「これはもう、カオスとしか言いようがないわね」そんな風に私が目をパチクリさせていたのは金曜日、ヨーロッパの3月の各国代表戦週間はネーションリーグ準々決勝とA、B、C、Dリーグのグループ3位と2位によるリーグ昇降格プレーオフの2試合対戦だけ。…

「これはもう、カオスとしか言いようがないわね」そんな風に私が目をパチクリさせていたのは金曜日、ヨーロッパの3月の各国代表戦週間はネーションリーグ準々決勝とA、B、C、Dリーグのグループ3位と2位によるリーグ昇降格プレーオフの2試合対戦だけ。それに該当しない国はてっきり親善試合でもしているものと思いきや、実は2026年W杯予選が始まっていたのに気づいた時のことでした。いやあ、本当はこの新展開、初出のネーションズリーク準々決勝をプレーしているスペインがもしもオランダに負けたら、4、5日、8日にファイナルフォーが予定されている6月のインターナショナルウィークは何をするんだろうと思った時点で、疑念を解消しておくべきだったんですけどね。

それもまた、きっと親善試合だろうと呑気に構え、木曜は準々決勝1stレグのオランダvsスペイン戦はもちろんのこと、モドリッチ率いるクロアチアがエムバペ、チュアメニ、カマビンガを擁するフランスに2-0と勝っていたり、リュディガーのドイツはイタリアに1-2の逆転勝ち。更にプレーオフの方では、代表監督が代わって、クルトワが久々に戻ったベルギーがウクライナに3-1と負けている横で、スロベニアのオブラクは無失点でスロバキアとスコアレスドロー、ギュレルが出場停止だったトルコはハンガリーに3-1で勝ち、最近、レアル・マドリーの試合にも出るようになってきた、長期負傷明けのアラバがオーストリア代表にも復帰して、セルビアと1-1で分けている試合などを、気楽に追っていた自分はあまりに考えなしだったかと。

そう、選手たちの過重労働を無視して、今はどこの組織も公式戦の数を増やして、収入を増やすことに熱を上げている時代ですからね。参加国が32から48に増えたアメリカ・カナダ・メキシコ3カ国共同開催超大型W杯ではヨーロッパの出場枠も3つ増えて16国となり、実は知らない間に12の予選グループも決定。うち半分の5チーム編成グループではこの3月から予選が始まり、金曜はアルバニアと対戦したイングランドが、ベリンガムが先制点のアシストをして、2-0と勝っていたり、ポーランドもレバンドフスキのゴールでリトアニアに1-0と勝利。

一方、4チーム編成のグループのW杯予選は6月開始となるんですが、スペインに関しては、ネーションリーグ・ファイナルフォー進出が叶わなければ、その6月から5チーム編成グループで予選をスタート。ドイツかイタリアで開催されることが決まっているファイナルフォーに行った場合、4チーム編成グループで9月から始めることになるのだとか。こうもややこしくなると、とりわけマドリーやバルサなどでは各国代表選手たちの間で話がかみ合わなくなったりするんじゃないかと思いますが、まあ、それはそれ。今は木曜にあったスペインのネーションズリーグ準々決勝1stレグがどうだったか、お伝えしていくことにすると。

ちなみにリーガ28節が終わった翌月曜、招集された選手たちがラス・ロサス(マドリッド近郊)にあるサッカー協会施設で合宿に入ったスペインだったんですが、日曜最後のトリを飾ったメトロポリターノでのアトレティコvsバルサ戦が首位争いの激しい試合だったせいか、初期メンバーにかなりの被害を与えてしまってねえ。私が2-4の逆転負けという悲惨な結果に打ちのめされながら、家路を辿っている間には途中交代したカサドー、そしてイニゴ・マルティネスもヒザを痛めたという情報が代表に届き、早くもアレイチェ・ガルシア(レバークーゼン)とU21から昇格のハイセン(ボーンマス)の追加招集が発表に。翌日、合宿所に顔出ししたブライアン・サラゴサ(オサスナ)もヘタフェ戦で負傷していたため、即直帰しちゃったんですよ。

月曜の恒例の公開練習の後、火水と協会施設のグラウンドで真剣なセッションをこなし、水曜夕方にはロッテルダムに移動したチームだったんですが、デ・カイプ(フェイエノールトのホーム)であったデ・ラ・フエンテ監督の前日記者会見では、更にバルサ勢のフェラン・トーレスも痛みを抱えていることが発覚。1stレグをお休みすることになったんですが、どちらにしろ、総勢26人の大所帯ですからね。試合当日には、加えてマドリーでのスピード出世で初招集となったアセンシオ、ジェレミー・ピノ(ビジャレアル)もフェランと一緒にベンチ外になったところ…。

