熱戦が続く第97回選抜高校野球大会。その舞台、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)のスコアボードの文字が今月、一新された。伝統を継ぎ、誰からも愛されるように。アップデートされた「甲子園フォント」が新たな歴史を刻む。 同球場のスコアボードは、開場…
熱戦が続く第97回選抜高校野球大会。その舞台、阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)のスコアボードの文字が今月、一新された。伝統を継ぎ、誰からも愛されるように。アップデートされた「甲子園フォント」が新たな歴史を刻む。
同球場のスコアボードは、開場翌年の1925年に木製の初代が誕生した。34年にコンクリート製の2代目にかわり、戦火を乗り越え、半世紀にわたり使用された。
職人が毛筆で手書きした、勢いのある独特の字体は「甲子園文字」と呼ばれ、84年に電光掲示となって以降も球場職員がドット文字をパソコンで作製して表示し、伝統を守ってきた。
2024年に開場100周年を迎えるのを前に同球場が、記念事業として甲子園文字のデジタルフォント化を企画した。22年秋、デジタルフォント製造大手「モリサワ」(大阪市)に共同開発を持ちかけた。
同社にとっても24年は、創業者の森澤信夫氏らが世界で初めて「邦文写真植字機」(写真技術を応用して文字を組む機械)を発明して100年の節目。開発への参加を快諾した。
まずは甲子園文字の特徴を把握する作業から始まった。現存する手書きの看板や資料から甲子園文字のサンプルを集め分析した。
より多くの人が読みやすいよう工夫されたユニバーサルデザイン(UD)フォントをベースに、縦のラインが太い字体、「はらい」「はね」に見られる勢いのある筆致など、甲子園文字の個性を引き継ぎ、現代の実用に合った「甲子園フォント」を完成させた。
同社の森澤彰彦社長は2月にあった式典でこう語った。「今後も長きにわたって甲子園フォントが、野球ファンの皆様に愛されるものになりますよう願っております」
甲子園フォントは今月初旬のオープン戦から使用を開始。18日に開幕した第97回選抜高校野球大会でも使用されている。
同球場併設の甲子園歴史館では、選抜大会の企画展のなかで、甲子園フォントに関する特別展示を開催している。4月6日まで(入館料が必要)。(真常法彦)