<番記者プロデュース>歴史的大敗からの西武復権は高橋光成投手(28)の右腕にかかる。昨季は0勝11敗。ロン毛エースは魂を揺さぶる絵を求めた。「武人画師」として知られる水墨画家のこうじょう雅之氏(46)に作品を依頼し、投げる姿を表現した水墨画…

<番記者プロデュース>

歴史的大敗からの西武復権は高橋光成投手(28)の右腕にかかる。昨季は0勝11敗。ロン毛エースは魂を揺さぶる絵を求めた。「武人画師」として知られる水墨画家のこうじょう雅之氏(46)に作品を依頼し、投げる姿を表現した水墨画の完成記念に東京・日刊スポーツ新聞社で対談を行った。「番記者プロデュース」の西武編第2弾を、前後編でお届けします。【取材・構成=金子真仁】

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こうじょう氏が活動拠点の京都から丁寧に運んで来た絵が、お披露目される。高橋光成(以下「光成」)は「おお~っ!!」と目を見開く。少年のように喜ぶ。

光成 いや~、もう、かっこいいというか、すごく力強いですね。ダイナミックというか、絵が生きていますね。

知人の紹介で縁がつながった。17年には広島黒田の引退記念グッズのデザインをするなど、球界とも縁深い「武人画師」に、強い自分の表現を託した。

光成 昨年いろいろありまして…本当に今年は勝負の年、プロ野球人生の分岐点だと思っていて。その中でこういう力強さを、頑張る後押しがほしくて。

面談し、思いを共有し、完成まで1カ月前後がかかったという。

こうじょう氏 投球動作を自分の中に落とし込むのに時間が必要だったので。決まって「これでいこう」と下絵を入れたら、新フォームになったって。

左ひじの使い方を変えた新フォームで下絵を描き直し、筆を入れ始めた。

こうじょう氏 筆が入ったのは右腕からですね。

光成 えーっ!?

こうじょう氏 顔から入れる時もあるんですよ。今回は髪の毛をどう表現するのかが、僕の中で重要だったので。今まで描いてきたアスリートの人たちはだいたい短髪で。動きを付けにくいというか。戦国武将ってだいたい長髪なんで。

光成 ロン毛で良かったです!!

背番号13のここ数年のトレードマークでもある。唯一無二の存在を目指して伸ばす。“モデル”もいる。戦国武将ではない。

光成 映画「アベンジャーズ」のマイティ・ソーがすごく大好きで、それに似せています。めっちゃかっこよくて強くて。目指している像に近いなと。

こうじょう氏 僕もたまたまアベンジャーズとのコラボ作品があるので。似てるなと。僕も高校野球やってましたが、普段はあまりプロ野球を見ないんです。今回しっかり光成君のプレーを見て、あっ、マイティー・ソーと同じ「雷神」やなと。ハンマーをぶん回すような力強さがあって。

光成 雷神、ってめっちゃかっこいいです。

こうじょう氏は絵を玄関に飾ることをすすめた。墨だけに、正面ではなく隅に。できれば右側に。毎朝「行ってきます」の背中に勇気をくれる。

光成 0勝11敗…64年ぶり…64年前にこの記録があって、その次が僕。不運もありましたけどこうなってしまって。すごく苦しいシーズンでした。

こうじょう氏 社会に出るとうまくいかないことって多いですよね。だから、逆に光成君の今年は面白いんじゃないかと。描いたものが彼の背中をどう押せるか。窮地の時に絵と同じイメージで投げてもらえたらと思うんです。(後編へつづく)

◆こうじょう雅之 1978年(昭53)7月24日生まれ、京都府宇治市出身。近江(滋賀)では野球部に所属し、捕手として96年夏の甲子園にも出場。14年から武人画師の活動を開始。17年には京都・平等院鳳凰堂での「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」イベントで武人画びょうぶを公開し、大きな話題に。宇治市観光大使。