■富士高主将で大役 2000年7月。マイクの前に立った富士高・渡辺勇介主将は、草薙球場に力強い言葉を響かせた。「高校野球にあこがれ、甲子園にあこがれ、114校の仲間とここに立っている」―。高校野球県大会の開会式で選手宣誓の大役を務めた。 当…
■富士高主将で大役
2000年7月。マイクの前に立った富士高・渡辺勇介主将は、草薙球場に力強い言葉を響かせた。「高校野球にあこがれ、甲子園にあこがれ、114校の仲間とここに立っている」―。高校野球県大会の開会式で選手宣誓の大役を務めた。
当時のしずおか報知の記事にはこうあった。「本番ではアドリブで言葉の順序を少し入れ替えた。『ナインを驚かそうと思って』。緊張した表情は全く見せなかった」。そんな「5番・捕手」の球児は今、マイクを手にコートに立っている。「静岡でいろんなスポーツの仕事をやっていきたいんですよ」と熱く語った。
明治学院大の在学中、スポーツマネジメントに興味を持ち、専門学校で学んだ。卒業後、地元・富士市の広告会社で約7年勤務して独立。様々なイベントを仕掛けながら、そこでの司会ぶりが評価されて「キャッチャー渡辺」としてMC業も開始。2017年にDJケチャップと知り合うと、19年に2人でベルテックスのアリーナMCに就任した。
■「劣化版」から勉強
DJケチャップは、すでに野球の侍ジャパンのスタジアムDJなど様々な経験を積んでいた。言わば師匠だ。「最初はマネをしてましたが、(観衆に)熱量が伝わらずに『劣化版』と言われたことも…」と苦笑いで振り返った。バスケの知識は全くなかったが勉強を重ねた。今では、力強く観衆を“あおる”ケチャップとは違って、「ファンに寄り添い、初めて来た人にも分かりやすく伝えられればと思っています」という自身のスタイルを確立した。
昨年10月から始まった今季は、年間30試合のホームゲームを2人でほぼ半分ずつ振り分けている。「僕が担当した試合は開幕2連勝の後、8連敗があったり…。“勝たせられるMC”になりたいです!」。マイク一つで会場のムードを高める。その原点は25年前の夏にあった。(武田 泰淳)
◆ワタナベゴリラ(本名・渡辺勇介)1982年4月27日、富士市出身。42歳。富士高から明治学院大を経て、総合学園ヒューマンアカデミーを卒業。アリーナMCとしてはベルテックスの他、卓球Tリーグの男子・木下マイスター東京、女子・木下アビエル神奈川でも務めている。昨年の誕生日に「ワタナベユウスケ」から改名した。