【柳田将洋が明かすドイツ移籍の真相 後編】

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 プロ転向した柳田将洋がドイツへと旅立ってから1週間後、男子バレーボール界のもうひとりのエース・石川祐希が、自身3度目となるセリエA挑戦への決意を語った。その会見のなかで、「柳田さんが頑張っているから、自分も負けないように」と述べ、自身のプロ転向については「まだ考え中」と明かした。

 さらに、同会見の途中で、中央大の同期生で全日本でも共に戦う大竹壱青が登場し、今季にドイツ1部でプレーすることをサプライズ発表。大竹の移籍先のフランクフルトは、柳田が所属するティービー・インジェルソル・ビュールと、リーグ開幕戦(10月14日)で対戦するため、早くも”日本人対決”の期待も高まっている。


9月26日に、チームの入団会見に臨んだ柳田

 Photo by picture alliance/AFLO

 欧州移籍が活発化するなかで、柳田がドイツを移籍先に選んだ理由はどこにあったのか。Sportivaは日本を発つ直前の柳田に、単刀直入に尋ねてみた。

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――あらためて、初めての海外挑戦で、ドイツリーグを選んだ理由を聞かせてください。

「こだわりはありませんでしたが、ドイツで自分をほしいと言ってくれるチームが出てきたので、そこに行くことにしました。ドイツはヨーロッパの中でも真面目な気質な人が多くて日本に似ていると聞いていましたし、最初に海外に挑戦するのであれば、そういう環境でやったほうがいいと思ったんです」

――バレーで海外移籍というと、石川祐希選手が3度目の挑戦となるイタリアのセリエAや、ロシアとかポーランドなどが有名だと思いますが。

「優先順位としては、『呼んでもらった』というのが大きいです。強すぎるリーグ、強すぎるチームに行っても、コートに立てなければ何も得られませんからね。最初は、ドイツを含め、ポーランドやイタリアなど、いろんなチームで探してもらってはいたんですが、自分に興味を持っているチームがドイツにあるとなって、動画を見てもらって今のチームに決定しました。希望していた国に行けることになってよかったです。

 もちろん(石川)祐希が何度もプレーしているセリエAでもいいんですが、イタリアは時間にルーズなんですよ。遠征でイタリアに行ったときに、バスの出発時間がすでに15分遅れていたのに、運転手が『今からトイレに行ってくる』と言い出して。『何を言っているんだ?』ってみんな怒ったんですけど、祐希に聞いたら『こんなのイタリアでは普通』と言っていたので驚きました(笑)。この先、イタリアでの日本人対決があるのかというのも気になる方はいると思うんですが、現時点ではまったく考えていません」

――ドイツでスタメンとしてプレーできるのは確実ですか?

「確定ではないでしょうけど、チームからは『コートには立たせたい』と言ってもらっています。それを聞いたときは嬉しかったですね。日本人で186cmのサイドをコートに立たせてくれるなんて、どこのチームが言うんだって思いもありましたから。それは僕にとってすごく価値のあるチームだなと思いました」

――ドイツ移籍を話した際、中垣内祐一監督や、海外移籍の先輩である石川選手はどういう反応でした?

「中垣内監督は『すごくいいと思う。いい経験になると思うよ』と背中を押してくれました。祐希は『今年行くんだね』という感じでしたかね。彼とは昨年くらいから海外移籍について話していたので、『決まったよ』『どこ?』『ドイツ』みたいな」

――酒井選手、石川選手以外にも、海外チームでのプレー経験がある選手に話を聞いたりしましたか?

「世界選手権予選の時だったと思うんですが、古賀(太一郎:フィンランド→フランス→現ポーランド)さんに聞きました。エージェントや、『リベロが一番安い』といったギャラの話なんかも。祐希と3人で話したときもあって、『ヨーロッパに3人いるじゃん!』って盛り上がったり(笑)。また、ブラジルリーグに行った福澤(達哉)さんは、英語が通じなくて苦労したようです。ブラジルは本当に英語が通じません。それに比べると、ドイツはスタッフのほぼ全員が英語を話せますし、助かりますね」

――昨季のリーグの途中に、英会話にハマっていると聞きましたが、移籍先での会話に使えそうですか?

