EASL優勝後のホーム凱旋ゲームで抜擢 東アジア王者の凱旋試合でロバーツ・ケインの笑顔が輝いた。 広島ドラゴンフライズは3月2…

EASL優勝後のホーム凱旋ゲームで抜擢


 東アジア王者の凱旋試合でロバーツ・ケインの笑顔が輝いた。

 広島ドラゴンフライズは3月22、23日、「りそなグループ B.LEAGUE 2024−25シーズン」のB1リーグ第26節で仙台89ERSと対戦。Game1は106−91で勝利を収め、Game2も94−84で制して2連勝を飾った。

 18日に敵地で大阪エヴェッサに80−93で敗北を喫してから中3日。EASL優勝後初のホームゲームでロバーツが躍動した。Game1では特に相手キーマンの1人だった渡辺翔太をタイトなディフェンスで封じ、途中出場ながら21分1秒とプレー時間を伸ばして勝利を手繰り寄せた。

 朝山正悟ヘッドコーチはGame1後の会見で「特にゲームの入りでボールマンプレッシャーが少しルーズになった部分があった。そこをケインがしっかりとプレッシャーを与えて、簡単にやらせないことを体現してくれたのが非常にいいリズムを生んだ1つの要因だった」と高く評価した。このディフェンスでの活躍によって、ロバーツはGame2でB1初スタメンのチャンスをつかんだ。

 指揮官は、「ケインの本来の持ち味である足をしっかり使うところと、今さらにトライしている部分であるハンズワークのところをいい形でやれていたので、そこを期待していた。あと、これまで土曜日に勝ったあとに、どうしても次の試合で少しふわっとしてしまう部分があったので、彼が出ることによって勢いを与えてくれると思った」と先発起用の理由を明かした。

 B1の舞台で初のスターター。チーム最年少22歳のロバーツは、「正直、初めてのスタートで緊張するのは当然のことだと思う」と試合前から少しの違和感を抱いていた。朝山HCはスタメン入りを本人に伝えたときの様子を終始笑顔で明かす。

「本人はいたって普通に『オッケー』みたいに言っていたけど、聞くところによると、ウォーミングアップの時にエアボールを1回2回したらしくて本当は緊張していたと思う。外国籍選手たちにも『髪型チェックしてんじゃないか』みたいな感じでかなりいじられていたみたいです。若さ故にどっちに転ぶかわからない部分も当然あったので、そこはこちら側(コーチ陣)が見ながら、コートに出る選手たちにもしっかりとサポートしてほしいということを伝えた。そうしたら(選手たちが)ニヤやけて、そのタイミングから結構いじられていたみたいです」

 ロバーツ本人はチームメートとのやりとりについて、日本語で「(僕は)若い選手だからリュウ(渡部琉)とかトシ(上澤俊喜)はたまに意地悪してくる」と冗談混じりで話しつつ、英語に切り替えて「エアボールのところもトシに見られていじられたけど、それも愛されている証拠だと思うし、みんながそうやって励ましてくれたので本当に感謝している」と頼れる先輩たちに背中を押されていた。

 広島1年目の昨シーズンはレギュラーシーズン20試合の出場に留まり、1試合平均プレー時間は5分26秒。若手のプレー時間確保の意味合いが強かった印象だ。それが今シーズンは仙台戦の2試合も含めて、44試合中43試合に出場。平均9分3秒と着実にプレー時間とチーム内での役割をつかんでいる。

 今シーズンのホーム開幕だった第2節の佐賀バルーナーズ戦ではチームが痛い連敗を喫したものの、ロバーツはGame2で9得点を挙げて攻撃面で奮闘。ただ、試合後には「まずコーチが求めている基準に満たすようなディフェンスを目指していて、今シーズンも間違いなくディフェンスが自分の課題」と気を引き締めていた。