いやあ、開始9分にはジャマル(バルサ)がハト(アヤックス)から敵陣エリア外右でボールを奪い、クラブの先輩のペドリにパス。そこからゴール前にいたニコ・ウィリアムス(アスレティック)に繋がって、クルリと体を回した彼が先制ゴールを決めた時には、さすが昨夏のユーロ王者。これは楽勝に違いないと思ったファンも多かったはずかと。それが時間が経過するにつれ、ええ、デ・ラ・フエンテ監督も後で、「Tenemos que recuperar nuestras sensaciones que después de tantos meses sin estar juntos cuesta/テネモス・ケ・レクペラール・ヌエストラス・センサシオネス・ケ・デスプエス・デ・タントス・メセス・シン・エスタル・フントス・クエスタ(何カ月も集まることがなかった後は苦労する、チームとしての感覚をウチは取り戻さないといけない)」と言っていたんですけどね。

トロトロしているうちにスペインはエリア付近に追い込まれ、28分にはジャスティン・クライファールト(ボーンマス)のラストパスをガプコ(リバプール)に決められてしまったから、ビックリしたの何のって。悪いことは重なって、やっぱりアトレティコ戦後のバルサは大殺界なんでしょうか。ル・ノルマン(アトレティコ)と一緒に先発したCBクバルシも40分には足首を痛め、急遽、19才のハイセンがデビューを余儀なくされたとなれば、いえ、1-1で始まった後半1分、ククレジャ(チェルシー)がフリムポング(レバークーゼン)を逃し、その折り返しのパスが、エリア内に何人もいたスペイン人選手たちの間を奇跡のように通過。ラインデルス(ミラン)に勝ち越しゴールを奪われてしまったのは、別にハイセンのせいではないんですけどね。

でもねえ、ユーロやW杯ではないものの、これはトーナメントフェーズに入った大会なんですよ。下手に初戦で負けて、マドリーのCL決勝トーナメントじゃあるまいし、日曜の2ndレグで根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)を目指すなんてこと、2部Bのクラブを率いた後、U世代代表監督になったデ・ラ・フエンテ監督には未知の世界では?とりあえず、2-1にされた後、21分にはジャマル、ペドリ、そしてラス・ロサス合宿中のインタビューで昨夏、アトレティコを出たのを後悔していると告白。まったく精彩がなかったモラタ(ガラタサライ)をダニ・オルモ(バルサ)、オジャルサバル(レアル・ソシエダ)、アジョセ(ビジャレアル)へと、シメオネ監督流3人一斉交代で流れを変えにかかったスペインだったんですが…。

転機が訪れたのは36分、ハトがル・ノルマンに乱暴なタックルをかけて一発退場したことで、いやもう、その時はアトレティコのDFがケガさせられたんじゃないかと、私も気が気ではなかったんですけどね。直後にオランダのクーマン監督がやはり、昨夏までアトレティコにいた代表出戻りのデパイ(コリンチャンス)をデ・リフト(マンチェスター・ユナイテッド)に代え、守り固めに入ったのと同時に、デ・ラ・フエンテ監督はファビアン・ルイス(PSG)に代え、ミケル・メリーノ(アーセナル)を投入。するとこれがバッチリ当たったんです!

いえ、スペインの同点ゴールを見るには後半ロスタイムまで待たないといけなかったんですけどね。48分、ニコのシュートはGKフェルブルッヘン(ブライトン)に弾かれたものの、丁度、ゴール前に詰めていたメリーノが撃ちこんで、土壇場で引き分けをゲットしたんですから、根性あるじゃないですか。うーん、ユーロ準々決勝ドイツ戦でも延長戦で決勝ゴールを挙げていたメリーノは、その夏にソシエダからプレミアリーグに渡り、私も知らなかったんですが、アルテタ監督の下ではMFながら、FWをやっているそうで、すでに6得点を記録。

