選抜高校野球1回戦(23日、甲子園)○東海大札幌(北海道)7―6日本航空石川● 敗戦まで、あと1ストライク。絶体絶命の場面でも、打席の東海大札幌の4番・太田勝馬はぶれなかった。「来た球を強く振るだけ」。積極性を貫いた先に、歓喜が待って…

選抜高校野球1回戦(23日、甲子園)
○東海大札幌(北海道)7―6日本航空石川●
敗戦まで、あと1ストライク。絶体絶命の場面でも、打席の東海大札幌の4番・太田勝馬はぶれなかった。「来た球を強く振るだけ」。積極性を貫いた先に、歓喜が待っていた。
1点を追う九回2死一、二塁。初球の低めのスライダーを空振りした。3球目もスライダーを空振りして追い込まれたが、鋭く曲がる軌道をしっかりと体感した。
カウント2―2から、浮いたスライダーを引っ張った。三遊間をゴロで破る同点の左前適時打となった。「第1ストライクから振っていった結果が出た」。5番・鈴木賢有もスライダーを引っ張り、勝ち越しの左前適時打とした。五回途中から好救援を続けていた日本航空石川の右腕・長井孝誠の決め球を捉え、シーソーゲームに終止符を打った。
2024年夏に就任した40歳の遠藤愛義(なるよし)監督は「ストライクだと思えば初球から振る。結果的にワンバウンドする球でもいい」と選手に積極的な打撃を求める。仮にファウルや空振りになっても、1球目から強くスイングすることで投手の球筋を覚え、相手バッテリーに考えさせることもできる。打者はバットを振らなければ何も始まらないからだ。
遠藤監督は東海大相模(神奈川)、東海大でプレーし、21年には母校のコーチとしてセンバツ優勝を経験した。両校で監督を務め、強豪の礎を作った原貢さん(14年に78歳で死去)を尊敬し、攻める姿勢を大切にしてきた。母校では、原さんを「おやじさん」と慕う門馬敬治前監督(現岡山・創志学園監督)の薫陶を受けた。
「『原貢先生の野球を僕が継承する』なんてとても言えないが、受け継いでいけたら」と遠藤監督は控えめに話した。東海大札幌の甲子園での白星は10年ぶり。名将の教えが北の大地にも根を張っていることを鮮やかに証明してみせた。【石川裕士】