ライバルたちと切磋琢磨して先発の座を勝ち取る


 それから約5カ月。課題と言っていたディフェンスを評価されてスターターの座を勝ち取った。それはシーズンを通じて成長を遂げた大きな証だ。ロバーツは、「今までやってきた練習の成果がスタメンという形で報われたと感じている」と胸を張り、期待に応えるべく試合の入りから勢い全開だった。

「スタメンを勝ち取れたのはやっぱり守備を評価してもらえたからだと思う。だから、まずはディフェンスからという意識で、今日も15番(渡辺翔太)をしっかり抑えることを念頭に置いていた。攻撃でも今日は点を取りやすい立ち位置にいたのでアグレッシブに行きました」

 守備で粘り強さとハードワークを見せつつ、攻撃でも持ち前の躍動感あるプレーを発揮。キレとスピードあるドライブでアタックを続けた。これまでも187センチのロバーツはゴール下に体格差ある相手がいたとしても抜群の身体能力を活かして果敢に攻めてきた。

「他の選手より高く跳べたり、素早く動けるから身体的に優れている自信があって、毎日そこを活かした練習をして、リングに向かっていく練習もしている。だから、相手のことを考えるというより、自分のできることをやるように心がけている」

 第2クォーターの最後には豪快にダンクを試みるようなシーンもあった。結果的に得点を取れず、「正直、ダンクアテンプトと言えるかも微妙だったけど」と笑みをこぼしつつ、「プレータイムも伸びてきて自信もついてきたから、シーズン中にダンクするチャンスがまたあると思うので、その時は決め切ることを約束したい」とダンク成功を誓った。

 ロバーツは試合を通じて高い強度を保ち、試合終盤の大事な局面でも3ポイントシュートを決め切った。「周りのチームメイトも見ながら(プレーを)考えていた中で、自分のできることをしようとして自然にシュートに行こうと思えた。プレッシャーもかからず、自然な動きができた自信がある」と最後までアグレッシブな姿勢を貫いた。

 記念すべき初スタメンのGame2はプレー時間21分13秒で今季最多14得点と1アシスト1スティールを記録。見る人の心も弾ませる躍動感で2連勝に大きく貢献し、好調を表す満面の笑みがコート上で輝いた。

「大阪相手に悔しい敗戦をした後で、いい試合ができてすごく良かったし、仙台は難しい相手だったけど、その中で選手全員がエナジーを高く持ってやれたのが良かった」と振り返り、「僕としてはこれからもまだ取り組み続けていかないといけないけど、スタメンに選ばれたことは本当に達成感もある。今日は試合自体もよくできたし、コーチ陣も僕を信じてくれたので、本当にいい日になった」と充実の表情で話した。

 若手が多い広島の中でもロバーツの成長は著しい。朝山HCは、「B1リーグで人生初めてのスタートの経験だし、うちのチームは若い選手たちがたくさんいて、競争心を持ってやってもらいたい中でどんどん伸びてきている。その伸びてきているものが、そのままチームの今の伸びしろになると思うので、そこは期待している」と最年少の成長に目を細め、「彼がしっかりやってくれたので、周りも『自分たちもやらなければいけない』ときっと思うはず。ケインはチームの中で最年少だし、チームとしていいケミストリーみたいなものが生まれると思った」と先発起用によるチームのさらなる活性化を期待していた。

 広島は今季シーズン、リーグ戦21勝23敗として、西地区5位につけている。レギュラーシーズンは残り16試合。負けられない戦いが続く中で、ロバーツはさらに飛躍する準備ができている。

「今日できたことを続けるのが自分の役割だと思っている。またスタートでプレーできても、ベンチからだとしても、自分の仕事をやるだけ。自分のできることはこれまで証明できていると思うので、全てに自信持って勝ちにつながるようなプレーをしていきたい」

 日々着実に自信を積み重ねて成長を遂げてきた。今こそ花開くとき。コートで躍動するロバーツ・ケインは笑顔がよく似合う。

取材・文=湊昂大

【動画】仙台戦Game2で3ポイントを決めるロバーツ・ケイン