◆プロボクシング ▽東洋太平洋スーパーフライ級(52・1キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇同級4位・横山葵海(判定)王者ジーメル・マグラモ●(29日、愛知県国際展示場) 東洋太平洋スーパーフライ級4位の横山葵海(ワタナベ)が、同級王者ジー…

◆プロボクシング ▽東洋太平洋スーパーフライ級(52・1キロ以下)タイトルマッチ12回戦 〇同級4位・横山葵海(判定)王者ジーメル・マグラモ●(29日、愛知県国際展示場)

 東洋太平洋スーパーフライ級4位の横山葵海(ワタナベ)が、同級王者ジーメル・マグラモ(フィリピン)を3―0の判定で下し、新王者に輝いた。デビュー3戦目での東洋太平洋王座獲得は、現WBA世界スーパーフェザー級4位の堤駿斗(志成)に並ぶ国内最速タイ記録となった。

 ジャッジ2者が117―111、1者が118―110と大差をつける完勝だった。勝利を告げられると、右腕を掲げて控えめに笑顔を見せ、リング上で「まだここは終わりじゃない。どんどん上を、世界を目指していく。これからも応援よろしくお願いします」と力強く宣言した。

 昨年7月のデビューからわずか8か月。デビュー3戦目で、34戦のキャリアを持つ王者を圧倒した。初回から鋭いジャブを突いてマグラモの機先を制し、距離を支配。パンチを上下に打ち分けながら、着実にポイントを重ねた。ポイントで大きくリードした11回には、ジャブからつないだ右ストレートがクリーンヒット。最終回も果敢にラッシュを仕掛けた。

 横山は「12ラウンド戦うことができてよかった。スパーリングの方がきつかったし、試合でも12ラウンドできたことは自信になった」と初の12ラウンドを振り返り、国内最速タイでの東洋太平洋王座獲得については「全然実感がわかない。自分なんかがベルトを取れるとんは思っていなかった。会長、ジムのみなさんに感謝です」とベルトをさすりながら語った。

 横山はアマチュアで22年全日本選手権バンタム級を制し、56戦44勝(12RSC)12敗のアマ戦績を引っさげ、昨春の拓大卒業後にプロ転向。昨年7月に東京・両国国技館での53キロ契約6回戦でワン・ハオ(中国)とプロデビュー戦を闘い、2回TKO勝ち。12月にのプロ2戦目では、スーパーフライ級8回戦で東洋太平洋同級5位だったデンマーク・ケビド(フィリピン)にダウンを奪われながらも3―0の8回判定で勝利した。

 所属ジムの渡辺均会長(75)は試合前、「東洋太平洋王者になれば当然、上(世界挑戦)の資格があるから、チャンスが来ればぜひ。やっぱり日本記録は狙ってます」と明言。元4階級制覇王者・田中恒成(畑中)の持つプロ5戦目での世界王座獲得、さらには元2階級制覇王者・京口紘人(ワタナベ)の持つデビューから1年3か月での世界王座獲得、という2つの日本男子最速記録の更新を目標として掲げていた。試合後、次戦での世界挑戦について「運もあるが、チャンスが来たらもちろんやらせます」と改めて話した。渡辺会長から「やるよな」と振られた横山は、「はい」と即答。会長は「ジムに横山をスカウトするときに、世界挑戦できなければ移籍していいよと約束していた。ホッとしています」と笑みをこぼした。

 拓大時代に介護福祉士の資格を取得。昨年6月から介護老人保健施設で働いている。仕事に行けるのは週2回ほどだが、収入よりも「笑顔をもらえて、頑張ろうと思える気持ちになることが一番ですかね」と横山。試合の日は施設で試合映像が流され、入居者が応援してくれる。ベルトを持って施設に“凱旋”することも、横山のモチベーションになっている。心優しき23歳の超新星は、さらなる偉業に挑み続ける。

 戦績は横山が3戦3勝(1KO)、マグラモが34戦30勝(23KO)5敗。