選抜高校野球準々決勝(26日、甲子園)○健大高崎(群馬)9―1花巻東(岩手)● 満を持して登場した剛腕は観客席の視線を独…

【健大高崎-花巻東】力投する健大高崎の石垣=阪神甲子園球場で2025年3月26日、新宮巳美撮影

選抜高校野球準々決勝(26日、甲子園)

○健大高崎(群馬)9―1花巻東(岩手)●

 満を持して登場した剛腕は観客席の視線を独り占めにした。健大高崎は8点にリードを広げた八回、エース右腕の石垣元気を3番手としてマウンドへ送った。

 初球にいきなりセンバツ大会最速に並ぶ153キロをマークして1死とすると、そこから155キロの直球を4球連続で投じた。大会最速を更新するだけでなく、夏の甲子園を含めても最速タイ記録。27球中16球で150キロ超を記録し、最終回の最後の打者も155キロで空振り三振で締めた。石垣は「(球速が)出る感じがしていた。155キロはずっと狙っていた。まだまだいける」と爽やかな笑顔で振り返った。

 大会史に刻まれる快挙を後押しした存在がいる。石垣の今大会の登板は、この日を含めて計2試合、2回3分の1に限られる。大会直前に左脇腹を痛めた影響で先発を回避。他の投手たちがマウンドを守り、エースの温存を可能にしてきた。

 石垣に最高の形でバトンを渡したのは、傑出した才能の陰に隠れてきた投手たちだった。左腕・山田遼太、右腕・島田大翔のリレーで7回を4安打1失点にまとめた。チームには石垣だけでなく、今大会で18回余りを4失点の左腕・下重賢慎、トミー・ジョン手術から復帰を目指す前回大会の優勝投手の左腕・佐藤龍月(りゅうが)もいる。

 昨年は同級生の活躍をアルプス席で応援していた島田は当時、「自分は4番手、5番手格。正直に言うと、来年自分に投げる機会があるのか」と考えていたという。しかし、新チームとなった練習試合では山田と共に多くのチャンスを与えられ、指揮官の信頼を勝ち取った。それぞれが変化球の握りを教え合うなど全体を底上げしてきた。青柳博文監督も「山田と島田を投げさせることは最初から決めていた。自信を持って起用できた」と想定通りだった。

 連覇への鬼門と位置づけた準々決勝を豊富な投手陣を軸に乗り越えた。復調気配で「100%に近い状態」と語る剛腕のさらなる記録更新に注目が集まるが、連覇へ向けて視界を良好にする「投手王国」こそが最大の武器だろう。【長宗拓弥】