第97回選抜高等学校野球大会でベスト4に勝ち進んだ横浜。その中で投打を牽引する存在として活躍するのが、エースの奥村 頼人投手(3年)だ。準々決勝の西日本短大付戦では「三者連続三球三振」を達成するなど、11回を投げて、12奪三振、打者としても…

第97回選抜高等学校野球大会でベスト4に勝ち進んだ横浜。その中で投打を牽引する存在として活躍するのが、エースの奥村 頼人投手(3年)だ。準々決勝の西日本短大付戦では「三者連続三球三振」を達成するなど、11回を投げて、12奪三振、打者としても13打数5安打、打率.385と名門・横浜の4番打者に座り、投打ともに高い才能を発揮している。

 秋は直球の球速が常時135キロ〜140キロ程度だったのが、常時140キロ前半〜中盤までスピードアップ。長いイニングを投げる時は130キロ後半に抑えるが、絶対に抑えないといけない場面ではしっかりとギアを上げて、140キロ中盤の速球で圧倒する。動作に力みがなく、リリースまで脱力ができて、しっかりとリリース時に力を集中できる技術があるので、140キロ前後でも回転数が非常に高く、空振りを奪いやすい。

  直球と同じ腕の振りから投げ込むチェンジアップの落差は非常に強烈で、伸びのあるストレートがより活きる。120キロ前半のスライダー、100キロ台のカーブを投げ込んで、ストライク先行をして、追い込んだら伸びのあるストレート、もしくはチェンジアップで三振を狙うシンプルな攻めだが、間合いを変えたり、ストレートに強弱をつけたりと、投球の奥行きが感じられる。

 今大会、150キロを超える速球を投げる投手が目立っているが、奥村の完成度は近年、高卒プロ入りした投手と比べても高い。比較対象になるのが23年ドラフト1位となった前田 悠伍投手(大阪桐蔭-ソフトバンク)。前田のセンバツ時と比べても直球の勢いはある。23年センバツでの前田は常時130キロ後半・最速147キロだったが、奥村は今大会の最速は146キロ。当時の前田はフォームに苦しんで、なかなか出力が上がらない状態だったので、ギアを上げてしっかりと強いストレートで圧倒できる奥村のほうが評価は高い。

 土壇場の場面で力を発揮できるメンタルの強さ、フィールディング、牽制の鋭さも名門・横浜でしっかりと鍛えられており、あらゆるスキルが抜きん出ている。

 今年、高校生はプロ志望が少ないと聞く。奥村の場合、高卒プロに進んでも早めに台頭できそうな基礎体力、メンタルの強さ、総合力の高さを甲子園の舞台でも発揮した。まだまだすごくなりそうな逸材。夏には上位でしか取れないと思わせるほどの成長を見せてほしい。