(24日、第97回選抜高校野球大会2回戦 西日本短大付―山梨学院) 西日本短大付(福岡)のエース右腕、中野琉碧(るい)投手(3年)が、甲子園で無失点記録を続けている。 20日の大垣日大との初戦は九回を投げきり、今大会の完封「一番乗り」。立…
(24日、第97回選抜高校野球大会2回戦 西日本短大付―山梨学院)
西日本短大付(福岡)のエース右腕、中野琉碧(るい)投手(3年)が、甲子園で無失点記録を続けている。
20日の大垣日大との初戦は九回を投げきり、今大会の完封「一番乗り」。立ち上がりは制球を乱し、8安打を許して走者をたびたび背負ったが、粘り強く投げた。得意のスライダーを効果的に使い、打たせて取る持ち味を発揮。野手陣も無失策の堅守で支え、3併殺を奪った。
「走者を出しても低めを意識して投げ、ゲッツー(併殺)に打ち取れたことは自信になった」と試合後に語った。初戦の緊張感の中、114球を投げたが、「スタミナもまだ余裕があった」と頼もしかった。
■13イニング無失点「甲子園は気持ち入る」
これで13イニング無失点。「甲子園はマウンドが投げやすく、やるしかない、と気持ちが入る」
昨夏の甲子園では、2試合にいずれも救援で登板。菰野(三重)との2回戦では3回無失点、京都国際との3回戦は1回無失点と、安定した投球を披露。新チーム発足後は、エースナンバーを背負い、公式戦の多くを1人で投げ抜いてきた。
しかし、昨秋の沖縄尚学との九州大会準決勝。制球を乱し、初回に8失点。追加点も奪われ、1―11でコールド負けした。西村慎太郎監督は「中野には『いい経験ができてよかったね』と伝えた」と振り返る。
この敗戦を糧に、春までに筋トレや走り込みを精力的にこなし、たくましさを増した。その影響もあるのか、一時的に上半身と下半身の筋力バランスが崩れ、投球フォームの調整が必要になったが、選抜初戦にしっかりと間に合わせた。
「彼のいいところは、授業など日常生活とグラウンドでの態度が変わらないこと」と西村監督。負けん気が強く、豊富な練習量に裏付けられたエースの勝負強さに信頼を寄せている。
■父は社会人野球の監督 キャッチボールの思い出
そんな中野投手の父・滋樹さん(44)は、社会人野球の強豪・JR九州の監督だ。現役時代は捕手。柳ケ浦(大分)では3年夏に甲子園に出場し、松坂大輔投手を擁する横浜に初戦で敗れた。JR九州では2010年の都市対抗野球大会で首位打者に輝くなど活躍した。
子どもの頃から父の試合を見に行き、その背中を追って、野球を始めた。父とキャッチボールをすると、「暴投したらボールを取りに行かされた」と笑顔で振り返る。
普段は「野球の話は父からはしてこない」「あまり褒められたことはない」というが、選抜初戦の試合後は「完封おめでとう」とSNSのメッセージが届いていた。「『やったぞ』と言いたかったけど、『ありがとう』と返しました」とうれしそうに話した。
2回戦の相手は、2023年の選抜大会優勝校、山梨学院。「初回の入り方を意識して、次もチームを勝たせる投球をしたい」
相性の良い甲子園で、まだまだ成長した姿を見せ続ける。(波多野大介)