ダートで一時代を築いたエスポワールシチーが、初めて重賞を制したのが09年のマーチSだった。後にGIとJpnIを9勝し、種牡馬としても活躍。そんな偉大なダート王が意外にも唯一、中山で走った一戦を振り返る。 エスポワールシチーは父ゴールドア…

 ダートで一時代を築いたエスポワールシチーが、初めて重賞を制したのが09年のマーチSだった。後にGIとJpnIを9勝し、種牡馬としても活躍。そんな偉大なダート王が意外にも唯一、中山で走った一戦を振り返る。

 エスポワールシチーは父ゴールドアリュール、母エミネントシチー、母の父ブライアンズタイムの血統。サンデーサイレンスの砂の最高傑作と呼ばれた父の初年度産駒だった。3歳春のデビューから芝を使われ、6戦目で勝ち上がり。しかし、500万下への昇級戦で7着に敗れると、陣営はダートに舵を切った。すると500万下、1000万下、1600万下、オープンのトパーズSと破竹の4連勝を果たし、重賞初挑戦となった平安Sでも2着に健闘する。続くフェブラリーSでは4着に敗れたが、レコード決着の中、勝ち馬とは僅かに0秒2差だから、力は示した内容。そして再度の東上となったのがマーチSだった。

 単勝2.6倍の1番人気に推された一戦、エスポワールシチーは横綱相撲を見せた。4戦ぶりのタッグとなった松岡正海騎手を背に、五分のスタートから好位を確保。控える競馬は実に5戦ぶりだったが、行きたがる素振りは全くない。そのまま勝負所へ。4角で前に並びかけると、そのまま先頭に立つ。後続が必死に迫ろうとするが、差はなかなか詰まらない。ダイショウジェットやサトノコクオー、トーセンアーチャーなどの熾烈な2着争いを尻目に悠々とゴールを駆け抜け、重賞初制覇を果たしたのだった。

 エスポワールシチーは次走のかしわ記念からGIとJpnIを5連勝する。その取り口は逃げて良し、好位に控えて良し。まさに盤石といえるものだった。そう考えると、マーチSのレース運びが持つ意味は相当に大きかったといえるだろう。