高木豊インタビュー 後編セ・リーグ順位予想(前編:DeNAの戦力を分析 内・外野の競争は「レベルが高い」が度会隆輝の守備には苦言も>>) 今季も混戦が予想されるセ・リーグ。大型補強でリーグ連覇を狙う巨人をどのチームが止めるのか。かつて大洋(…
高木豊インタビュー 後編
セ・リーグ順位予想
(前編:DeNAの戦力を分析 内・外野の競争は「レベルが高い」が度会隆輝の守備には苦言も>>)
今季も混戦が予想されるセ・リーグ。大型補強でリーグ連覇を狙う巨人をどのチームが止めるのか。かつて大洋(現DeNA)の主力選手として活躍し、現在は野球解説者、YouTuberとしても活動する高木豊氏に、セ・リーグの順位予想を聞いた。
高木氏が加入の影響を語った巨人の甲斐拓也
photo by Sankei Visual
【1位予想:巨人】
――巨人を1位と予想した理由を聞かせてください。
高木豊(以下:高木) 補強がうまくいっています。特に甲斐拓也がチームにもたらす安定感は大きい。リードする姿とか、いろいろ見ていると説得力があるんです。サインを出しながらピッチャーと会話をしているんじゃないか、というくらい訴えかけるものがあるというか......経験のあるキャッチャーはやはり違うな、と思いました。オープン戦で、ライデル・マルティネスと初めてバッテリーを組んだ試合も、初めてには見えませんでした。
それと、よく「菅野智之が抜けた穴」と言われますが、戸郷翔征、山﨑伊織、井上温大、フォスター・グリフィン、田中将大がいて、そのほかの候補として横川凱、西舘勇陽、赤星優志、石川達也と頭数はいるので、トータルで穴を埋めていけると思います。
――新外国人のトレイ・キャベッジ選手の印象は?
高木 打つと思います。コンタクト力がありますし、逆方向にも長打が打てるのは魅力です。守備位置はファーストを予定していたのでしょうが、内野の守備はちょっと厳しそうですね。案の定、途中から外野での起用となりましたが、足がそこそこあるので外野のほうがいいと思います。
それと、中山礼都がバッティング面で少しつかんだかな、という感じがします。守備面はまだ物足りないのでレギュラーは難しいと思いますけど、少ないチャンスをものにしていってほしいです。坂本の調子が上がらなければ併用になるかもしれませんが、坂本も元気そうなのでどうなるか。いずれにせよ、競争力が高まることはチームにとってプラスです。
【2位予想:DeNA】
――昨季日本一を達成したDeNAは、2位予想となりました。
高木 打線に関しては心配ないですし、トレバー・バウアーが復帰して先発陣の層が厚くなりました。リリーフは多少の不安がありますが、今年は山﨑康晃の状態がよさそうですし、枚数は揃っています。心配なのは守備です。守備が破綻したら、3位の可能性もあるかなと。
――1位に予想した巨人と比べると、守備面で劣る?
高木 守備力の差は感じます。あとは"緊張感"です。キャンプを見ていても、巨人はすごくいい緊張感のなかでやっていました。それが勝ち負けにどれだけ影響するのかは、数字で見えるものではないんですが、長いシーズンを考えると緊張感の差はけっこう影響が出ると思うんです。
2023年に阪神がリーグ優勝と日本一を達成した時は、同年に岡田彰布監督が就任して、キャンプの時点ですごい緊張感があったんです。そんな緊張感が出せるのは、強いチームの条件のひとつだと思います。
【3位予想:広島】
――3年目の新井貴浩監督率いる広島は3位と予想されました。
高木 昨年は9月4日までは首位でしたよね。そこから9月は月間20敗(5勝)を喫して脱落してしまいましたが、打てないことが主な要因でした。昨年は開幕早々に新外国人選手が離脱して苦労しましたが、今年は新外国人選手のサンドロ・ファビアンとエレフリス・モンテロが悪くない。この2人が打つとすごく楽になるはずです。パワーがありますし変なクセもないので、けっこう適応していくんじゃないかと。
――ただ、攻守の要である坂倉将吾選手が、右手中指骨折で離脱しているのが痛いですね。
高木 確かにバッティング面は痛いですが、先ほど挙げた両外国人選手が仕事をしてくれれば穴は埋まると思うんです。守備面に関しては會澤翼のほうがまだまだ上ですしね。
野手だと二俣翔一もいいですね。オープン戦では継続して結果を出していますし、長打が打てて足もある。使ってみたい選手になってきましたよね。内外野を高いレベルで守れることもチームにとって大きいですし、開幕スタメンのチャンスは十分にあると思います。
それと、ピッチャーがいいです。九里亜蓮(現オリックス)が抜けた穴は常廣羽也斗や森翔平、玉村昇悟、ドラフト2位ルーキーの佐藤柳之介らが埋めていくでしょう。そして大瀬良大地、床田寛樹、森下暢仁の先発3枚がしっかりしていますし、リリーフも塹江敦哉やテイラー・ハーン、栗林良吏らがいて層が厚いです。
【4位予想:阪神】
――藤川球児新監督を迎えた阪神を4位と予想した理由は?
