「広島2-0阪神」(30日、マツダスタジアム) ドラフト1位の金看板にたがわぬ投げっぷりだ。阪神・伊原陵人投手(24)=NTT西日本=が2点ビハインドの六回からプロ初登板し、2回を1安打無失点に抑える100点満点のデビューを飾った。左翼・…

 「広島2-0阪神」(30日、マツダスタジアム)

 ドラフト1位の金看板にたがわぬ投げっぷりだ。阪神・伊原陵人投手(24)=NTT西日本=が2点ビハインドの六回からプロ初登板し、2回を1安打無失点に抑える100点満点のデビューを飾った。左翼・前川の拙守(記録は安打)で得点圏に走者を背負ったが、全く動じるそぶりは見せず。開幕3連勝こそ逃したが、左腕の投球が今後に期待を抱かせた。

 ルーキーとは思えない落ち着きぶり。初マウンドも、イニングまたぎも、走者を出しても一切動じない。伊原が100点満点のデビューを飾った。「素直にホッとしている部分もあります」。2回1安打無失点。チームの今季初黒星の悔しさを薄める快投だった。

 出番は2点ビハインドの六回。四、五回に1点ずつを取られ、完全に広島ペースになっていた。そんな空気感も即戦力左腕には関係なし。「1戦目からいつでもいける準備はしていました」。開幕3戦目。「緊張感はあった」と言うが、自分のやることに集中した。

 菊池、石原をゴロで打ち取り、簡単に2死。最後は投手の森を見逃し三振であっさりと三者凡退に仕留めた。大げさなガッツポーズもしない。「いつも通りいけたらいいのかなという気持ちで上がった」。何食わぬ顔でベンチへ向かい、戦況を見守った。

 七回もマウンドへ。2死から小園を平凡な飛球に抑えたが、風に流されて左翼の前川が捕れず。不運な二塁打でピンチを招いた。ガクッと来てもおかしくはない。でも、淡々としていた。「集中が切れることはなかったですし、今後も必要になる」。切り替えは一瞬。続くモンテロを空振り三振とし、役割は十分に果たした。

 先発か中継ぎか、シーズン開幕の間際まで分からなかった。それでも、言い訳は通用しない。「とにかく開幕に合わせないといけないと思っていた」。その場その場の状況に応じて、できるトレーニングを見つけた。使える道具がなくても、キャッチボールで工夫。「あえて強いボールを投げて、出力を上げたりとかしてましたね」。高校、大学、社会人と経験を重ねてきたからこそ、適応能力は高い。

 リリーフ起用した藤川監督は「シーズンは長いですから、しっかりといい結果でまた次を迎えると思います。彼がまずはきれいに立ち上がってくれたので、これでまたシーズンで戦っていけるなという感じがしますね」とプロとしての第一歩を評価した。

 伊原自身もこれがスタートラインだということは理解している。「良かった点もあったら、反省する点もある。次に生かすこともあるので」。この日は劣勢での登板だった。ただ、勝ちパターンでも、先発でも何でもこなせそう。惜敗の中、希望の光がともった。伊原の可能性は無限大だ。

 ◇伊原 陵人(いはら・たかと)2000年8月7日生まれ、24歳。奈良県橿原市出身。170センチ、77キロ。左投げ左打ち。投手。晩成小1年から野球を始め、八木中では中1の1年間は柔道部に入っていたが、その後は軟式野球部に所属。智弁学園高に進み、3年時にエースとしてセンバツに出場した。大商大では1年春からリーグ戦に登板。NTT西日本を経て、24年度ドラフトで阪神から1位指名。血液型はB。