今中慎二インタビュー 前編今季の中日について 井上一樹新監督のもと、3年連続リーグ最下位からの巻き返しをはかる中日。かつて中日のエースとして活躍し、1993年に沢村賞を受賞した今中慎二氏は、今年のチームをどう見ているのか。主力が抜けた投手陣…
今中慎二インタビュー 前編
今季の中日について
井上一樹新監督のもと、3年連続リーグ最下位からの巻き返しをはかる中日。かつて中日のエースとして活躍し、1993年に沢村賞を受賞した今中慎二氏は、今年のチームをどう見ているのか。主力が抜けた投手陣、新外国人選手やルーキーといった新戦力、得点力不足を解消したいチーム状況を分析してもらった。
今季に向けて17キロ減量したという中日の中田翔
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【メジャー挑戦で抜けた小笠原の穴は埋まる?】
――まず、先発ピッチャー陣の現状をどう見ていますか?
今中慎二(以下:今中) メジャー挑戦のために小笠原慎之介(現ワシントン・ナショナルズ)が抜けたのはマイナス要素です。その分を補う、という点ではなんとかなると思いますが、計算できるピッチャーは髙橋宏斗くらいで、他の投手は投げてみないとわかりません。
大野雄大や涌井秀章、松葉貴大らもいますが、彼らのようなベテランがずっとローテーションで回るとすればチームとしてはマイナスです。中6日で回せるかどうかが重要なわけで、ベテラン枠はひとつ、多くてもふたつまでじゃないとダメかなと。昨年は中6日で回せずにバランスを崩した面があったので。
――新外国人のカイル・マラー投手に期待する部分は大きい?
今中 オープン戦では結果が出ていますし、戦力になりそうとも言われていますが、シーズンに入ってどうなるのか。もともと外国人選手は未知数な部分がありますが、今季に関しては計算できる先発が少ないこともありますし、マラーには期待したいところです。
ウンベルト・メヒアは、練習試合やオープン戦ではそこそこ抑えていますが、本番ではどうですかね。決め球がなくて空振りが取れず、球数も多いタイプなので、計算に入れるのは難しいです。
マラーがしっかり投げてくれれば、メヒアの出番はローテーションの谷間くらいになると思いますし、そうなると先発陣のやりくりに余裕が生まれそうです。逆に言えば、ローテーションにメヒアが入るようでは厳しいです。
【ドラフト1、2位のルーキーの印象は?】
――リリーフ陣はいかがですか?
今中 ライデル・マルティネスが抜け、クローザー候補は松山晋也や清水達也あたりですね。ただ、松山はキャンプ期間中の体調があまりよくなかったので、無理して開幕に間に合わせてのクローザーとなると、ちょっと負担が大きい気がします。いずれにせよ、ブルペンにいてもらわないといけないピッチャーなので、最初からあまり無理をさせなくていいかなと。
先発同様にリリーフも、今季は新外国人選手に頼りたいところです。ただ、ナッシュ・ウォルターズは真っすぐは強いですが、コントロールに難があって後ろを任せるのは難しいと感じますし、ジュニオル・マルテもメジャー時代にフォアボールが多いのが心配です。それでも、藤嶋健人が安定していますし、昨季よかった橋本侑樹が勝ちパターンに入ってくれれば、リリーフはやり繰りしていけると思います。
――ドラフト1位ルーキーの金丸夢斗投手(関西大)、同2位の吉田聖弥投手(西濃運輸)の両左腕はどう見ていますか?
今中 金丸はケガ明けで、シート打撃で投げ始めたばかりですし、これからでしょうね。無理をさせない方針らしいですが、それに関しては大賛成です。「何月までに何をする」といったプランは立てなくていいと思うんです。プランを立てると、そこに合わせてしまいますからね。「投げていって目途がたったらゴーサイン」でいいんじゃないですか。それが5月なのか6月なのか、オールスター後になるのか、というところですね。
吉田は練習試合で打たれたり、フォアボールを出したり課題が見えましたが、故障がなければどんどん投げさせていくべきですね。ただ、キャンプインして数日後に足がつっていましたし、無理はさせられません。中日はルーキーがケガをしてしまうことが多いですから。ペースを周りに合わせる必要はなく、本人たちのペースでいいと思います。ケガをしてしまったら元も子もないので。
――以前より期待されている、梅津晃大投手はいかがですか?
今中 ストライクを取るのに苦労していますね。どれだけいいボールを持っていても、ストライクが入らなければ勝負になりません。それができるようになったらフォアボールも減りますし、ガラッと変わると思います。昨年の成績(2勝8敗)と勝敗の数が反対になる可能性もありますよ。
【得点力不足は解消できるか】
――野手の新戦力についてもお聞きしますが、ジェイソン・ボスラー選手はどう見ていますか?
今中 オープン戦ではある程度打てていますが、シーズンは別物ですから。でも、昨年はマイナーで100試合以上出ているのでスタミナは大丈夫だと思いますし、どこを守らせるかですね。選球眼があまりよくないので、4番よりも5、6番を打たせるほうがいいような気がします。上半身のコンディション不良で、開幕に間に合わないのは少し痛いです。
野手で期待しているのは二遊間です。田中幹也が左手有鉤骨骨折で離脱してしまいましたが、セカンドは福永裕基、ショートは村松開人が多く使われていて、土田龍空も頑張っています。福永と村松は攻撃面を重視しての起用だと思うので、守りではある程度ミスが出るかもしれませんが、目をつぶって起用するか。その判断も注目です。
――昨季に期待されながらも不本意な結果となった、中田翔選手はいかがですか?
今中 今季に向けて17キロ減量したそうですが、確かに動きはよくなっているように見えます。本人としても「体は動く」という話ですし。翔は守備力があるのでファーストを守ってくれるのが理想です。
打順は、4番でなくてもいいと思うんです。従来から打点に重きを置いているバッターなので、5番や6番でいいんじゃないですか。今年にかける意気込みは十分伝わってくるので、あとは結果を出すのみです。
翔がいい状態であればファーストで使えますし、そうならば復帰後のボスラーをレフトで使うなど、守備位置も決まってきます。ちなみに、ボスラーがサードを守った時の守備を見ましたが、送球が少し不安だったので外野のほうが無難かと思います。
――細川成也選手にも打点を期待したい?
今中 チームの課題が得点力ですから、当然期待はかかりますね。ホームランもいいですが、やっぱりチャンスでどれくらい打てるかです。100打点くらい稼いでくれたら、チームの得点力もガラリと変わるので。昨季は23本塁打、67打点ですから物足りませんでした。中田、細川がいかに打点を挙げるかはポイントになるでしょうね。石川昂弥も中軸で起用し続けるのであれば、同じことが言えます。
それと先ほども話しましたが、打つほうではボスラー、投げるほうではマラーやウォルターズ、マルテといった新外国人がどれだけやってくれるか。今季の中日は、例年以上に新外国人の出来がカギを握っていると思います。
(後編:セ・リーグ順位予想 大型補強の巨人、昨年日本一のDeNAなど上位にきそうなチームは?>>)
【プロフィール】
◆今中慎二(いまなか・しんじ)
1971年3月6日大阪府生まれ。左投左打。1989年、大阪桐蔭高校からドラフト1位で中日ドラゴンズに入団。2年目から二桁勝利を挙げ、1993年には沢村賞、最多賞(17勝)、最多奪三振賞(247個)、ゴールデングラブ賞、ベストナインと、投手タイトルを独占した。また、同年からは4年連続で開幕投手を務める。2001年シーズン終了後、現役引退を決意。現在はプロ野球解説者などで活躍中。