パドレイグ・ハリントン(アイルランド)は37歳にして「全米プロゴルフ選手権」と「全英オープン」を制した2008年、PGAツアーのドライビングディスタンスは296.3ydでランキング32位だった。53歳になった2024年はシニアのチャンピオ…

パドレイグ・ハリントンがスイングについて語った(Jonathan Bachman/Getty Images)

パドレイグ・ハリントン(アイルランド)は37歳にして「全米プロゴルフ選手権」と「全英オープン」を制した2008年、PGAツアーのドライビングディスタンスは296.3ydでランキング32位だった。

53歳になった2024年はシニアのチャンピオンズツアーで平均308.2ydをマーク。2025年のボール初速は現時点で最高時速189マイルだという。ちなみに現在、PGAツアーの平均ボール初速は時速173.88マイルで、同スタッツの首位に立つアルドリッチ・ポットギーターは190.49マイルだ。

ハリントンはドライバーの飛距離が年齢とともに落ちるどころか、ボール初速の点で数値を上げている。

これは偶然ではない。より速いスイングスピードを懸命に求め、アイルランドの自宅でトレーニングに励んでいるほか、遠征には日々のスイング練習で使うスピードトレーニング用の器具を携帯している。また、練習レンジではボールの行方をさして気にせず、単純にクラブをとてつもなく速く振りちぎることに取り組んでいる。精度やスイングプレーンではなく、スピードを磨いているのである。

タイトリスト TSR3 ドライバーを愛用(協力/GolfWRX, PGATOUR.com)

ハリントンはGolfWRX.comが今週の「テキサスチルドレンズヒューストン」水曜日に行った取材で、「だから、このスピードスティックを使うときは、テクニックは関係ないんだ。これはスクワットジャンプをするのと同じことなんだ。ジャンプを測定するのと同じだね。そういうフィードバックを与えてくれる。自宅では、いくつか別の物を使ってスピードアップするための一連のトレーニングを行なっているんだ。速くスイングするのはいつだって良いことだから。よくある話の一つさ」と述べている。

飛距離の話題は、今週初めにメモリアルパークGCにて、世界のトップに君臨する2人により既に議論されていた。雨で濡れたコンディションが見込まれることから、世界ナンバーワンのスコッティ・シェフラーと、フェデックスカップランクで首位に立つロリー・マキロイ(北アイルランド)は、ただでさえ距離の長い、ほぼ通年一般公開されている市営ゴルフコースでは、ティショットでさらに飛距離を伸ばす必要があることを示唆した。このため、ハリントンは彼のスピードアップ練習はアマチュアにも推奨できると確信している。

「何かを速く振るのは悪いことじゃない。常にドライバーを速く振らなければならない、ということでもないけどね。ただ、僕はアマチュアの人たちに『最低でも週に20球はとても速くスイングすべきだ』と伝えているよ。できる限り強振して、その上で自分自身の範囲内でプレーするんだ。ゴルフコースでできる限り強く振る必要はないけれど、練習ではその感触を得るために時折やるべきだね」とハリントンは加えた。

フェース面が割れたときに備えてドライバーは2本持ち込む(協力/GolfWRX, PGATOUR.com)

しかし、スピード爆上げ練習には欠点もある。ドライバーのフェースにひびが入ってしまうのだ。

「僕は常に2本のドライバーを持ち歩いている。トーナメントでは使わないけれど、練習ではフェースにひびを入れたくないので、バックアップのドライバーを使っている。だから、2本必要なんだ。スピード練習をすると、ミスヒットしがちになる。クラブのせいで割れてしまうというより、かなり強振して何度もミスヒットするからドライバーを割ってしまうんだ」

ヒューストンでの水曜に、ハリントンは平均値に関する話題にも触れた。平均ボール初速や平均飛距離といったスタッツは、選手、コーチ、ルールメーカー、クラブ設計者、メディア、さらにはここPGATOUR.COMのイクイップメントレポートにおいてもよく議論の対象となっている。しかし、ハリントンは極端なことについて論じるのを好む。この話題は我々がハリントンに、今年これまでのドライバーによる最高ボール初速について尋ねた折に持ち上がった。

シャフトは藤倉コンポジットのベンタスブラック(協力/GolfWRX, PGATOUR.com)

「今年は時速189マイルで、まだ190には達していない。今週(ヒューストン)の出場選手で190台を出せるのは5%くらいだと思うね。皆がスピードについて話をしていると、僕は笑ってしまうんだ。皆、平均値について話し始めるからね。彼らはエンジニアや、そういう感じの人たちで、僕は“一体いつからエンジニアは平均を使うようになったんだ?”と思ってしまう。建物に平均を使うと、その建物は倒壊してしまうじゃないか。極値を使うものなんだよ」と述べた。

重要なのは最高値であり、プレーヤーが自身のスイングから得られる最高の結果なのである。

「ボール初速について語るとき、注目すべきは、適したホールで肩を開いて打った際にどれだけの速度を出せるかだ。今週は7人の選手が時速190マイルの壁を突破すると思うよ」

ハリントンの説によると、スピードアップの最良の方法は、自身の最高ボール初速を押し上げ続けた上で、コースではより頻繁にフェースの芯を捉えるよう「自分の範囲内でプレーする」こととなる。平均値は自然の成り行きに任せれば良いのである。

冗談混じりに「まだ、200でプレーする人は見たことないね」と言いつつ、「練習レンジでは何人か見たことあるけれど、コースではまだ誰も見たことがない。でも、そのうち現れるだろうね。僕らは、そのスピードが出せて、その上でしっかりとゴルフのプレーできる人を待っているんだ。それは危険な組み合わせになるだろうね」と続けた。

ハリントンは2024年のチャンピオンズツアーで、ティショットを平均308.2yd飛ばし、2位に6.9yd差をつけてトップに君臨した。彼が平均を好まないにせよ、今年の平均飛距離と平均ボール初速がさらに上がったとしても驚くべきではないだろう。結局のところ、彼は年齢とともに速くなっていくだけなのである。

(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)