◆大相撲春場所千秋楽(23日・エディオンアリーナ大阪) 大関・大の里が3度目の優勝で、早くも師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)の優勝回数2回を抜いた。2人は23日の千秋楽後、大阪・大東市内で部屋のパーティーに参加。取材に応じた二所ノ関親…
◆大相撲春場所千秋楽(23日・エディオンアリーナ大阪)
大関・大の里が3度目の優勝で、早くも師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)の優勝回数2回を抜いた。2人は23日の千秋楽後、大阪・大東市内で部屋のパーティーに参加。取材に応じた二所ノ関親方は、アマチュア相撲でエリートだった愛(まな)弟子の健闘をたたえるとともに、横綱昇進のため、さらなる猛稽古を課した。
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部屋の千秋楽パーティーで、大の里が両手で大きなタイをつかんで持ち上げると二所ノ関親方の顔がほころんだ。「最後2日間よく頑張ってくれた。13勝の優勝が必要かと思ったが、最後まで粘り強くできた」と目を細めた。師匠は新入幕から史上最も遅い73場所を要し第72代横綱に昇進。最遅の自身に対し、弟子の綱取りは最速の新入幕9場所と期待が高まる。満面の笑みの弟子の横で、師匠は「負け方がワンパターン。負けた相撲をどう修正するか。また苦手力士を作らないことが課題」ときっぱり。手綱を引き締めた。
大関での初優勝は親方の徹底指導があった。大の里は大関昇進後に苦戦が続き同親方は「上に行くためには厳しい稽古をして揺るがない精神力、土台づくりをしないといけない」。初場所後の稽古始めから番数を増やした。「大関に挑戦する力士は考えてくる。弱点も見えてくるので、それ以上をやらないと。量やらないやつに質は語れない」と意図を明かした。
早大大学院でスポーツ科学を学んだ同親方は、タブレット端末(iPad)で動画を撮影し稽古の質を高めた。立ち合いの踏み込みの足の位置、向き、角度、腰の位置など細かい点を指摘。大の里もこれまで自分の稽古動画はほとんど見ることがなく、「今までは感覚で相撲を取っていた。目の前で横綱(豊昇龍)が誕生しているので意識を変えた」。動画を見て「第三者視点で見ると、全然違う。『くそ!』ってなる部分がある」。気付きを糧にした。
祝賀会の宴席で、師匠は「4月はしっかり稽古して13、14勝になるように指導したい」。大の里も「親方が言うならその通り。雑な部分も出たので、コントロールしたい」と呼応した。
日本出身横綱は2019年初場所で稀勢の里が引退してから不在が続く。二所ノ関親方は30日からの春巡業の重要性に触れ「番数をこなして、いい稽古をするかしないかで、来場所の勝ち負けを左右する。稽古はウソをつかない」と成長を求めた。(山田 豊)
◆大の里に聞く 師匠以来の日本人横綱へ「来場所が大事」
―テレビ画面では泣いているように見えたが。
「泣いてないです」
―高安との優勝決定戦。
「一回も勝ったことがない相手。細かいことを気にせずに、やるべきことをやれば大丈夫だろうと挑んだ。体勢としては不利な体勢だったが、前に出たので良かった」
―今場所を振り返って。
「初日の入りから自信があった。また来場所につなげられる相撲を取ろうと(終盤の)この3日間は取ることができた」
―地方場所初優勝。
「うれしいです」
―昨年夏場所から1年で3場所優勝。
「来場所が大事」
―4月には故郷の石川・津幡町で巡業がある。石川への思いは。
「優勝して地元に帰れることを本当にうれしく思う。まだ大変な状況が続いているが、少しでも明るい話題を届けられたかなと思う」