■プレーオフ前に衝撃の指揮官交代 2月のマーケットからまもなく、今度はヘッドコーチ人事で大きな衝撃が走った。メンフィス・グリズ…

■プレーオフ前に衝撃の指揮官交代


 2月のマーケットからまもなく、今度はヘッドコーチ人事で大きな衝撃が走った。メンフィス・グリズリーズは、2019年からチームを指揮したテイラー・ジェンキンスを突如として解任したのだ。

 グリズリーズは現在、ウェスタン・カンファレンスでプレーオフ圏内となる5位を死守。ジェンキンスは紛れもなく、若きチームの成長を支えた張本人であり、ポストシーズン直前の電撃解任には多くの人が目を疑ったことだろう。

 ジェンキンスは今シーズン勝率.595を維持し、グリズリーズ通算でも.538と勝ち越し。ジャ・モラントがまだルーキーだった就任初年度と、ケガ人が続出した昨シーズンをサンプルから除外すれば、勝率は6割を超える。

 彼の解任について疑問が残るバスケットボールファンのために、『The Athletic』は今回の騒動の舞台裏を報じている。

 はじめに、監督にとって最大の評価基準である成績だが、中身は先ほど挙げた勝率のデータほど、充実したものではなかったのかもしれない。球団は、ヤングコアの成長と共に、史上初のファイナル進出とリング獲得を命題に掲げている。レギュラーシーズンの成績は、2021-22シーズンと2022-23シーズンがカンファレンス2位となったものの、昨年は負傷者続出で大きく負け越し、今シーズンもトップ3を逃している。また、ジェンキンス政権ではプレーオフの成績が通算9勝14敗と振るわず、今シーズンも勝率5割以上の上位チームに対しては11勝20敗と苦戦が続いていた。加えて、直近の22試合も13敗と負けが込み、プレーオフに期待が持てる内容かと問われると、首を縦に振りづらい状況だった。

 また、とある関係者によると、ジェンキンスの解任は時間の問題だったという。主力を欠いての戦いを余儀なくされた昨シーズン、バスケットボール運営部門副代表のザック・クライマンGMは、ジェンキンスのアシスタントコーチ5人を一方的に解任するという荒療治を敢行した。関係者によると、ジェンキンスは別れ際に涙を流したといい、そのエピソードからはスタッフへの信頼関係と納得のいかない様子が伺える。

■「守る気あるのか」口論も


 このスタッフ人事にまつわる出来事以降、チーム内には不穏な空気が漂い始めたそう。ジェンキンスの代任として就任したトーマス・イサロ暫定HCは、オフシーズンのコーチングスタッフ入れ替えにより加入した人物だ。イサロ暫定HCは昨シーズン、フランスのパリ・バスケットを率いてリーダーズカップとユーロカップの二冠を達成し、数億円規模の契約でグリズリーズに加入。同暫定HCは、スクリーンを使用せずに選手の連動性を重視するハイペースなオフェンスを導入したことで高く評価されており、ジェンキンスの解任とイサロ暫定HCの昇格は、チーム戦術の明確な変更を意味している。また、今回の人事決定では、ジェンキンスと共に2人のアシスタントコーチが解任されており、内部の意見対立が浮き彫りとなったと見て取れる。

 こうした上層部とコーチングスタッフのムードは、選手たちにも影響を及ぼしているのかもしれない。『The Athletic』はグリズリーズのディフェンスに陰りが見え始め、過去22試合の守備効率はリーグ19位にまで失速。また、ユタ・ジャズ戦では、デズモンド・ベインとサンティ・アルダマがベンチで口論し、ベインは「守る気あるのか!ハードにプレーしろ!」と声を荒げたという。

 さらに今後懸念すべきポイントとして、モラントが直近のグリズリーズのオフェンスシステムを好んでいないことが挙げられる。モラントはスクリーンを活用したピック&ロールを得意としており、グリズリーズの新システムについて「自分の強みを殺している」と不満をあらわにしたという。現オフェンスを構築したとされるノア・ラロッシュもジェンキンスと共にチームを去ったが、イサロ暫定HCとどのような信頼関係を築けるかは不透明だ。

 一方で、本件の引き金を引いたクライマンGMは、コーチングやロスターをはじめとする全責任は自分にあるとし、「選手たちに相談せず、私自身が決定したことです。何かから逃れようとしているわけではなく、このチームにとって最善の決断を下しました」と力強いコメントを残している。

 果たして、クライマンGMの意思決定はグリズリーズの未来をどう左右するのだろうか。

文=Meiji