第97回選抜高校野球大会決勝(30日、甲子園)●智弁和歌山4―11横浜(神奈川)○ 今大会、初めて追いかける展開になっても、冷静さを失わなかった。 1点を先行された直後の二回1死一、三塁。智弁和歌山の大谷魁亜(かいあ)は、ベンチの中谷…

第97回選抜高校野球大会決勝(30日、甲子園)
●智弁和歌山4―11横浜(神奈川)○
今大会、初めて追いかける展開になっても、冷静さを失わなかった。
1点を先行された直後の二回1死一、三塁。智弁和歌山の大谷魁亜(かいあ)は、ベンチの中谷仁監督とアイコンタクトを交わしてから打席に入った。
「セーフティースクイズのサインは予想通りだったので、準備はできていた」
2ボールからの3球目。横浜の先発・織田翔希の146キロの直球をきっちりと一塁手と投手の間に転がした。三塁走者は難なく生還し、すぐに同点とした。
決勝の前日、大会屈指の速球派右腕・織田対策としてバッティングマシンを160キロに設定し、バント練習に取り組んだ。
大谷は「速球から逃げずにバントする練習をしていたので、(決勝で)一発で決めることができた」と振り返った。
智弁和歌山といえば、2000年夏の甲子園で11本塁打を放って優勝するなど、「強打」の印象が強い。ただ、中谷監督は現在のチームを「攻撃のチームではないと思っている」と語る。
そのため、フリー打撃の時に1球でバントを成功させる練習を取り入れるなど、昨秋から小技や足を絡めて1点をもぎ取る野球に取り組んできた。
今大会、チームの本塁打は「0」ながら手堅く勝ち上がり、決勝でも四つの犠打を成功させて、粘り強く好機を作るなどした。
大谷は「ここまで来られたのは、自分たちが徹底してきたことの結果が出たから」とプライドをにじませながら、言葉を続けた。
「でも、(昨年)秋の近畿大会もセンバツも決勝で負けてしまったのは、何かが足りないということ」
手応えと宿題を得た春になった。【下河辺果歩】