高木 岡田監督の時は、チーム全体でフォアボールを取りにいって点に結びつけたり、それを査定に反映したりといった取り組みがありましたが、今季はどんな野球をするのかが今のところ見えてきません。
キャンプも視察しましたが、選手個々を見ると素晴らしい選手はいるんですけど、チーム全体をまとめる作業はどうだったのかなと。それと、記録にならないものも含めてエラーが多いんです。エラーは、チーム全体に伝染して悪影響を与えます。
――今季の新戦力はいかがですか?
高木 ラモン・ヘルナンデスを獲っていますが、ヘルナンデス云々というよりも、とにかく前川右京がいいですね。キャンプで見た時もバッティングがよく、体もさらにどっしりとしてきました。昨年よりも打席での粘りを感じますし、いい成績を残すと思いますよ。
新外国人投手のジョン・デュプランティエは真っすぐに力があって、三振を取れるカーブを持っているのが強みです。コントロールがある程度まとまれば、先発ローテーションとして計算できると思います。ドラフト1位の伊原陵人は、マウンドさばきが落ち着いていて試合を作ってくれそうですし、デュプランティエ同様に戦力になると思います。
【5位予想:中日】
――3年連続最下位からの巻き返しをはかる中日を、5位に予想しました。
高木 投手力はあります。新外国人のカイル・マラーはカットボールがいいですね。ランナーを出しても粘れますし、簡単には崩れません。打線が点を取って、勝ちをつけてあげられたら波に乗っていけるかなと。抑え候補のナッシュ・ウォルターズは球質が重そうですし、コントロールがまとまれば十分に戦力になると思います。
――課題とされる打線ですが、ジェイソン・ボスラー選手を獲得しました。
高木 巨人のキャベッジと同様に対応力があると思いますし、クリーンナップを任せてもいいと思える打撃を見せてくれていました。なので、戦線離脱(上半身の違和感)してしまっているのが残念ではありますが、ポジティブに考えれば、状態がいい上林誠知をレフトで使えますよね。
それと、昨年の中日は6番以降が弱く、下位は戦える打線があまり組めませんでした。今年は細川成也を6番に置く構想があるようで、それには僕も賛成なのですが、石川昂弥らを含めて細川以外でクリーンナップが組めることが条件です。石川が4番、ボスラーや中田翔が5番、6番に細川となってくれば厚みが出てくると思います。
【6位予想:ヤクルト】
――開幕を前に故障者が多いヤクルトは今年も厳しそうですか?
高木 山田哲人と、村上宗隆も離脱。塩見泰隆の復帰(取材後の3月22日に左膝を再び痛め途中交代。長期離脱も示唆)や茂木栄五郎の加入、赤羽由紘の成長などプラス材料もありますが、故障者が多いチームはなかなか浮上していけません。
それと、計算できるピッチャーがあまりいない。ベテランの小川泰弘が先発4番手になるくらいならいいのですが、高橋奎二は投げてみなければわからないし、奥川恭伸の体の状態も万全なのか、といった状態では戦えません。リリーフは清水昇が戻ってきたり、矢崎拓也が加入したりといったプラス要素がありますが、いかんせん先発が足りません。
――それでも、塩見選手の復帰はチームにとって大きい?
高木 塩見が万全であればもちろんですが、大きな故障をして体のバランスが悪くなっているでしょうし、再発の可能性もありますよね。外野は丸山和郁がある程度の結果を出していますし、西村瑠伊斗も面白い存在だと思いますが、そういった若手はチャンスと思って頑張ってほしいです。
ヤクルトは昨季、最下位の中日と僅差の5位。今年への上積みでいうと、中日は伸び盛りのピッチャーが多いですし、ヤクルトは一番苦しむような気がしています。
【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。