(23日、第97回選抜高校野球大会1回戦 東海大札幌7―6日本航空石川) 日本航空石川の九回裏の攻撃をこの試合、五つ目の併殺で打ち取ると、東海大札幌の左腕エース、矢吹太寛(たお)投手(3年)は派手なガッツポーズを見せた。四回裏に無死二、三塁…
(23日、第97回選抜高校野球大会1回戦 東海大札幌7―6日本航空石川)
日本航空石川の九回裏の攻撃をこの試合、五つ目の併殺で打ち取ると、東海大札幌の左腕エース、矢吹太寛(たお)投手(3年)は派手なガッツポーズを見せた。四回裏に無死二、三塁のピンチを招き、マウンドを右腕の高橋英汰投手(同)に託し、左翼に回っていた。九回に再登板して、試合を締めた。
矢吹投手は二回に相手打線に3連打を浴び、自らの悪送球で逆転を許した。「ストライク先行を意識したが、調子がよくなく、焦りもあった。修正できなかった。自己採点は20点」と反省ばかりを口にした。背番号1で臨む初の甲子園だったが、「エースとしての自覚と責任が足りていない」。
背番号10の高橋投手は、その矢吹投手をベンチから不安そうに見ていた。「いつもの矢吹じゃない」。序盤から球数が多めで制球にも苦しむ矢吹投手の姿にブルペンでの調整を急いだ。ともに140キロ台の速球を武器に、エースナンバーの背番号1を争い、高め合ってきた。
今春、エースナンバーを失ったショックは、遠藤愛義(なるよし)監督の「背番号で野球をするのではない」との助言で考え直した。
四回裏のピンチでマウンドに送られた高橋投手は「矢吹をカバーして抑えるぞ」。冬場の鍛錬で体重を増やし、力強さが増した直球を主体に、八回までの5イニングを5奪三振、1失点でしのぎ、逆転劇への流れをつくった。
自身を「70点」と自己採点した高橋投手は「変化球が良かったが、四死球が多く、直球で押し切れなかった」。勝利にもうれしそうなそぶりは見せず、「投手陣で圧倒して相手を0に抑えるのは(矢吹投手との)共通認識。自分らしい投球ができれば自信はある」。
初戦の硬さもあったのか、北海道大会で見せたようなロースコアでの継投とはならなかったが、「土壇場で持ち味の粘り強さが出て、チームの良さは出せた」と矢吹投手。「エースの自覚と責任をしっかりと考え直して、チームに勢いをつける投球をしたい」と次戦を見据えた。
夢の舞台で高め合う2人のエース物語の最終章はまだ見えない。(松本英仁)