◆大相撲 ▽春場所14日目(22日・エディオンアリーナ大阪) 大関・大の里が関脇・大栄翔を押し出し、3敗を守った。2敗で単独首位だった元大関で東前頭4枚目・高安は美ノ海に寄り切られ、両者が並んだ。平幕の美ノ海、時疾風、安青錦は勝って4敗をキ…

◆大相撲 ▽春場所14日目(22日・エディオンアリーナ大阪)

 大関・大の里が関脇・大栄翔を押し出し、3敗を守った。2敗で単独首位だった元大関で東前頭4枚目・高安は美ノ海に寄り切られ、両者が並んだ。平幕の美ノ海、時疾風、安青錦は勝って4敗をキープ。千秋楽は大の里が大関・琴桜、高安は小結・阿炎との対戦が組まれた。両者が勝てば優勝決定戦で決着。ともに敗れた場合は4敗の力士が加わり、1996年九州場所以来29年ぶり2度目となる5人による決定戦にもつれ込む可能性がある。

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 どうしてなんだろう。高安がまた大事な星を落とした。美ノ海との一番は完全に優勝を意識した結果だ。立ち合いのかち上げから顎が上がって顔が天井を向いていた。突っ張りも浮足立っていて、つま先立ちで威力なし。それを美ノ海に下から跳ね上げられた。捕まえようとした時はなぜか得意の左ではなく右を差そうしていた。完全に自分を見失っていたといえる。

 やはり“あと2日はされど2日”だ。13日目に若元春を突っ張りで圧倒した高安とは別人だった。恐らく眠れない夜を過ごしたのだろう。「大関の壁」は越えても、どうして「優勝の壁」を越えられないのか。振り返ってみると11日目に霧島に負けた一番も痛い。

 千秋楽は高安が阿炎、大栄翔を圧倒的なパワーで押し出した大の里は琴桜との一番が組まれた。糸が切れたような琴桜に大の里が負ける風景は浮かばない。私は決定戦に流れ込む公算が大きいと思っている。このコラムで「高安は15日間、持つかどうかわからない」と書いた。高安にとって15日間プラス1は厳しいだろう。「優勝してほしい」という親心はあるが、大の里の若さとパワーは脅威である。(元大関・琴風、スポーツ報知評論家)