競馬記者・三浦凪沙さん インタビュー「競馬愛」編 横浜DeNAベイスターズの三浦大輔監督を父に持ち、現在は東京サンケイスポーツの競馬記者として奮闘する三浦凪沙さん。初の著書『知れば知るほど楽しくなる! ウマに恋する競馬ガイド』(小学館)も出…

競馬記者・三浦凪沙さん インタビュー「競馬愛」編

 横浜DeNAベイスターズの三浦大輔監督を父に持ち、現在は東京サンケイスポーツの競馬記者として奮闘する三浦凪沙さん。初の著書『知れば知るほど楽しくなる! ウマに恋する競馬ガイド』(小学館)も出版するなど大活躍中の三浦さんに、お父さんの馬がきっかけとなって競馬にハマったエピソードや、競走馬の魅力について聞いた。



競馬愛や家族の思い出を語った三浦凪沙さん

【父にほぼ無理やり競馬場へ連れて行かれて...】

三浦凪沙 私が初めて競馬に興味をもったのは、父が馬主として所有していたリーゼントブルースのデビュー戦を東京競馬場へ見に行った時。2011年、中学2年生の頃でした。

 父は現役時代から競走馬を何頭か所有してきましたが、その1頭目がブルースでした。馬主になったきっかけは、ベイスターズファンである矢作芳人調教師と知り合ったこと。もともと大の競馬好きだった父が、矢作調教師に「馬券が当たらない」という話をしたら、「そんなに当たらないなら自分で馬を持っちゃえばいいじゃないですか」と言われたそうで、それで馬主になったんです。

 野球のシーズン中は北海道に馬を探しに行けないので、馬主デビューとなる1頭目の候補を、矢作調教師が牧場を回って何頭か出してくださったそうです。その馬たちの写真を並べて、父と母がいいと思った馬を何も言わずに同時に指差してみたところ、唯一の芦毛馬で一致。その馬がブルースでした。

 当時から何となく馬主の話は聞いていたものの、私自身は競馬にまったく興味が湧きませんでした。それなのに、ブルースの新馬戦を見に、父にほぼ無理やり競馬場へ連れて行かれたんです(笑)。

 いざ現地でレースを見たら、本当に感動しました。馬が駆けていく音や、騎手のムチの音などが聞こえてきて、直線では大歓声に包まれて。こんなに迫力のあるスポーツなのか! と驚きました。ブルースも2着に頑張って、見せ場をつくってくれたんですよ。必死に応援しましたし、一気に競馬が大好きになりました。

 実際に会ったリーゼントブルースは目がすごくきれいでクリクリしていて、こんなにかわいい生きものがいるのかと衝撃を受けました。それからはブルースをはじめ、父の所有馬のレースをよく見に行きましたし、馬や競馬について勉強するようになりましたね。

 当時から父との会話は競馬のことばかりで、それ以外の話をした記憶はほとんどありません(笑)。三浦家を競馬がつないでくれていると言ってもいいくらいです。父のシーズンオフには、北海道の牧場を巡るのが恒例で、それが父にとって1年間の疲れを癒すイベントになっています。昔は年に一度、栗東トレセンに行って馬を見せてもらったりしていました。

【記者になって直面した「好き」を仕事にする難しさ】

 思い出に残っているレースはたくさんあるので、ひとつに絞るのは難しいのですが、同じく父の所有馬だったリーゼントロックが2着になった佐賀記念(佐賀/ダート2000m)です。

 2019年2月に行なわれた地方交流重賞(JpnⅢ)で、5番人気だったロックは、最終コーナーから2頭で追い比べる展開に。ゴール前まで競り合いが続いて、最終的にはクビ差で負けてしまったのですが、本当に惜しい内容で、ロックが重賞を勝てるかもしれないと思ったレースでしたね。

 この時は、あまりに悔しすぎて泣きました(笑)。競馬で泣いたのは初めてでした。父はプロ野球のキャンプ中で沖縄にいたので、私と母で佐賀競馬場まで行きました。ゴール前ではふたりともかなり興奮しながら応援していて、ゴールの瞬間はお互いひっくり返るくらい悔しがりました。

 競馬記者になった理由は、高校生の頃から馬に何かしらの形ででも携わる仕事がしたいと思っていて、大学生になって進路を選択する際、馬や競馬の魅力をたくさんの人に伝えたいと思ったからです。

 当時の両親の反応は......とくになかったですね(笑)。馬が好きなこと、それを仕事にしたいことは知っていましたし、それまでも私の選択に対して反対されたことが基本的になかったので、当時も背中を押してくれました。

 唯一、母から言われたのは「大好きな競馬でも、仕事にしたら今までのように純粋に楽しめなくなるかもしれないよ」ということ。たしかに仕事がつらくて競馬がいやになりそうな時期もありましたが、今では競馬ファンとしての気持ちと競馬記者としての気持ちを切り替えられるようになりました。「好き」を仕事にするということは難しさもありますが、そのぶん、やりがいを感じています。

【私が思う競馬の最大の魅力は...】

 記者としての予想スタイルは、トータルでは人気サイドに重い印を打つことが多いと思いますが、取材などで感触のいい馬を見つければ、人気がなくても迷わず本命を打ちます。

 競馬はいろいろな見方、楽しみ方があるので、これから始める人は自分なりのスタイルを見つけてほしいと思います。『知れば知るほど楽しくなる! ウマに恋する競馬ガイド』でもそれを大切にしていて、競馬場の見どころや馬券の買い方のほか、場内のグルメスポットなども紹介しています。

 何より、私が思う競馬の最大の魅力は、1頭の馬にたくさんの人が関わっていることです。それを伝えられる本にしたいと思いましたし、実際に、馬の一生をもとにいろいろな人がどう関わるのかがわかるようなページもあります。矢作調教師はもちろん、生産・育成牧場の方たちにもインタビューしていますよ。

 ぜひこの本を読んで競馬にチャレンジしてほしいですし、これから始める方には、100円でもいいので馬券を買ってレースを観戦してもらえたらと思います。見るだけでもレースは楽しいですが、馬券を買うと気持ちの入り方が違います。私にとってのブルースみたいな出会いがあるかもしれません。当時は中学生だったので馬券は買えませんでしたが(笑)。

 初めての競馬観戦は、ぜひ馬券購入とセットで楽しんでいただけたらと思います!

「高松宮記念 注目馬」編につづく

<プロフィール>
三浦凪沙 みうら・なぎさ/東京サンケイスポーツ競馬記者。父は現・横浜DeNAベイスターズ監督の三浦大輔氏。父の所有するリーゼントブルースのデビュー戦を生観戦したことをきっかけに競馬好きに。2025年2月には、著書『知れば知るほど楽しくなる!ウマに恋する競馬ガイド』を発売。