◆第55回高松宮記念・G1(3月30日、中京競馬場・芝1200メートル) 第55回高松宮記念・G1(30日、中京)に、JRA初の女性トレーナーとして今月5日付で開業した前川恭子調教師(47)=栗東=が、モズメイメイを出走させる。今年定年引退…
◆第55回高松宮記念・G1(3月30日、中京競馬場・芝1200メートル)
第55回高松宮記念・G1(30日、中京)に、JRA初の女性トレーナーとして今月5日付で開業した前川恭子調教師(47)=栗東=が、モズメイメイを出走させる。今年定年引退した音無秀孝元調教師から同馬を引き継ぎ、独自の手法も取り入れながら新規開業調教師一番乗りで挑む大舞台となる。
充実の日々の先に大舞台が映っている。23日にJRA初勝利を挙げた前川師が今週はモズメイメイでG1に参戦する。もちろん、日本人女性トレーナーでは初めてだ。「開業前から決まっていた話ですし引き継いだ馬じゃないですか。変な力みはないんです。音無先生から出来あがった馬をいただいた形なので」とにっこり。驚くほどに気負いがない。
5ハロン~マイルの重賞を3勝しているモズメイメイは4度目のスプリントG1参戦へ、坂路主体の追い切りや日頃から世話をする担当者は今までと同じ。しかし、新たな試みにも取り組んでいる。追い切り前に体を温めるため、追い切り後には老廃物を落とすためにダートコースへ入れて、ゆっくりと駈歩(かけあし)を行うようになった。「最初は(人が)ワチャワチャしていましたけど、今は整ってきましたよ」。
運動量を増やしたぶん、ケアにも力を入れる。例えばエサとなる乾草は汚れにくいように厩舎の外に置き、栗東ではほとんど見かけないスチーマーで蒸すことでカビやほこりを取り除く。馬体に関しても整体を取り入れ、細かなメンテナンスを行う。「ほこりやカビは呼吸器の大敵。呼吸器は競走能力に直結するんですよ。(メイメイは)歩様は硬さも取れてきて、左右のバランスも整ってきたかなと思います」と効果も感じ取っている。
縁がある場所へ戻ってきた。助手時代に唯一経験した平地G1は09年の高松宮記念。前年の京阪杯で担当馬初の重賞勝ち馬となったウエスタンダンサーと挑んだ。しかし、結果は12着。「競馬の雰囲気などで緊張したことはないんです。ただ、あの時は状態を上げ切れなかったですね」。もっとやれることがあったはず―。思い出に残る馬との記憶は喜びよりも後悔が大きい。だからこそ、調教師となった今、一頭一頭に優しく向き合い、愛馬たちのベストを探す。
開業から約半月。「とにかく楽しく」を目標としていた厩舎はスタッフたちの笑顔にあふれ、活気に満ちている。「私が新しいことばかり取り組んでも、皆さん素直にやってくれます。感動しかないですよ。メイメイも知り尽くした内徳さん(担当厩務員)が心強いし、これに私が新しく導入したことが化学反応を起こしてくれればですね」。飾らない自然体が春G1開幕戦を華やかに彩っていく。(山本 武志)
◆前川 恭子(まえかわ・きょうこ)1977年4月9日、千葉県生まれ。47歳。03年10月から厩務員として栗東・崎山博樹厩舎に入り、04年2月から調教助手。田所秀孝厩舎、坂口智康厩舎を経て、24年にJRA調教師免許を取得。18日に高知で地方の、23日に阪神でJRAの初勝利を挙げた。助手時代は障害で自身の担当馬初勝利を挙げてくれたアインオーセンの06年中山グランドジャンプ(11着)でG1出走がある。
▼女性調教師管理馬のG1出走 最近では海外から、昨年のジャパンCにドイツのシュタインベルク調教師がファンタスティックムーン(11着)で、22年のエリザベス女王杯に英国のハリントン調教師がマジカルラグーン(18着)で参戦した。
▼Vならグレード制導入以降最速 JRA・G1初勝利なら開業から26日で、93年ジャパンCのレガシーワールドで森秀行調教師が記録した69日を更新する。