「グラチャンの最中は難しかったですけど、それまではできるだけ英語に触れるようにしていました。でも……。日常会話はまだ無理です(笑)」


移籍について語る際にはリラックスした表情も

 photo by Tanaka Wataru

――石川選手のセリエA留学については、どう感じていましたか。

「すごい決断だなと思いました。それで、向こうでも(コートに)入った時はしっかり活躍していましたからね。帰ってきてからその話を聞いて、自分も行ってみたいなという気持ちになりました。代表も並行して経験するのも面白そうだなと思いましたし、あとは、イタリア語が話せるようになっていて。彼自身は『まだ喋れない』と言い張っているんですけど、僕らからしたら、イタリア遠征に行ったときに、ペラペラ喋ってピザを注文したりだとか、そういうのが当たり前にできるのはすごい。『話せる』基準が上がっているんですね」

――では、来年帰国する頃には、柳田さんもドイツ語でペラペラとビールを注文できるくらいになっているかも?

「いや、そこは英語で。ドイツ語は勘弁してください(笑)。ドイツ語は本当に無理です」

――海外挑戦では精神的にも厳しい戦いになると思いますが、リラックス方法は?

「携帯で動画を見たりSNSをやったりするくらいですかね。将来的には街を歩いて、行きつけの店に入ることがリラックス方法になるといいなと思いますが。海外では日本語に飢えると思うんですよ。実際に、祐希がイタリア行っていた時、けっこう電話がきましたからね。日本は夜中の1時だって言っているのに、『こっちまだ昼っす』みたいなやりとりがけっこうあって、結局はそこから30分くらい話し続けちゃうんです。話す内容は、『練習は?』『5時からです』『結構遅いね』みたいな世間話から入って、それぞれの現状を話した後に、『今、何時っすか』『1時半』『じゃあそろそろですかね』『おつかれ』で終わる(笑)」

――柳田選手も、ドイツに行ったら電話しますか?

「相手は決めてないですけど、しちゃうでしょうね(笑)。僕は時差をしっかり気にして、ドイツの時間の時計と日本の時間の時計と並べておいて、『今、いける!』という感じでかけようと思っているんです。『そっちはまだ夜の8時でしょ?』って言えるようにしておきます」

――食事への対応はどうですか? 以前、海外では日本食に頼りがちとも話していましたが。

「できれば白米を食べたいけど、替えはきくと思います。日本食に頼りがちだったのは、代表に入って1年目の時ですね。あの時は、チームが持っていく日本食をほとんど僕ひとりで食べちゃって。『なんか少なくなってるぞ』って言われて、『やばい、俺だ!』って(笑)。あのころは、突然1カ月ブラジルにいたりしたので大変でした。豆が主食で、シュラスコを食べたらお腹を壊しちゃって、胃腸炎になって帰国したり。今は、半年代表であちこちに行って、半年は日本というサイクルが身についてきたので、そんなに苦ではないです。ドイツに行って、最初の1カ月を乗り越えればなんとかなると思っています」

――ドイツでこんな選手になりたいという目標はありますか?

「バレーボール選手としてレベルアップしたいのはもちろんですが、海外でプレーすることをスタンダードにするために、言語など、バレーボール以外のところもしっかり身につけたいです。そういう広い視点で、海外挑戦がいい経験になればいいと思います」

――最後に、さらなる活躍を願うファンに一言。

「オフィシャルであったり、SNSであったり、直接言葉をいただける機会はなくても、メッセージをいただいてありがとうございます。そういったところから力をもらっています。向こうに行ってもできるだけ目を通したいですし、それを力にしながらプレーをしていきたいです」

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