スペイン・マドリッドで開催されている「ムトゥア マドリッド・オープン」(ATP1000/5月1~8日/賞金総額571万9660ユーロ/クレーコート)は7日、男子シングルス準決勝が行われ、第2シードのアンディ・マレー(イギリス/2位)が、…

 スペイン・マドリッドで開催されている「ムトゥア マドリッド・オープン」(ATP1000/5月1~8日/賞金総額571万9660ユーロ/クレーコート)は7日、男子シングルス準決勝が行われ、第2シードのアンディ・マレー(イギリス/2位)が、第5シードのラファエル・ナダル(スペイン/5位)を7-5 6-4のストレートで下し、2年連続の決勝進出を決めた。マレーは昨年の決勝でも、ナダルを下して優勝していた。  マレーのクレーでのプレー向上は、もはや目新しいニュースではなくなった。その洗練された技術力をクレーで活かせるようになったマレーは、気負うことなしに、静かな自信をみなぎらせている。

 一方、果たしてナダルが、3、4年前のような破壊的強さを取り戻すか否かについては、おそらく、そのようなことはもはや起きないだろう、と思っている者のほうが多いように見える。ナダルが昨年の大不振から抜け出し、今、本来のレベルに戻りつつあるという点については、皆が同意しているところだ。

 ナダルのストロークはいいレベルを取り戻し、また、最後のポイントまで食いつき続ける、不屈の闘志も変わらない。しかし、年が移り変わっていく、というのもまた事実。ナダルは「今日、僕は“今の自分のベスト”を尽くせた」と言う。全力を尽くして、今できる最大限の力を振り絞り、一歩一歩進んでいくこと。それが、今のナダル自身が自分に要求していることだ。  このマレーに対する準決勝で、第1セット、ナダルは先にブレークを許して1-4とリードされたが、3-5から粘りに粘ってブレークバックに成功。以前のようにフォアハンドを炸裂させ、相手を圧倒していたわけではなかったが、すべてのボールに食らついて返し、要所で攻める、粘り強さのほうでむしろ感銘を誘った。  5-6からの自分のサービスでミスが出て、ナダルは結局、第1セットを5-7で落とすが、次のマレーのサービスゲームですかさず相手にプレッシャーをかけ、3度のブレークポイントを握った。そこを守りきったマレーもさすがだが、ナダルの闘魂も健在だった。  粘り、食い下がりながらも結局、5-7 4-6で敗れたあと、ナダルは残念そうな表情は見せていなかった。 「第1セットは、5-5に追いついたとはいえ、マレーのほうが上だった。でも第2セットでは違った」とナダルは試合後、振り返った。

 「僕はより多くの好機をつかみ、よりアグレッシブにプレーしようと努めていた。全体に見て、彼のほうが少し僕よりも上だった。それを認め、彼を称えるべきだろう。でも僕は、またもポジティブな週を送れた。マスターズ1000の準決勝に進出できたんだ。毎週、一貫していい成績を挙げることができている。精神的にも問題ない。勝つことはできなかったが、僕は最後まで全力で戦い、解決策を探そうとし続けた」  第2セットのナダルは、相手のサービスのたびにブレークしようと努め、マレーにかなりのプレッシャーをかけることに成功していた。マレーもアグレッシブな姿勢を貫いたが、打っても返ってくるため、攻める側は多くのウィナーを打ち込み続けることを強いられ、必然的にミスをする確率も上がる。

 非常に難しいボールを返しながら、意外なところでミスをおかしたナダルは、第2セットでも結局、先にブレークを許してしまうのだが、3-5からファイトバックしてブレークバックに成功。その次のゲームで一連のミスをおかし、結局ふたたびブレークされたところが、今のナダルがまだ回復の過程にあることを示しているのだろう。しかし、ナダルはその事実を受け入れてもいる。  「僕は、ファイトバックすることができた。その上で、少しミスをおかしてしまったが、全体的な感覚はいい。ショットをもう少しハードに打つべきだった。第2セットでは、第1セットよりも、そうできていたが、さらに、相手をより痛めつけるよう打つ必要があった。でも、僕はポジティブな道の上にいる。戦っていて楽しい。今日マレーを倒すことは可能だったが、彼は重要なポイントでよりよいプレーをした。違いはそこだけだった」とナダルは言う。  ナダルは、結果はともあれ全力で戦っていることだけは自負している。激しさが足りなかったのでは、と言われると、彼はこう反論した。 「激しく戦っていただろう? 僕は試合を通して戦い続け、ベストを尽くした。すべてのポイントで、できる限り戦った。ここまでのところ、クレーシーズンの手応えはいい。ローマで、よりよい戦いができるよう、努めるだけだ」

 アンディ・マレー

 一方、ナダルをサポートする地元客の一方的な応援の中で、ナダルのチャレンジを退け、2年連続の決勝進出を果たしたマレーは、「クレーでラファを倒すというのは、常に大きなことだ」とコメント。リードしては追い上げられる中、落ち着いて対処したことについて、「うまく対処できたよ。重要なポイントで、タフであることができた」と満足感を口にした。

 「彼は最後のゲームでミスをして、少し助けてくれた。自分に関しては、少しミスをおかしはしたけれど、常に攻撃姿勢を保ち続けることができたと思う。そしてディフェンスしなければならないときにも、しっかりとできていた」  またマレーは、昨年の決勝と今回と、どちらがいい勝利か、と聞かれると「昨年のラファは、その前にあまりいいプレーをしていなかったが、今年はモンテカルロとバルセロナで優勝している。だから今年の勝利のほうが、昨年のそれよりも貴重だ。今日、ラファが彼のベストテニスを演じたとは言わないが、彼は昨年よりもいいプレーをしていたと思う」と返答。その上で、明日を見つめ、「今日の勝利を楽しんでいるが、言うまでもなくタイトルを防衛するため、明日に向けしっかりと準備をしたい」と締めくくった。

(テニスマガジン/ライター◎木村かや子、構成◎編集部)