高木豊インタビュー 前編今季のDeNAについて 昨季はリーグ3位からの下剋上で日本一となったDeNA。今季はトレバー・バウアーがチームに復帰するなど、リーグ優勝に向けて着々と戦力を整えている。かつて大洋(現DeNA)の主力選手として活躍し、…
高木豊インタビュー 前編
今季のDeNAについて
昨季はリーグ3位からの下剋上で日本一となったDeNA。今季はトレバー・バウアーがチームに復帰するなど、リーグ優勝に向けて着々と戦力を整えている。かつて大洋(現DeNA)の主力選手として活躍し、現在は野球解説者YouTuberとしても活動する高木豊氏に、現在のチーム状況を分析してもらった。
高木氏は度会隆輝の打撃力アップを評価したが......
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【2年目の度会は打撃力アップも「守備の意識が低い」】
――キャンプ、オープン戦などで目にとまった野手は?
高木豊(以下:高木) 2年目の度会隆輝です。やはりバットコントロールは非凡なものがありますし、打つほうに関しては昨年よりもめちゃくちゃよくなっています。ただ、守備の意識がちょっと低いかなと。
キャンプで本人と話した時に「ホームランを30本打ちたい」と言っていたのですが、レギュラーで試合に出続けなければ無理な数字じゃないですか。それで「30本打つために、どうすればいいと思う?」と質問したのですが、意識が打つほうに偏っていて、守備に関する回答がまったく出てこなかったんです。センスがある選手なので、高い意識を持って練習すれば守備もうまくなると思うんですよね。
――守備を磨くことが、出場機会を増やすために必要ということですね。
高木 そうですね。打撃はルーキーイヤーだった昨年からすでによかったのですが、さらによくなっています。彼の場合、バッティングの状態が崩れる時は、だいたい守備の崩れが発端なんです。放っておいても打てる能力を持っていますから、やはり守備ですよ。チーム全体がエラーを減らすために同じ方向を向いて取り組んでいる時に、バッティングのことばかり考えているようではダメです。
――他に期待している野手は?
高木 梶原昂希や森敬斗はレギュラーを確保してほしい選手ですが、まだ両選手ともに不安定な部分があります。凡打やエラーはどうしてもつきものですが、それがずっと続いてしまうのがよくないんです。
首脳陣からすれば、悪い時期が長引くと「ほかの選手に代えてみよう」となるじゃないですか。悪い状態はなるべく早く脱して、ほかの選手を出されないような活躍をすればレギュラーに近づきます。ただ、今は内野も外野も競争が激しくなっているので苦しいと思いますね。
【ルーキー、新戦力の状態は?】
――特に外野の争いが熾烈ですね。
高木 レベルが高い争いになっているので、度会あたりは相当に頑張らないといけません。ただ、ショートの森も決して安心はできませんね。京田陽太はバッティングの状態がよさそうですし、右打ちのドラフト3位ルーキーの加藤響(四国ILplus・徳島)が左ピッチャーから打つようになれば重宝されるかもしれません。ソフトバンクからトレードで加入した三森大貴も肉離れの故障から復帰してくれば、内野もまだまだわかりませんよ。
――ルーキーの加藤選手はどう見ていますか?
高木 思い切りがいいです。ちょっと強引さが目立つのですが、今の段階でバットがしっかり振れるということはいいこと。ただ、このままでは行き詰まるようなバッティングですね。本人とも話をしたのですが、パンチ力はあるにしても、スタンドに豪快にたたき込むようなタイプではないんじゃないかと。
自分がどんなバッターを目指していくのか。目標がしっかり定まった時にいいものが出てくると思いますが、長打に魅力を感じているようではちょっと苦しむかもしれません。昨年はホームラン王の村上宗隆でさえ33本、岡本和真も27本ですし、なかなかホームランは打てませんよ。ポジションはどんどん埋まっていくので、自分がどうやってプロの世界で生きていくのかを早く見つけるべきです。
――ドラフト1位ルーキーの竹田祐投手(三菱重工West)、同2位ルーキーの篠木健太郎投手(法政大学)はいかがですか?
高木 両投手とも、いいボールと悪いボールがはっきりしています。そこをキレやスピード、変化球などでカバーしなければいけないのですが、そういうものをあまり感じません。あと、篠木は制球がまとまらないイニングとまとまるイニングの差が大きく、投げてみなければわからない部分がある。場数を踏んで慣れていくことで改善していけばいいなと。
――新戦力では、阪神を戦力外となった後に入団した岩田将貴投手も面白い存在ですね。
高木 変則左腕で、あそこまでクロスステップしてくるピッチャーはなかなかいないですからね。左バッターに対してものすごい角度がつきますしね。アンダースローの中川颯や、サイドスローに近いスリークォーターの佐々木千隼もいますし、リリーフにバリエーションが出てきましたね。3人ともコントロールは大雑把なので、時にはガツンと打たれるリスクもありますが、使いどころを間違えなければいい働きをするでしょう。
【投手陣も充実】
――先発陣ではトレバー・バウアー投手の復帰が大きいですね。
高木 本当にやるかどうかはわからないのですが、バウアーを含む3人の外国人先発投手を中4日で回す、という案があるようですね。それで、東克樹ら日本人投手は中6日以上でローテーションを組んでいくと。シーズンを通して中4日ではなく、そのくらい詰めて投げさせていくということなのでしょうが、面白いと思いますよ。
各ピッチャーは調整の仕方が難しくなると思いますが、勝つためには慣れてもらうしかありません。アンドレ・ジャクソンもアンソニー・ケイも昨年よりも期待できますし、バウアーを含めた3人の外国人の先発には期待しています。
――リリーフ陣はいかがですか?
高木 山﨑康晃の状態がいいので、クローザーの座を取り返す可能性があるかもしれませんね。現状では森原康平のほうが信頼度は高いと思いますが、右肩のコンディション不良で出遅れていますから康晃にとってはチャンスです。ローワン・ウィックの状態がよければ一番後ろを任せるかもしれませんし、そのあたりは流動的なんじゃないですか。
リリーフ陣の枚数は足りています。足りなくなったら先発候補のピッチャーを後ろへ回せばいいですし、伊勢大夢をリリーフに戻す手もありますしね。
――DeNAは打線の援護が期待できることも強みですね。
高木 そうですが、守備面でしょうもないエラーも多いんです。オープン戦を見る限り、その課題が解消されているとは思えません。エラーをきっかけに決勝点を与えてしまう試合も見られます。
オープン戦なので、「悪いところが出たと思って改善していけばいい」という考え方もできますが、その部分は不安要素です。オープン戦は寒い日も多くて、それが体の動きに多少なりとも影響を与えているのかもしれませんが、シーズンが始まったらそんなことも言っていられませんから。
(後編:セ・リーグ順位予想 キャンプで感じた巨人とDeNAの「差」とは?>>)
【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。