要は今季、マジョラルが回復するまで、まっとうなFWがいなかったヘタフェでボランチのウチェがCFをしていたようなことを、ずっと高いレベルのチームでやっているんですが、スペイン代表にとっては有難い伏兵でも、4月にCL準々決勝でアーセナルと当たるマドリーにとってはかなり脅威になる?おかげで何とか2-2と引き分けたスペインは、翌金曜にはロッテルダムから、2ndレグの開催地、バレンシアに移動。メスタジャにラス・ロサスとは比べ物にならない3万人のファンを集め、公開練習を行ったんですが、このセッションにはモラタが体調不良でホテルから出られず。ル・ノルマンも個別メニューでランニングしかしてなかったんですが、幸い前日練習には2人も参加できることに。

ただ、デ・カイプのミックスゾーンでニコは「Seguro de que en España les vamos a pintar la cara/セグロ・デ・ケ・エン・エスパーニャ・レス・バモス・ア・ピンタル・ラ・カラ(スペインでボクらは絶対、大勝する)」と言っていたものの、どうもそこまで私は自信が持てなくてねえ。というのもフリムポングについていけないククレジャが、先日のコパ・デル・レイ準決勝1stレグでジャマルにまったく歯が立たず、以降、ビッグマッチの先発から姿を消したアトレティコのガランと重なってしまうからで、だからって、グリマルド(レバークーゼン)の方が守備的にいいかと言われても、それはわからず。

現在、守備陣は負傷でカルバハル、ラポール(アル・ナスル)、ビビアン(アスレティック)がおらず、レ・ノルマンを除くと、クバルシの代わりに追加招集されたマリオ・ヒラ(ラツィオ)にしてもA代表は初めてと、経験に欠けているのが難なんですが、まあ、ここは皆で協力して、オランダのアタッカーたちを止めるしかないかと。ちなみにスペインの攻撃陣ではフェランが回復し、ええ、バレンシア出身で、バレンシアのカンテラ育ちなのもあって、ちゃっかり前日記者会見に駆り出されていたんですけどね。

彼も直前のアトレティコ戦で2得点と乗っていますから、ここはモラタの代わりにCFをやってもらうのも悪くない?そんなネーションズリーグ準々決勝2ndレグは日曜午後8時45分(日本時間翌午前4時45分)にキックオフ。スペインが勝った場合、準決勝はフランスvsクロアチア戦の勝者となるため、そちらも気にしておきたいところです。

そして週末はマドリッドのチームたちも連休を取っているんですが、一応、近況を伝えておくと、16人もの大量選手を各国代表に派遣しているマドリーは、今週はずっと、トップチームの元気な選手がルーカス・バスケスとバジェホしかおらず、RMカスティージャとの合同練習を実施。来週末の兄弟分ダービー、レガネスとのホームゲームまでには、ビジャレアル戦でケガをしたフラン・ガルシアが回復してくれるのをアンチェロッティ監督は祈っているよう。南米組からは、こちらはW杯予選一本なんですが、コロンビア戦でビニシウスがロスタイムにブラジルを2-1に導くゴールを挙げたという朗報もありましたっけ。

逆にウルグアイのバルベルデはアトレティコのヒメネスと共に、フリアン・アルバレス、ジュリアーノ、モリーナ、コレア、その日は不出場だったデ・パウルとアトレティコ勢が群れをなしているアルゼンチンに1-0で負けてしまったんですが、まあこちらもあと1試合ありますからね。来週木曜に延期されていたオサスナ戦を入れられたバルサ程ではありませんが、どちらも29節が土曜試合となっているマドリッドの両雄は、南米出向組の帰還時のお疲れ具合も心配かと。

え、それで傷心の中、水曜からマハダオンダで練習を再開して、土曜から月曜午後6時までのお休みに入ったアトレティコは何か進展があったのかって?うーん、こちらも各国代表に10人行っているんですが、嬉しいことにフランス代表を引退したグリーズマンと今回、6月にはクラブW杯に出るため、それと重なるU21ユーロを視野に入れたサンティ・デミア監督から呼ばれなかったバリオスがお留守番組になってくれてねえ。2人共、激戦続きで、尽き欠けていたエネルギーを補充できるのは何より有難いところ。

ただ、コケはまだチーム練習に復帰していないんですけどね。もっとも代表戦明けはすでにCLから敗退したため、コパ準決勝2ndレグが入るぐらいで、ミッドウィークには余裕ができますしね。キャプテンには完全に回復してから、グリーズマン同様、アトレティコ最後のシーズンになるかもしれない今季の残りをしっかりプレーしてもらいたいものですが、果たしてどうなることやら。ちなみに例によって、弟分3チームに関しては代表戦期間中のニュースがほとんどないんですが、ヘタフェが8連休しているって噂は本当なんでしょうか。