春の高校駅伝日本一決定戦と呼ばれる伊那駅伝が23日、長野・伊那市陸上競技場発着で男子は6区間42・195キロ、女子は5区間21・0975キロで争われた。1、2年生の新チームで競い、男子は昨年12月の全国高校駅伝3位の宮城・仙台育英が2時間…
春の高校駅伝日本一決定戦と呼ばれる伊那駅伝が23日、長野・伊那市陸上競技場発着で男子は6区間42・195キロ、女子は5区間21・0975キロで争われた。1、2年生の新チームで競い、男子は昨年12月の全国高校駅伝3位の宮城・仙台育英が2時間8分55秒で、女子は同優勝の長野東が1時間11分6秒で優勝した。
昨年の全国高校男子駅伝で2位という好成績を残しながら指導者の交代を決めた学校側に反対し、多くの選手が4月に鳥取城北へ集団転校する福岡・大牟田は難しい状況の中、準優勝と健闘した。大牟田の主将の宗像琢馬(2年)はチームを代表して「僕たちは大牟田で育ててもらいました。大牟田魂で感謝の気持ちで走りました」とコメントした。
伝統の赤いユニホームを着て走る最後のレースで大牟田の選手は懸命に走った。この日、出場した主力の6選手はいずれも鳥取城北に転校する。全員が腕や手の甲などに「感謝」「大牟田魂」の文字を書き込んだ。高校男子駅伝で歴代6位の5度の優勝を誇る名門の選手として最後の意地を見せ、同時に、25年度の鳥取城北の躍進を予感させた。
高校駅伝界でその名を全国にとどろかせ、青学大の太田蒼生(4年)ら多くの好選手を輩出した大牟田で集団転校という事態は昨年秋に発端があった。関係者の話を総合すると、昨年11月の福岡県高校駅伝に優勝し、2年連続45回目の全国高校駅伝出場を決めた後、学校側は25年度からOBで元コニカミノルタ監督の磯松大輔氏(51)が監督に就任し、実質的な監督だった赤池健ヘッドコーチ(HC、52)を磯松氏のサポート役に降格する方針を決定。選手と保護者は反対し、撤回を求めたが、覆ることはなかった。
その後、赤池氏は大牟田のHCを辞任し、鳥取城北の監督に転職することを決めた。
各選手が保護者と話し合った結果、現1、2年生(新2、3年生)19人のうち、昨年の全国高校駅伝に出場した主力選手をはじめ18人が赤池氏の指導を受けることを希望し、鳥取城北への転校を決断した。赤池氏の指導に期待して大牟田への入学を予定していた新入生の大半も鳥取城北へ進路を変更した。
赤池氏は「今回の件で鳥取の方々に心配をかけて申し訳ありません。大牟田から転校する選手だけではなく、現在、鳥取城北に在籍している選手を強くすることが私の使命です。力を合わせて頑張っていきたい。また、鳥取県内の高校と切磋琢磨(せっさたくま)し、鳥取県のレベルアップに貢献したいと思っております」と神妙に話している。
全国高校体育連盟の規定では、転校後、6か月(水泳は1年)は同連盟の主催大会に出場できない。夏の全国高校総体、また、その予選に当たる春からの県大会や中国大会は出場できないが、秋の県高校駅伝、冬の全国高校駅伝には出場できる。進路変更した新入生は通常通りに春から同連盟の主催大会に出場可能。
昨年の鳥取県高校駅伝は米子松蔭が優勝し、鳥取城北は2位だった。大牟田からの集団転校によって、鳥取県、さらには全国の高校駅伝の勢力図が大きく変わる。
これまで通り大牟田で競技を続け、別の指導者のもとで競技をするか。
あるいは、これまで通り赤池氏の指導を受け、別の学校で競技をするか。
学校や赤池氏による強制はなく、15~17歳の選手が考え抜いた末に転校、あるいは、残ることを決断した。大牟田高校の先輩で青学大で3度、箱根駅伝優勝に貢献した太田蒼生は「今、正解はないと思います。転校する選手も、大牟田に残る選手も、自分が選んだ道を正解にしてほしい」と後輩にアドバイスを送る。
大牟田の選手は、長野・伊那市から大牟田市には戻らず、そのまま鳥取市に入る。「鳥取で新しい仲間たちと全国高校駅伝で上位争いをできるように頑張ります。大牟田に残る選手も仲間なので頑張ってほしい」と宗像は言葉に力を込めて話した。それぞれの道を全力で走る。
◆大牟田高校 1919年、大牟田職業学校として創立。53年から現校名。全国高校男子駅伝には59年に初出場し、いきなり2位に。75年に初優勝。その後、76年、88年、91年、2000年と計5回優勝。昨年は準優勝。今年の第101回箱根駅伝では4区区間賞の太田蒼生(青学大4年)、2区7位の馬場賢人(立大3年)、5区10位の山口翔輝(創価大1年)、9区10位の山口廉(日体大4年)ら高校別で4番目に多い7人のOBが登録された。所在地は福岡・大牟田市。
◆鳥取城北 1963年、創立。相撲部は全国有数の強豪。OBは元横綱の照ノ富士ら。全国高校男子駅伝には8回出場(最高は23年30位)。昨年の県大会は2位。今年の第101回箱根駅伝では8区16位の岩田真之(城西大3年)と6区19位の山口月暉(日大3年)と2人のOBが登録された。