、三塁の大ピンチに、相手の木浪聖也内野手が放ったヒット性の当たりに対し、5回から中堅に守備位置を替えていた二俣が猛然と前進し、地面スレスレでスライディングキャッチ。三塁走者の生還さえ許さなかった。広島は結局2-0で零封勝ちを収めたが、この打球がタイムリーとなり、阪神の攻撃がつながっていたら、勝敗もどうなっていたかわからない。

 1年前から、この二俣を“激推し”していたのが、現役時代に日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏だ。「昨年の春、たまたまDeNAとの練習試合を見ていた時に、途中から出てきた二俣が最初の打席でいきなりツーベースを打ちました。スイングが鋭く、走っていくスピードも素晴らしかった。さらに、その試合ではサードを守っていたのですが、三塁線際の痛烈なゴロを捕り、ひょいと投げた一塁への送球が、ものすごい勢いの球でした。もう惚れ込みましたよ」と熱弁。「聞けば、前年(2023年)にはウエスタン・リーグでシーズン最多安打(94安打)を放っているという。しかも育成出身だというから、なおさら応援したくなるじゃないですか」とも付け加える。

2020年育成ドラフトで入団し、2年目のオフに支配下登録

 二俣は2020年育成ドラフト1位で捕手として、静岡・磐田東高から入団した。2年目の2022年には内野にコンバートされ、同年オフに支配下登録を勝ち取る。1軍デビューした昨季は、代打、代走、守備固めを中心に80試合に出場。打率.196(107打数21安打)、1本塁打7打点1盗塁の数字を残し、レギュラー獲得へ向けて足がかりをつくった。

 広島の若手野手では、昨年3月の「日本vs欧州代表」で侍ジャパンの一員に抜擢された田村俊介外野手、俊足の久保修外野手らが注目されているが、ここにきて背番号「99」の二俣がピカイチの存在感を示している。

 野口氏は二俣について「しっかりバットを振れる選手ですが、かといって、無茶振りをするわけではない。ヤクルトの山田哲人(内野手)のような選手を目指していくべきタイプ」としつつ、「彼の一番の持ち味は、どこでも守れることです。外野の3ポジションはもちろん、2023年にはウエスタン・リーグで専らショートを守っていたそうなので、内野も全て守れるはず。そしてプロ入り当時は捕手。投手以外全ポジションを守れるわけですが、なんなら、あの強肩ならピッチャーもできないわけではないと思います」と豊かな将来像を思い描く。

 さらに開幕3連戦での活躍をうけて「使い勝手のいい選手がこれだけ打ってくれたら、ベンチは大助かりでしょう。今年大ブレークを果たしてほしい選手の1人です」とエールを送った。

 広島は昨季、8月まで優勝争いを演じながら、疲れが見えた9月以降の大失速で結局4位に終わった。こんな活きのいい若手の台頭が、何よりも求められている。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)