忙しい保護者必見…プロ栄養士が教える"時短の工夫"で野球少年の成長をサポート 野球に励む子どもたちにとって、成長期の栄養管理が重要であることは親であれば重々承知だろう。とはいえ、仕事や家事に加えて、練習の付き添いや送迎も…

忙しい保護者必見…プロ栄養士が教える"時短の工夫"で野球少年の成長をサポート

 野球に励む子どもたちにとって、成長期の栄養管理が重要であることは親であれば重々承知だろう。とはいえ、仕事や家事に加えて、練習の付き添いや送迎もある中で、栄養バランスの取れた食事を毎日用意するのは大変すぎる……。そんな忙しい保護者の皆さんにこそ、「おにぎりは最強です」と提案するのが管理栄養士の渡邊元美さん。米には脂質が少なく消化が良いうえ、おにぎりにすれば、食べる量の調整がしやすく、短時間で作れるからだ。3食の合間に摂れる補食にも最適な、おにぎりの「お勧めレシピ」を紹介してもらった。

 渡邊さんは、現在プロで活躍する息子・佳明選手(楽天)の子育てを通じ、食事の大切さを実感してきた。幼少時は体が小さくて食が細く、試行錯誤を重ねてきたが、今振り返ってみると「正しかったこと、間違ってきたことなど、後になって気づくことも多かったですね」と振り返る。

 その後、横浜高校野球部の寮母として20年間にわたり選手たちの食事を支え、現在は豊富な経験を生かし、スポーツ食育や成長期の栄養についての講演、調理実習を精力的に実施。「少食の子を持つ親御さんや、忙しくて手が回らない方々に、ちょっとしたヒントを提供できれば」と語る。

【ツナマヨおにぎりの進化系】

 まずは定番の「ツナマヨおにぎり」。ちょっとした工夫で栄養価が大幅アップするといい、渡邊さんの秘訣は、とろろ昆布とかつお節を加えること。「おにぎりをおいしくいただくには具材の水分がポイント。とろろ昆布やかつお節は乾物なので、余分な水分を吸ってご飯が水っぽくなるのを防げます。アミノ酸も豊富でうまみが増し、栄養価も上がります」。ゴマをふって海苔を巻けば、ミネラルも摂取できる。

「ツナ缶は使いやすい具材で、買い置きしておけば、困ったときにすぐ使えます。マヨネーズで和えると食材の水分が出やすく、味が薄くなりがちですが、乾物を使うことで、旨味のある水分も吸ってくれて、ギュッと味が締まります。ツナマヨおにぎりが好きな子は多いので、ぜひ試してみてください」

炊き込みご飯&作り置きの時短テクニック

【炊き込みご飯で作る味付けおにぎり】

「炊飯器を使って、いろいろな味付けご飯を炊いておにぎりにするのもお勧めです」と渡邊さん。玉ねぎやにんじんをみじん切りにし、中華だしで味付けして炊き込めば、チャーハン風おにぎりが作れる。干しエビや、ハム・ベーコンなどの家庭にあるものを使ってもOK。使う油はほんの少量。フライパンで炒めるよりもかなりの脂質を抑えることができる。「葉物などの水分の多い野菜以外なら、冷蔵庫の残り物でも十分活用できます」。

 カレー粉とソーセージを使えばピラフ風にもアレンジが可能だ。「市販の炒飯やピラフはどうしても脂質が多くなりがちですが、炊飯器で作れば使う油は少量で、かつ野菜もたくさん入れられて、多くの栄養素を摂れます」。味付けご飯は好きな子も多いので、試してほしい。

【包む面倒を省いた「いなり風」】

 甘辛い味付けで子どもたちに人気の「おいなりさん」だが、「油揚げを開いて酢飯を詰めるのも、ひと手間かかりますよね」と渡邊さん。そこで考案したのが、油揚げ、ひじき、にんじん、椎茸を甘辛く煮つけて酢飯に混ぜ込む「包まないおいなりさん風」アレンジだ。

「いろいろな具を入れることで、たくさんの栄養素が摂取できるのが良い点です。酢飯は食も進みます」。時間がある時に油揚げと野菜類を、家庭の好みに合わせた甘辛味に炊いておけば、夕飯にちらし寿司としても展開できそうだ。

【作り置きで役立つ「万能そぼろ」】

 渡邊さんは、時短テクニックとして「焼き肉そぼろ」や「親子丼そぼろ」の作り置きも提案する。「ボリュームを出したいなら、そぼろが便利。作り置きしておけば、小腹が空いた時にご飯の上に載せるだけで1食になります」。

「焼き肉そぼろ」は、合挽き肉に、細かく刻んだネギ、にんじん、ピーマン、椎茸などの野菜とニンニクを加えて炒め、焼肉のタレで味付けする。タレをしっかりなじませ、水分がなくなるまで炒めきるのがポイント。「ニンニクを入れると食欲が増し、焼肉のタレを使うことで、子どもも大好きな味付けになります」。野菜を細かく刻むことで、野菜が苦手な子どもでも気にせず食べられる。

「親子丼そぼろ」は、鶏ひき肉とみじん切りにした玉ねぎやにんじん、油揚げを、麺つゆ、みりんで割り下のイメージで味付けする。かつお節を一緒に入れるのがコツで、「おぼろ昆布と同様に余分な水分を吸ってくれるので、べちゃっとならずにおいしくいただけます」。実際にこのそぼろを使って握ると、“親子丼”の味がするおにぎりになるから驚きだ。

炊いた飯100グラムに塩1グラムが目安…握る前に粗熱を取るのも忘れずに

 おにぎりと言えば昆布、梅干し、鮭といった定番の具材が思い浮かぶが、実はさまざまなアレンジができる。100円ショップで売っている型を活用すれば作業時間を短縮でき、大量に作る際には便利。渡邊さんは、おにぎりの型の他にも、俵型や握り寿司の型なども活用しているそうだ。

 渡邊さんは「炊いたご飯すべてをおにぎりにする場合は、最初に塩を加えてご飯を炊いておく方法もお勧め。その場合は米100グラムに対し塩1グラムが目安です」とアドバイスする。塩加減が決まらずに後から追加を繰り返して、ご飯に粘りが出てしまうのも防げる。夏場は必ず、握る前にご飯の粗熱を取ることも大切だ。

 忙しい毎日でも、ちょっとした工夫で栄養満点のおにぎりが作れる。基本さえ押さえれば、具材をアレンジする楽しみも広がるはずだ。子どもたちの未来を支える栄養たっぷりの手作りが、きっと大きな力となる。明日からでも、ぜひ試してみてはどうだろうか。(大橋礼 / Rei Ohashi)